ハナバチがつくったおいしい食卓 ソーア・ハンソン 白揚社 要約

ハナバチによる受粉は多くの食物に欠かせないが、

 現在、ハチ群崩壊症候群が大きな問題になっているが、問題解決のためにハナバチのことを知ることが大事になる。

 ハチによる花粉の媒介は多くの植物に欠かせない。現在、ハチ群崩壊症候群(CCD)によってハナバチの減少が大きな問題になっているが、我々はハナバチのことをほとんど知らない。近年、ようやくハチの生態、減少理由を知るための研究が積極的に行われるようになった。

 本書ではハナバチの生態、人間とのかかわり合い、CCDによるハチの減少理由がかかれている。

ハナバチは花粉を食べることで進化的に有利となった

 有史以前から人類はハナバチに魅了され、蜂蜜を探し求めて、農業が始まると養蜂をはじめた送粉の働きをしていることは17世紀まで知られていなかったが、水を加え発酵した蜂蜜酒、治療薬など幅広く利用していた。
 
 花粉を食べること進化上有利だったため、ハナバチの祖先は肉食だったが、花粉を食べるように進化した。エサを取る危険が花粉のほうが少なく、進化上有利であったためハチバチの種は元の種に比べ大幅に増えている。

 しかし、ハナバチの化石は非常に少ない。初期のハナバチは1憶2500万年前から存在したが、最古の化石はその5500万後なので進化の過程を詳しく知ることは出来ていないがかなり以前に今のような形態になったことは確かめられている。

ハナバチの研究は社会性の起源を明らかにする可能性が有る

 アリやシロアリなど社会性を進化させた動物は一度だけ進化し、多くの種がいまでも社会性を維持している。一方、ハナバチには社会性を持つもの、社会性をやめたもの、社会性を持ち始めているもの
など様々な種が確認されている。 
 ハナバチは社会性を持ったのがごく最近であるため、進化の途上である可能性もある。社会性を持つ要因や原因を突き止める研究対象にもなっている。

ハナバチと花は共進化してきた

 花粉食のハチの足には枝分れした毛が生えている。肉食のハチにはこのような毛は少なく、花粉を運びやすいように進化したもの。
 ハナバチは花粉をえるために進化したが、ハチが花粉を食べるようになったことで植物にも変化が見られた。

 花はハチに見つけてもらえるように色、香り、形を進化させた。ハナバチのいない地域では花の色や形の多様性が低いことがわかっている。

 ハチと植物の相互作用が強くなることで、特定のハチとのもかかわり合いを持つようになると特殊化し、種が分化していく。お互いの存在が種の多様化をもたらしている。

 人類も蜂蜜を好み、その進化に一役買った可能性もある。人類は蜂蜜を見つけるためにハチの巣を探す技法を多く編み出してきた。ミツオシエという鳥は人間をハチの巣へ案内することで知られる。

 狩猟採集民にとって蜂蜜は最高の食べものと考えられている。狩猟採集民が狩猟による肉と採集によるイモのどちらのカロリーが行動や発展に影響を及ぼしているかは長年議論されていたが、近年のデータでは 蜂蜜のカロリーもかなり高かったことが明らかになってきた。
 現在の狩猟採集民であるハッザ族は摂取カロリーの15%を蜂蜜から得ている。人類の脳の発展の要因には火による消化負担の軽減、道具による肉、イモ類の増加などが上げられるが、火や道具による蜂蜜の収量増加もその一員となるとわかってきた。

ハナバチがいなければ食事は量、質ともに低下する

 人間の食べ物の3口に1口はハナバチの送粉に頼っていると言われている。農作物の35%は送粉者を必要とする植物から得られている。ハナバチがいなければ、食事の種類、栄養、風味は大幅に減少する。

 ハチがいなくても人工授粉する方法もあるが、コストが合わない可能性は高い。実際に人工授粉でしか栽培できないバニラやデーツは生産コストが高いため、価格が高い。

ハチの減少の原因究明は完全ではないが、生物環境の多様性が重要 

 ハチ群崩壊症候群(CCD) によるハチの減少はいまだ理由がはっきりしていない。2006年に養蜂が巣の35~90%を失う事態になり多くの調査が行われている。

特に激減している4種が縁のため、病原菌とも推測されている。
 ヨーロッパからアメリカにトマトの栽培に必要なハチを持ち込んだ際に病原菌が持ち込まれたとする考えもあるが完全には解明されていない。
 
 他にもダニの寄生、植物の多様性の減少による栄養不足、殺虫剤の影響、気候変動、新たに侵入した種などが原因として考えられているが、多様性を増加させることが対策として期待されている。

 多様性が低下しがちな大規模単一農業でも、生け垣などでを増加させることでハチやその他生物が増加することがわかってきている。

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