タコの知性 その感覚と思考 池田連 朝日新聞出版 まとめ

本の概要

 食としてはよく知られたタコだが、意外にも賢いことは知られていない。

 周囲の情報の得る際に人と同じように視覚への依存が強い一方、仕組みは異なっている。また、腕を使った触覚での知覚を非常にうまく使い周囲の情報を得て、記憶することができる。

 タコは単独での生息が多いものの、潜在的には社会性をもっている。社会性は群れの生存確率を増やすため、多くの生物で進化してきた。なかでも表情は他者への情報伝達として非常に有用である。

 タコは体色や凹凸を自由にコントロールし、カムフラージュ利用している。

 タコのボディーパターンの変化がカムフラージュだけでなく、表情としても機能も持つものであれば、生物上初めて表情を生み出した生物となる。 表情を生み出した機構が明らかになれば様々な分野の研究に役立つ可能性もある。

この本で学べること

  • あまり知られていないタコの特長、生態や意外なほどの賢さ
  • 知性、社会性などの要素がどのように生物の役に立っているのか
  • 生物学研究の面白さ

まえがき

 食としてのタコの顔は日本人には同じみだが、賢者としての顔は知られていない。タコの知性にまつわる研究結果を紹介する。

序章 タコと日本人

 タコは地底に住む、群れを作らないなどの理由から、同じ軟体動物であるイカに比べて漁獲量が少ない。イカが9割、タコが1割ほど

 日本は多様な形でタコを食し、世界有数のタコの輸入国。

第一章 タコのプロフィール

 タコはイカや貝などと同じ軟体動物門に属している

 門のなかで節足動物門が最も種類が多く100万を超える種がいると言われる。軟体動物門は次に種が多く10万を超えると言われる。現生のタコは25種ほど存在する。

 イカとタコは頭足類に分類されて似たものとされるが腕の数以外にも違いがある。 イカは水中を泳ぐがタコは這う、イカの腕は引っかかることでものとくっつくが、タコは吸着することでくっついている。

 赤いイメージのあるタコだが、一様な体色ではなく斑だったり、細かい点々があることもある。また、体色パターンを変化させることもできる。

 色素包と呼ばれる細胞を持ち、コントロールすることで体色を変化させる。

 体表の凹凸も変えられるため、カムフラージュの能力に非常に優れているほか、他個体とのコミュニケーションにも利用される。

第二章 タコの賢さ

 オペラント条件付けとは、ある反応に対して刺激を提示することで、その反応に頻度を増やすこと。

 例えばレバーを押す→餌がもらえる を繰り返すと、レバーを押す頻度が増加する 

 タコは白いボールを攻撃→餌という流れを学習し、白ボールを優先的に攻撃するようになる。

 大きさや形を学び、区別をすることが可能。

 腕に付属する吸盤がセンサーとして働き、触覚による学習を行う。

 同種他個体のやることを見て学ぶ、観察学習も行うことがある。他のタコが赤玉を見ていると、自分も赤玉を攻撃するようになる。

 基本的に群れを作らないタコが、なぜ観察学習を行うのかはわかっていない。強い好奇心によるもの、観察を行うことが自身の生存を高める可能性があるため、行っているなどの説がある。

 目や吸盤から得られた環境情報を処理する方法はヒトとは異なる方法で行っているのかもしれない

第3章 タコの感覚世界

 個々の動物はそれぞれのやり方で外観を認識する。ヒトは視覚への依存が大きい

 タコも脳の中で視葉とよばれる視覚情報処理を担当する部分が大きく、視覚への依存は大きい。

 ただ、ヒトの目は脳から、タコは表皮から発達したため、その配置には違いがある。

 タコはヒトとは異なり、偏光を感知できるが、色覚がない。

 腕には脳よりも多く情報伝達装置(神経細胞)を持ち、触覚からも多くの情報を得ている。

 学習する際も 実物のもの→紙に書かれたもの→モニターに映ったものという順序であればモニターに映ったものにも反応する。

 しかし、モニターからスタートすると学習できない=触覚での学習への依存が大きい

 タコの脳波は体重比で比べると爬虫類や魚類よりも大きく、鳥類や哺乳類よりは小さい。特定の部位を切除すると振る舞いが変化するため、ヒトと同じく機能局在を持つ。

第四章 タコの社会性

 これまで、タコの研究はマダコを中心に行われてきたため、社会性がないとされてきたが、他種では社会性が見られている。

 タコに麻薬を投与すると積極性が増す。⇒社会性を潜在的に持っている。

 社会性を持つ動物は、同種他個体を見分けることができる。隣人と見知らぬ固体を見極めることで戦いに費やすコストを削減している。タコもこの利点のため社会性を持っている。

第五章 吾輩はタコである

 タコは周囲の情報に強い関心を持つことが実験でわかっている。

 様々な動物に性格があることが報告背れており、タコもその一種。群れを作る動物は異なる性格を持つことで、多様性が広がり、幅広い出来事に柔軟に対応できる。   

 単独で生息するタコになぜ性格があるのか。積極性の強いタコと消極性の強いタコそれぞれがある条件下では子孫を残しやすくなるため、性格があると言われている。  多様性を持つことが子孫を残すことに有利に働いている。

 タコやイカなどの頭足類のボディーパターンは言語ではなく、表情に近いものかもしれない。

 表情には同種他個体との情報共有の意味合いがある。例えば、捕食者が接近していることを驚愕した表情で伝えられれば、群れの存続に役立つ。

 表情は社会性と大きなつながりを持つ。タコやイカのボディーパターンが表情であれば最初に表情を創出した動物となる。

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