- 天然痘の根絶で長い感染症との戦いに勝利したと考える人は多かった しかしその後も人類は様々な感染症に苦しめられている 人類と感染症の闘いを知ることで今後の感染症への対処になる
- ウイルスと細菌の違いは症状ではわからない
- 細菌よりも小さい物質が病気の原因となることから、ウイルスが発見された
- ウイルスは自然宿主の中では病気を起こさないが、自然宿主の生活環境に人間が入り込むと人間に感染する
- 様々な感染症とその歴史
- エマージング感染症は人間がウイルスの生活環境に入り込むことで増加している
- コロナウイルスはコウモリの中で変異するため、野生動物食の習慣のある地域で発生しやすい
- 感染症への対処法にはワクチンや治療薬がある 人、家畜、野生動物すべての健康を実現していくことが重要
天然痘の根絶で長い感染症との戦いに勝利したと考える人は多かった しかしその後も人類は様々な感染症に苦しめられている 人類と感染症の闘いを知ることで今後の感染症への対処になる
1980年WHOが天然痘の根絶を宣言し、多くの細菌感染が抗生物質で治療可能になるなど人類が感染症を克服できると多くの人が考えていた。
しかし、現実には1981年にエイズが出現すると、幻想にすぎないことを思い知らされた。その後も多くの新しいエマージング(出現)ウイルスが発生し、世界に大きな影響を与えている。
これらのエマージングウイルスとその対処技術や仕組みを人類が発展してきたかを知ることCOVID-19によるコロナウイルスや今後も現れるエマージングウイルスへの理解を高めることも可能になる。
感染症の原因となるウイルスも自然宿主である野生動物の体内では病気を起こすことなく、平和な共存関係を保っている。人間がウイルスの生息環境に入り込むことでこれらのウイルスに感染しやすくなっている。
コウモリなどの野生動物は多くのウイルスを保持しており、変異を起こしやすい。野生動物食が感染症の原因となりやすいのはこのような理由による。
人間だけでなく、家畜、野生動物すべての健康を守ることが感染症対策に重要となる。
ウイルスと細菌の違いは症状ではわからない
ウイルスと細菌をその病症から区別することは難しい。細菌は独立した生物であるが、ウイルスは他の細胞に寄生しなければ増殖できない。
そのため、ウイルスは宿主は殺さぬように、また免疫を逃れるように共存しする戦略が必要となる。
天然痘はワクチンが優れた免疫を与え、一種類で対応できる、ウイルスが遺伝的に安定している、ヒト以外に宿主がいないといった理由から根絶が可能となった
細菌よりも小さい物質が病気の原因となることから、ウイルスが発見された
病気の生物から摂取した液体から細菌を除去しても、病気を発症する能力が失われないという例が見られ、細菌よりも小さいな物質が病気の原因となっていることが存在することが分かった。
これがウイルスの発見で、それ以降多くウイルスが発見されてきた。現代ではウイルスの遺伝子配列がわかるようになり、ウイルスの性状の研究が進むようになった
ウイルスは自然宿主の中では病気を起こさないが、自然宿主の生活環境に人間が入り込むと人間に感染する
動物から人間に感染する病気を指し、現在200種類以上の病気が明らかになっている。動物由来感染症は古くから存在しているが、特に最近新しく出現した感染症をエマージング感染症と呼ぶ。
感染症の原因となるウイルスも自然宿主である野生動物の体内では病気を起こすことなく、平和な共存関係を保っている。
人口増加、森林破壊、都市化などで、これらの野生動物の生活環境に人類が入り込むことで、人知れず存在してきたウイルスを人間社会に招いている。
様々な感染症とその歴史
1.マールブルグ病
コウモリが自然宿主となる、致死率90%に達することも。ミドリザルを経由し、先進国に持ち込まれ発見された。エマージングウイルスの存在を初めて認識するきっかけとなった。
2.ラッサ熱
ナイジェリア北東部のラッサ村で発見された熱病。致死率は36~67%と高く、大型のノネズミが自然宿主。ウイルスがヒトやモノとともに飛行機で運ばれ、遠い場所で発症する初期に輸入感染症。ヒトとモノの移動の高速化が感染症との戦い方を変えることとなった。
3.エボラ出血熱
ザイールの川の支流であるエボラ川が最初の患者の出身地に近かったため命名。高い致死率で、コウモリが自然宿主でサル、チンパンジーなどを介しヒトに感染する。
4.ハンタウイルス病
げっ歯類が自然宿主。腎臓障害や呼吸器障害を起こす。エルニーニョによる大雨がげっ歯類のエサを増やし、爆発的に増加し、病気の流行につながった。
ヘンドラウイルス病
1994年、ウマが鼻から血の混じった泡を吹いて死亡する例が続出した。コウモリからウマに感染することで発症する。技術の進歩により、サンプル到着から9日と原因ウイルスの分離までの時間は短くなった。また、ウマ用のワクチンも開発され、コウモリ→ウマ→ヒトと起こる感染を防ぐことができるようになった。
5.ニパウイルス病
ヘンドラウイルスに似たウイルスが原因。脳炎の症状でブタ、ウマからの感染が見られた。
ニパウイルスもコウモリが自然宿主となる。
当初日本脳炎と判断されたため、日本脳炎のワクチンをブタに接種した。しかし、その際に注射器の使いまわしをしたため、注射器を介して病気が広がってしまった。
6.ウエストナイル熱
アメリカで見られたカラスや鳥類の脳炎による大量死で発見された。蚊やダニを媒介しヒトにも感染する。ウエストナイルはアフリカの地名でアメリカで発見されたことは大きな驚きであった。
ヒト-ヒトの感染はないものの、飛行機で蚊が運ばれたり、感染した人がアメリカに移動後蚊に刺され、感染源となることとなる。
エマージング感染症は人間がウイルスの生活環境に入り込むことで増加している
感染症の原因となるウイルスも、もともとは宿主の中で共存しており、突然新しいウイルスが誕生したわけではない。
これらのエマージングウイルスの出現には現代社会の発展が関わっている。農業の拡大、都市化によって人間の活動がウイルス生息環境に入り込むことでエマージング感染症が増加している。
また、野生動物の生息環境に入りこむことで、野生動物へのウイルス感染も発生する。国際的な移動の増加も感染症の流行の原因となる。
コロナウイルスはコウモリの中で変異するため、野生動物食の習慣のある地域で発生しやすい
コロナウイルスは2000年以降3度エマージングウイルスが発生している。コウモリの中で徐々に変異し進化することが知られ、哺乳類に感染するウイルスの中でも特に生存戦略に長けている存在である。野生動物食の食習慣のある地域ではウイルスが発生する可能性が高い。
SARS、MERSもコロナウイルスによるもので自然宿主であるコウモリから別の動物を経由し
ヒトへ感染したと考えられている。COVID-19はマレーゼンコウを介し、感染したと考えている。
感染症への対処法にはワクチンや治療薬がある 人、家畜、野生動物すべての健康を実現していくことが重要
ワクチン
あらかじめ免疫を獲得することで、感染を予防する。天然痘に一度かかると、天然痘にかかることがないことをヒントに生み出された。ウイルスを弱毒化した生ワクチン、防御タンパク質の遺伝子であるDNAやmRNAを接種し、細胞内で防御タンパク質を増殖する方法などがある。
狂犬病のように野生動物へワクチンを接種することで多くな効果を挙げる例もある。
治療薬
細菌感染に対しては抗生物質の効果が大きいが、ウイルスには抗生物質の効果がない。ウイルスが細胞の機能を乗っ取って増殖するため、治療薬は細胞に影響を与えず、ウイルスの増殖を防ぐ必要がある。
ウイルスと細胞膜との融合時、ウイルスRNAの複製時などウイルス増殖のステップに応じて様々な有効な薬が存在する。
公衆衛生
治療薬やワクチンが無い場合には公衆衛生対策に頼ることとなる。適切な検疫と隔離が重要になる。
ヒト、家畜、野生動物全ての健康を実現することが重要となる。ウイルスの多くは野生動物を自然宿主としており、野生動物と共存していくにはウイルスと共存していく必要がある。根絶から共存へと変化していっている。
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