ニッポンを蝕む全体主義 適菜収 3分要約

3分要約

全体主義とは何か

 個人よりも全体を優先する考え方。恐怖政治や暴政などとも性質が異なり,近代に特有の社会の病。

全体主義はどのように生まれたのか

 近代化と資本主義はそれまでの身分や仕事の固定化が解消され,個人で選択する機会が増加した。

 隣の人と価値観が同じであることに喜びを感じる人は自由の責任に耐えられなず、そのような大衆が自分の代わりに考えてくれるわかりやすい指導者をもとめることで全体主義へとつながっていった。

 資本主義によるこの分断と分業はコミュニティの破壊を促進し,さらに大衆化を進めている。

日本の全体主義はどのような場面で見られるのか

 全体主義はコミュニティを破壊し、個を分断させたのちに別の神話を持ち出すことで人々を再結合させることで行われることが多い。コミュニティの破壊と再結合による全体主義化は維新の会が用いて手法でもある。

 わかりやすい指導者を求める国民が増えたことも大きな要因と言える。

どうすれば全体主義に対抗できるのか

簡単な対策など存在しない。みんなと同じなら大丈夫という大衆のメンタリティから脱却し自立した個を確立することが何よりも重要になる。

全体主義は近代特有の病で専制や暴政とも異なるもの

全体主義は個人よりも全体を優先する考え方で,近代特有の病。恐怖による専制や暴政とも異なるもの。

全体主義は近代特有の病であるため,治療のためには近代人について知る必要がある。全体主義はファシズム,ナチズム,スターリニズムなど様々見られるが,その内容は大きく異なる。

本書では,全体主義が発生する経緯とそれを醸成する大衆のメンタリティについて書かれている。

選択する自由に耐えられない大衆が全体主義を望んだ

 近代になり,大衆が発生したことで全体主義が成立するようになった。

大衆とは確固たる自分というものがなく,隣の人と自分の価値観が似ていることに安心しているような人。このようなメンタリティは近代になって生まれ,全体主義を生み出している。

14世紀に個人という概念が生まれると,それまで固定化されていた身分や仕事から解放され,選択を行う必要が出てきた。

自由の重圧に耐えられない人たちは保護者を求めるようになったり,反個人主義を掲げるようになった。この要望に政府が答え,普通選挙など数を武器にして信任を受けることで全体主義が生まれていっった。

資本主義による平等と分業が選択を拒否する大衆を産んだ

個人の力が強くなり,自由が手に入ってもそれを利用するのではなく,隣の人と同じであることに喜びを覚え,思考と価値判断を停止してしまうのが大衆。

大衆は考えることが怖いので,考えることを憎み,自由から逃避しよとし,代わりに考えてくれる権威に惹かれることで全体主義を生み出している。

資本主義がもたらした産業社会は農耕社会の厳格な階級を壊し平等社会を導き,政府も社会に人々を組み込むために画一的な公教育システムを整備し分業に適した人材を作り出すようになった。資本主義による平等と分業が大衆を生み出し,全体主義へと繋がっていった。

ナショナリズムは共同体を破壊して新しい神話で再接合すること

全体主義の理解にはナショナリズムを理解して置く必要がある。ナショナリズムは民族主義,復古主義などのイメージを持つが,実際のナショナリズムは民族的なものや復古的なものを破壊するもの。

西欧諸国の近代化には様々な背景,要因があり,西欧固有の歴史が生み出したもの。しかし日本は鎖国から開国しなければならない状況になり,強引に近代化が進んでしまった。

この際に明治政府は旧来の制度を破壊し,天皇による支配という新しい神話を利用し,支配を可能にした。民族自体の破壊,共同体の解体によって人間を個に分断し,神話を用いて人為的に接合することこそが国家が行うナショナリズムの実態。

 共同体の破壊で個を分断することは全体主義を行う際にも多く用いられる。

日本は近代化を強制的に起こしたため意識が追いつかなかった

しかし,日本は自己欺瞞で近代化を強制されたものでなく自発的な選択であったかのように思い込もうとしてしまい,近代を内部から批判する態度を持つべき保守主義も表層的でしかなかった。

保守の本質は反権力。人間理性を信用せず,あらゆる権力に制約を課し,必ず判断を誤ることがあると考え,慎重に物事を決める仕組みを作り出している。

しかしの日本では保守が表層的でしかなく,全体主義の防波堤として機能すべき保守主義が復古主義,右翼,新自由主義など本来の保守でない人たちが保守を自認するようになってしまっている。

維新の会の支持はわかりやすい指導者を求める人が増えた結果

 維新の会の政治手法や支持の集め方も何かを信じたいという気持ちを持つ大衆の気持ちをうまく利用している。

数値で見ると矛盾する部分も多いが,事実を突きつけてもあまり意味はない。不安に支配された人たちは事実ではなく,わかりやすい世界観を呈示してくれる指導者であるため,虚構であっても破綻することはない。

セーフティーネットが破壊され,個の分断に拍車がかかったことでわかりやすい指導者を求める姿勢はさらに強くなっている。

多くの人が個人として自律するしか対策はない

 維新の会に限らず,人間性をゆっくりと排除し自分たちの支持を取り付けるやり方での全体主義が多くの場面で見られるようになっている。

 簡単な対策など存在しない。ファシズム語源のファッショは束を意味する言葉。みんなと同じなら大丈夫という大衆のメンタリティから全体主義は発生する。

自己本位でいることは苦しいことも多いが,多くの人が個人として自律しようとして抗戦していくしか対策はない。

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