ビックヒストリー入門 デヴィッド・クリスチャン WAVE出版 まとめ

本の概要

 人類の歴史を学ぶことで、世界中の人々に自分たちを分け隔てているものがなにか、全人類を結びつけているものがなんなのか知ることができる

 グローバル化が進む中で、歴史を学ぶことで「世界市民」であるという気持ちを持つことがより重要になっていく

 ビックヒストリーをすることはそのような気持ちを持つ助けになる

 人類が地球に与える影響はとても大きくなり、人新世という新しい時代に入ったと言われるほどではあるが、地球環境を持続可能な形で利用できるかを人類はまだ示せていない

 持続可能な社会の実現のためにも「世界市民」であるという感覚を持つことはより重要になっている

ビックヒストリーとは?

 人類には、特定の地域、国家、民族を超越するような歴史が存在する

 特定の時代や地域などの小さいスケールではなく、異なる地域間の関係や、異なる時代間の関係をビックヒストリーと呼ぶ

生命の誕生

 地球誕生から最初の5億年は高温で生物もいなかったが、徐々に冷えていった 水が液体として存在できるようになると、分子の反応が促され、徐々に複雑な化合物が形成されるようになる 複雑な化合物が組み合わさることで、原核生物が生まれた

 原核生物の一部が光合成を行うようになると、大気の酸素が増え、その高い反応性を利用する生物が見られるようになった

 真核生物はその過程で生まれて、有性生殖をする者もあらわれた 有性生殖はより変異を生み出すため、自然淘汰の作用が高まり、生物の多様性が増加した 

 その後、様々な生物が誕生し、繁栄と絶滅を繰り返してきた 

 25万年前に誕生したホモサピエンスはその複雑性で他の生物と一線を画している

狩猟採集時代

 狩猟採集時代は、食物を狩猟や採集に頼っていた時代 人類最長の時代でこの時代に人類の基礎が築かれた 

 言語の使用によって次世代へ知識を残すことができることは、他の動物が遺伝的な組成でしか行動を変えられないことに対し、環境への適応面で有利になっていった

 それでも狩猟採集では食物の生産性が低いため、一人当たりが生きていくために必要とする面積が広いため、人口は少なく小さい集団がぽつぽつと生活するに過ぎなかった

 後期には農耕につながるような行為が見られるようになる 漁を行うようになった沿岸部などで少しずつ居住密度が高くなるようになっていった

農耕時代

 農耕時代は今から1万年前に始まった 狩猟採集の25万年に比べ圧倒的に短いが、これまでの全人類の7割は農耕時代に生きていた

 狩猟採集時代は生息地域を広げることで人口を増加させたが、農耕時代では、農業や家畜などで特定の種の生産性を高めることで、同じ地域でより多くの人口を養えるようになっていった

 肥沃な地域で定住に近い様式になったのち、ある程度人口が増えた地域では狩猟採集には戻れず、農耕に移行していった可能性が高い

 集団での生活と余剰作物による分業と専門職化は技術革新を加速した 伝染病の影響もあり、常にではなかったが技術革新が人口増につながった

 これまでの家族での規則では複雑化に対応できなかったため、政治、経済的な階級が生まれ、権力を持つものが現れ国家の出現につながった

 国家が徴税の記録のため、文字が生み出されていった 

近代

 近代は最も短い(250年ほど)が、一番波乱に満ちた時代 世界のつながりが増え、技術の伝播の速度が速まり、生産性、人口増加率も大きく伸びた

 経済への依存度が大きくなり効率的な経済管理が国の重要な仕事となった

 生産性は下記の要因で起こった

1.輸送と通信技術の発展は交流が増え、技術、商品、考えが広まったこと

2.商業社会が拡がり市場での競争が行われた

3.世界が一つになり、商業の発展、技術革新をより強く促した

産業革命

 ヨーロッパは常に戦争状態にあり、他の地域に比べ、商業的な機会を利用する必要があった そのため新規技術の利用の必要性も大きく他地域に比べ優位に立つようになり産業革命につながった 産業革命は蒸気機関の利用によるエネルギーの提供によって起きた 産業革命が及ぼした影響には以下のようなものがある

1.工場の出現

 紡錘機に蒸気機関を用いることで、繊維産業に革命を起こした 新しい技術を効率的に利用するため、企業家は労働者を一か所に集めるようになった

2.鉄道の誕生

 陸上の移動コストを減らし、石炭、鉄鋼の生産、工業を活性化した

3.世界中への波及

 ヨーロッパの成功は軍事力を高める結果となり、それを脅威と捉えアメリカ、ロシアや日本でも鉄鋼、化学、電気産業が活発化した

 産業革命は生産性を大きく上げる一方、国家間の格差を大きくした インドや中国の経済規模の割合は大きく下がり、ヨーロッパの割合が大きくなった

資本主義の興隆とグローバリゼーション

 産業革命を機にヨーロッパ、アメリカを中心に資本主義、民主主義が採用されていく 一方で世界恐慌などをきっかけに、これらのイデオロギーへの失望から共産主義、ファシズムの台頭も見られた 

 第2次大戦のころには世界経済システム覇者はヨーロッパからアメリカとソ連に移っていった  

 大衆の消費文化が根付くと、需要が大きく伸び、再び資本主義で高い成長率が見られるようになる ソ連での共産主義の失敗によって、中国は資本主義市場と共産党政権を両立を目指し、経済面での共産主義から撤退した

 世界中で資本主義が採用されたことで、世界の結びつきが強くなった この世界の統合がグローバリゼーション グローバリゼーションによって世界の文化は均一化されていった

 その一方で、経済格差はより大きくなり、アフリカや南アメリカの一部の国では、経済の拡大の恩恵が少なく、貧困が問題になる

 20世紀後半になると人口増加と消費の急増が生物圏全体に負荷をかけていることが明らかになってきた

 地球温暖化など、人類が環境に与える影響が以前とは比べ物にならないほど大きくなった 一種の生物が生物圏を変えるような力を持つことはこれまでなかったため、「人新世」と呼ばれる新しい地質年代区分になったという考えもある

 近代革命によって、生物圏を人類が支配するようにはなったが、持続可能な活用ができることを示していない

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