ブループリント 下 ニコラス・クリスタキス NEWSPICKS  要約

友情をはぐくむことは人間以外の動物でも見られる 

 友情をはぐくむ能力は人間だけでなく、多くの動物でみられる。多くの動物が収斂進化によって、友情を育む能力を発展させてきた。血縁関係にあるものと友情を持つことが多いものの。非血縁者と友情を結ぶことも少なくない。
 
 サルでの実験では、集団の中で多くの個体とつながるリーダを排除した場合、集団は混沌とし、集団内で交流が減り、争いと攻撃が激増した。
 
 人気のあるリーダの存在は集団全体の社会秩序が形成されやすくする。ゾウやクジラでも血縁関係に基づかない友情、利他的な行動が見られる。動物種の友情は相互援助と社会学習という2つの大きな利点がある。

自分の遺伝子を残すためにまず血縁識別を取得し、利他的な行動を行うようになった

 生物は血縁者を識別する能力を持ち、まず血縁者に対し、利他的な行動を持つようになった。自分が生き延びれなくても、遺伝的に近い血縁者が生き延びることで遺伝子を残すことができる、近すぎる近親者との交配を避けるなどの理由がある。

利他行動が血縁関係がなくても行われるようになり、友情が誕生した

 友情は明確な互恵がなくても成り立つ長期的な関係をさす。文化によってその特徴は違うが、ほとんどの文化が友情をはぐくむことがわかっている。

 友情の形成、特質、構造に遺伝子が関与していることが最近の研究でわかってきた。一卵性双生児同士のネットワークは2卵生双生児に比べ構造的に似通っている。

 また、友達同士では遺伝的に似ていることも多く、類は友を呼ぶは遺伝子レベルでも確認されている。遺伝的近い=特定の血縁を好むことが徐々に広がり、友情へと進化した可能性がある。
社会的なネットワークを数値化すると世界中で似通っていることも、遺伝的な要素が
社会的なネットワークの形成に関係していることを示唆している 

自分の集団を好み、対立する集団を嫌うのは進化上有意だったが悪い方向に進むと差別につながる

 自分の所属する集団を好み(内集団バイアス)、対立する集団を嫌うこと(自民族中心主義)も文化的な普遍性の一つ。
 二つの集団が対立すると、ヒトは自分の集団の利益を最大化することではなく、相手の集団と自分の集団の利益の差を最も大きくするように動く。

 一方で、集団間に共通の問題や敵を前に集団がまとまると、ネガティブな態度が減退することも
わかっている。
 我々の祖先は使用できる資源が少なく、外の集団に勝つために内の集団へ利他的な行動をすることが生存に有益だったため、このような特性を組み合わせて進化させた。
 この二つが悪い方向に進むと人種差別などの偏見へとつながる。

多くの生物で社会行動は生存に有利なため、類似した方向に進化する

 生物の社会的行動も類似した方向に進化していく。社会性を持つ方向進化し生存に有利になると、さらに社会性をたかめる方向に進化が進む。

 同じ環境が似た進化を促すように、社会環境(他者との交流)が似た進化を促していく。

 悲しいという感情も、近い仲間と離れることをネガティブに思う=一緒にいることが有利となるため発達した感情の可能性も有る。ゾウなどでも仲間の死に悲しみを感じてるという報告もある。

裏切りやフリーライドを防ぐ本能的な仕組みで協力を推進する

 協力が一般的になると自身は協力せず、集団の良いところだけをもっていくフリーライダーのほうが生存に有利に思える。しかし、実際には人々は基本的には協力を行う。

これは集団内で悪いうわさがたつとと生存に不利だったためと思われる。

 一方で、社会が大きくなるとフリーライダーを見極めるのは難しく、増加してしまう。それを避けるために罰を与えることを認めることもあるが、特権的な権力をもった人間が罰を与えることは少ない。

 人類は自身の利益を損なってでも、ずるいものを罰したいという傾向がありそれがフリーライダーを防ぐ原動力になっている。

協力は他の個体からの学習を可能にする 学習は非常に効率よく生存可能性を高めることができるため、より協力が広がっていった

 協力することは他の個体の行動から学習することにつながる。学習は非常に効率が良いため、大きく進化してきた。
 服飾などの直接的な利益が少ないものでも伝わっていくのは、学習による伝達が見られたなによりの証拠となる。役に立つことであれば複数の場所で同時発生することもあるが利益の少ないものは

 人間の社会性一式は他の動物とよく似ている。動物とよく似ているということは人間も互いに似ているはずである。

遺伝子の作用で社会性を持ち、生存に有利となったため、社会性に必要な遺伝子がより広がっていった

 遺伝子は生体内の中だけでなく、外に働きかけることもある。鳥の巣づくり、ビーバーのダム、クモの網などには生体外で見られるものに遺伝子が作用する例。物質だけでなく、寄生虫が宿主の行動を変えることも外への作用の例となる。

 外交的な社会特性も遺伝子的な変異による採用の可能性もある。オオカミを家畜化することで犬となった例のように遺伝子はその生物の人との接触の仕方も変える。人類も同じように遺伝子が社会性を持たせ、社会性を持つ人類ほど生存しやすかったため、社会性一式が広がっていった。

学習と知識を共有は多様な環境への適応に有利

 知識を伝えることができるようになると、累積的な文化とイノベーションを生み出すことを可能にした。
 人類は多様な環境に適応する必要があり、そのようなとき、社会的な学習と文化は非常に有用だった。環境への適応は遺伝子的な要素は小さいため、文化の力のほうが大きい。寒い地域では遺伝的な適応よりも毛皮などの服の効果のほうが大きい。

 社会性を持つようにあると、規模の大きい集団のほうが、蓄積量が増え、複雑な道具を創り出せるようになっていった。
 文化の維持と進化には個人間のつながりの数と質が大きく影響している。文化の発展はさらに遺伝子による社会性を進化させる正のフィードバックをもたらした。

動物と人間は同じような社会性を持つ そのため人間同士ではかなり似た社会性を

 人間を自然から分離し、特別視する傾向は古代からみらえるが、実際にはそれほど他の動物と変わるわけではない。他の動物との類似性その物が人間同士の類似性を示してもいる。

 人間が特別だという思いと、優生学への恐れから人間の社会性に遺伝子が関与しているという考えを拒否する人は多い。


 しかし社会性一式が遺伝子にコードされていることは事実であるだけでなく、幸せの源でもある。
社会基盤となる社会性一式は人類の違いではなく、遺伝的な類似性に関わっている。 
 
 人類の悪い部分を強調し、人間をばらばらにとらえると、根底にある重要な一致を見過ごしてしまう。

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