シェアリングエコノミーまるわかり まとめ 野口功一 日経文庫

本の概要

 シェアリングエコノミーによって、物の所有を中心にした経済から共有という新たな経済構造ができつつある。経済構造を根本から変える概念。

 シェアリングエコノミーとは自身の所有している資産を使わない時間に他人とシェアすることで新たな経済価値を生み出す。

 これまでと違いCtoCやPtoPなどの個人間ビジネスの割合が増加する。

 そのため利用者と供給者を結びつけるプラットフォーム企業が重要となる。その役割はマッチング、信頼性の確保、決済の仲介など。

 シェアリングエコノミー普及は消費者の成熟、過剰な消費の否定、環境意識の高まりなどマインド的な部分が大きい。

 そこにテクノロジー進化(特にスマホ、GPS)が組み合 わさることで大きく、広がっている。

 シェアリングエコノミーはビジネスの参入障壁を下げ、個人の力を強くすることができる。資源の最大化という意味では地方創生のみ大きく貢献可能。

 一方で既存の許認可制の企業とはゆがみが発生する可能性が高い。適切な規制の設定と緩和が重要となる。

 個人の力が強くなると、これまで以上に信頼、感情の重要度は増加する。利用者側も評価されるのはシェアリングエコノミーの大きな変化。

この本で学べること

  • シェアリングエコノミーとはなにか
  • これまでの所有とシェア(共有)はどう違うのか。
  • シェアリングエコノミーを発展はどのような変化をもたらすのか

はじめに

 近年シェアリングエコノミーは従来の資本主義で当たり前であった

 物の所有=良いこと

 という考えを覆し、共有という新たな経済構造を構築している。

 AIやロボティクス、ブロックチェーンなどの技術用語は従来の資本主義の構造の中での変化だが、シェアリングエコノミーはその構造そのものを変えていく。

第1章 シェアリングエコノミーのインパクト

 経済が発展し、資本主義が進む中で様々な変化が出てくいる。

 そのたびに変化に対応し新たな成長を模索してきた。シェアリングエコノミーはより本質的な変化をおこしている。

 自身の所有している資産を使わない時間に、他人とシェアすることで新たな経済価値を生み出すことができる。

 従来のビジネスでは提供者は事業者であり、BtoB(法人から法人)やBtoC(法人から個人)の二つがメインであった。

 シェアリングエコノミーではCtoC(個人から個人)でなりったっている。さらに提供者と利用者が固定されていないためPtoP(Peer to Peer)とも呼ばれる。

 必要なものがある人と持っている人をつなぎ合わせるプラットフォーム企業が非常に重要となる。

 2013年の市場規模は150億ドル。2025年には3350億ドルになるとの推計もある。

 事業者と顧客で所有権の移動時にのみお金の流れがある状態から、        所有権が動かなくてもお金が動くようになる。動きの数が増え、網目状に複雑になる。

 第2章 シェアリングエコノミーのメカニズム

  シェアリングエコノミーの定義は様々だが、レンタル企業との違いとして

  • 遊休資産を活用していること
  • PtoP型であること
  • プラットフォーム企業があること

 などがあげられる。

 シェアリングエコノミーが進んでいると言われているのは運輸と宿泊の世界。

 運輸の世界ではライドシェアが広がっている。自身の車で他人をタクシーのように運ぶ。運転手と利用者をつなげるのがプラットフォーム企業となる。

 プラットフォーム企業の役割は

  • 提供者と利用者をつなげる(マッチング)
  • 信用、信頼を担保する。(評価システムの導入)
  • 決済の仲介を行う。

 などがあげられる。

 取引の信頼性の確保は特に重要で、利用者→提供者と提供者→利用者の評価を行うことでそれぞれが評価を下げないように行動し、信頼性が高まる。利用者が自分の行いに気をつけなければならないことはシェアリングエコノミーの特徴の一つ。

 信頼性の向上はマッチング以外での価値を生み出し他との差別化となる。

 双方向の評価は競争意識を高め、シェアリングエコノミー全体の質の向上にもつながる。

 マッチング、評価システム、決済すべてはテクノロジー特にスマホの普及、GPSの活用がなくてはならない。

信頼の向上が更なる提供者、利用者を増加させる好循環を生む。

まだ不十分な部分もあり今後は保険会社によるシェアリングエコノミー向け商品の導入、SNSとの連携、複数のプラットフォーム企業での情報共有などで対応していく。

第3章 シェアリングエコノミーが生まれた背景

 シェアリングエコノミー普及の背景にはリーマンショックによる景気低迷がある。

 消費に慎重な姿勢から所有の意味を見直すようになった。消費者の成熟と相まって過剰な消費が時代遅れになりつつある。

 大量生産と消費は環境負荷が大きい。環境保護への意識の高まりも所有から共有へのシフトを後押ししている。

 消費者のマインド変化にテクノロジーの発展が組み合わさることで大きくシェアリングエコノミーが広がった。

 日本の消費者はアメリカと比べ、所有への意識が強く、共有に抵抗がある。シェアリングエコノミーが広がるとは感じているが、実際に使ってみたいと考える人は少ない。

第4章 シェアリングエコノミーが変えるビジネス・社会

 シェアリングエコノミーは

  • モノのシェア
  • 空間のシェア(宿泊先等)
  • 移動のシェア(ライドシェア、車の貸し借り)
  • スキルのシェア(料理、子供の送迎と英会話)
  • お金のシェア(クラウドファンディング)

 などに分類される。

 定量的な経済効果には色々なデータがあるが一貫して急減期な成長が予測されている。

 シェアリングエコノミーは誰でも簡単にできる特徴を持つため、許認可制の産業ではとの間でゆがみが発生する可能性がある。

 既存の産業では平均的な品質を持つ反面多様な要望には応えられない。

きれいな車に乗りたい人や感じのいい運転手を望む人もいれば、汚くて感じが悪くても料金が安ければ良い人もいる。

 PtoPの業態では多様な要望へのマッチングが容易に行える半面、相互評価で信頼性を担保してはいるが許認可制と同じような一定の品質を望む顧客との間に問題が発生する可能性もある。

 ホテルなどの業界は民泊によって参入障壁が下がった。民泊での住宅地での騒音、ごみ問題などが起こりルールつくりを求める声が出ている。

 縛り過ぎればシェアリングビジネスが伸びない可能性も有り、複雑な議論が続いている。過度な規制による既存産業保護を避け、プラットフォーム企業への企業責任を意識させるルールつくりが望まれる。

 働くことの意識の変化にもつながる可能性がある。参入障壁が下がり、大きな資本がなくてもビジネスを行えるようになれば、好きなことを仕事できる可能性も増える。

 地方では人や財政が足りないため、少ない資源の最大化が可能なシェアリングエコノミーが地方創生に貢献できる。

第5章 シェアリングエコノミーの未来

  シェアリングエコノミーが成長し、市場が大きくなると大企業の参入が始まる。

 ブランド力を生かして高級車のライドシェアに参入したり、プラットフォーム企業への投資を行うなどでの参入を行う。

 シェアリングエコノミーの発展は個人の消費者だけでない側面を強化することもでき、個人の力が大きくなる。

 これまではサービスを利用した際の印象、満足度は会社に対しての評価だったが、PtoP型になると、個人へと対象が変わる。これまで以上に信頼や感情の重要度が増加する。

 グローバル化による国境の境目がなくなってきたが、さらに進んで業界の境目や企業の大小の境目もなくなりつつある。

 

 

 

 

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