ブループリント 「良い未来を築くための進化論と人類史 上 ニコラス・クリスタキス NEWSPICK 要約

人類は遺伝子によって社会性一式を進化させてきた

 自然選択を通して我々は集団に加わる能力と欲求を持っている。その一方で、この群衆を作ることが様々な分断も招いている。
 現在のアメリカでは、右と左、都市と田舎、宗教と非宗教などで分断が起きている。

 しかし、人間は集団間の違いはあれど、共通の人間性を持ち、驚くほど似ている。

 この類似性の理由は遺伝子によるもの。自然選択によって人類は「社会性一式」つまり、愛情、友情、協力し学ぶ、他人の独自性を認めるなどを進化させてきた。

 人類には暴力や利己性などを発揮する悪い部分もあり、これまで科学は悪い面に焦点を当て過ぎてきており、社会性という良さは注目を浴びてこなかった。人類は本質は分断ではなく、協力であることが様々事例から示されている。

社会性一式をもつことが生存上有利となり、社会性一式を用いて青写真(ブループリント)を描くようになった。

 集団バイアスは自分の所属する集団を好むことで、幼い頃から持つことが知られるが、人間は基本的な道徳感覚(困っている人を助けるなど)も備わっている。

 あらゆる文化に共通する社会の核心には以下のような社会一式が存在する。
1個人のアイデンティティを持ち、認識する.
2.パートナーや子供への愛情
3.交友
4.社会的ネットワーク
5.協力
6.自分が所属する集団への好意
7.ゆるやかな階級制
8社会的な学習と指導
 
 人類が生殖と無関係な長期的なつながりを形成することができるが、これは人類の大きな特徴のひとつ

 これらの特徴で作り出された社会環境は生存に有利に働くため、社会一式に必要な遺伝子をさらに強化することになった。

 様々な文化の違いを遺伝子で説明することはできないが、文化の類似性は遺伝子で説明ができる。
社会一式を用いて人間は青写真(ブループリント)を描いてきた。

遭難した場合、社会性一式を発揮するほど生存しやすくなる

 社会性についての研究では、0の状態から社会がどのように作られるかを調べればいいのだが、実際に実験することは倫理面などで難しい。

 船が難破し、流れ着いた場所で生活するような場合は、社会を創り出す自然実験になる。このような例はいくつかあるが、うまくいき多くの生存者を出す場合とうまくいかず多数の犠牲者や遭難者同士の殺人が出てしまうようなケースに分けられる。

 生存者コミュニティがうまくいくには協調性、緩やかな階級によるリーダーシップ、友好関係が非常に重要であった。食料を分配し、ボートの修理など共通の目標を持つことで生存することができた。

うまくいかないコミュニティには独善的で膠着した階級、食料の分配を行わない等の特徴があった。

 青写真は良き社会を作ろうとするがそれを邪魔するもの(暴力やアルコール、環境)があると社会の構築が困難になる。社会一式は必ず発揮できるわけではないが、集団が生存するために最も有効な戦略となる。

共同社会を目指す運動でも、社会性一式を無視すると失敗しやすい

 人々の社会的なつながりにはゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)
がある。ゲマインシャフトを重視した社会を目指す運動は過去多く行われてきた。

 このようなユートピア発想の社会構築も遭難者と同じく社会を0から作り出す動きである。しかしこのような社会のほとんどのケースは失敗に終わっている。

 このような社会は既存の社会への不満(不公平性、利己主義)から起こることが多い。
 のため行き過ぎた利他主義(個性の否定)や平等主義(性差)に結び付き失敗に終わることも多かった。
 集団育児で親子の関係を希薄化する検討もされたが、親子の愛情は社会性一式のなかでも重要で失敗の原因になった。

 ある程度うまくいくコミュニティは遭難者と同じく、社会性一式を重要視ししていた。既存の社会に不満があり、それを改善するような社会を作ろうとしても社会性一式を無視するとうまくいかない。

集団の環境が個人に協力するかに影響を与える。社会性一式を持てる環境にある集団ほど長続きする

 インターネットの発展で、文化的な背景の全く異なる人々同士がどのような行動をとるかを調べることが以前に比べやりやすくなっている。
 
 様々な調査で、協力は個人の特性だが集団の特性でもあることがわかっている。

 例えば、個人間のつながりの流動性が個人の特性に影響を与える。膠着したつながりで非協力的な人から逃げられないと、協力するメリットはなくなる。流動性が高すぎると、見返りがなく、協力するメリットがなくなってしまう。


 集団の環境が個人の協力するかに大きな影響を与える。 

オンラインゲームでもコミュニティ形成に重要な指標を知ることができる。オンラインゲーム上でチームを組む際も結びつくが強く、緩い階級制などの社会性一式がチームを長続きさせる力を持っていた。

社会性一式は人類の生存に役立つ数少ない方法であるため、普遍的になった

 貝殻の巻き方はサイズ、巻き方、伸びの3つのパラメータで理論上ありうるすべての貝殻の形状を決めることができる。しかし、存在しうる貝殻の内、実際に観察された形状はごくわずかにすぎない。
 生物が特定の形をとるのは、その形が物理的に可能で、適応上有益であるためで、そのような形状は想像以上に少ない。

 社会性一式が普遍的であるのも、物理的、生物的、社会環境に対処する上で助けになる数少ない方法であるためと考えられている。

 人間の最大の脅威は他の動物ではなく、人間であり、それは地球上のどこでも変わらない。社会組織が似ているのも適応するためには社会性一式を持つしかないためといえる。

性的な関係でない愛情を結ぶことができるのは人間の大きな特徴 始めは血縁者にのみ感じていた愛着を非血縁者に広げてきた

 人間は性的な関係ではなく愛情のある関係を結ぶことができる。
結婚には一夫一妻、一夫多妻、一妻多夫など多くの形があり、歴史の中で変化してきた。

 妊娠中、妻は食べ物を夫に頼る必要がある。子供が確実にその夫の子とわかれば夫が妻と子の面倒を見ることの遺伝的意味が大きくなる。これが現在一夫一妻制が主流となっている原因とされているが、それは原因ではなく結果とされる。

 結婚文化や形態はそれぞれ異なるがパートナを愛する習慣は普遍的にみらえる。夫婦が絆を持つことで配偶者の男女がともに育児に取り組むことが期待できる。人間は他の霊長類に比べても、発達が遅く子育てのコストが高いため、両親での子育てには大きなメリットがある。


 父親はそばにいることで、子供は父親を、父親は自分の子を認識することできるようになる。持続的な愛着と相互認識は徐々に血縁関係のない人への協力=友情につながっていった。

鳥類では一夫一妻制は90%以上だが、哺乳類ではまれであり、他の類人猿では一夫一妻制は見られない

遺伝子がパートナーとの関係性を左右する

 その人の行動特性が遺伝することは確実だが、複数の遺伝子が行動を決めることや環境によって遺伝子の発現が変化するため、特定の行動特性の原因を特定の遺伝子に悖ることは難しい。


 それでも、ネズミの実験では数個の遺伝子の操作で、ネズミを一夫一妻制にすることができることが確認されている。
 人間でも特定の遺伝子を持つ人が結婚生活への満足度が低く、結婚生活で危機を感じる割合が大きかった。

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