ボイステック革命 緒方健太郎 日本経済新聞出版 要約

音声コンテンツサービスが急成長している

 スマートスピーカーやワイヤレスイヤホンの普及と音声テクノロジーの進化により、音声コンテンツやサービスが急成長している。

 日本では動画に押され、他国と比べても音声への注目は引くかったが徐々に注目が集まり始め、2021年1月のクラブハウスブームは音声市場の盛り上がりを後押しした。
 しかし多くの人がボイス革命の予兆を捉えてはいても、実際に何が起きているか、なぜこのような流れになっているかを理解している人は少なく、ボイス革命を過小評価している。
 
 音声サービスはGAFAをはじめとしたIT企業も進出し始めており、この変化を察知し、どう波に乗るか考えなくてはならないタイミングである。

音声コンテンツは画面に縛られた生活から人々を解き放つ

 これまで情報の入力や表示は画面に縛られていたが、音声アシスタント、スマートスピーカの普及で画面から解放される可能性がでてきた。

 ポッドキャスト市場の急成長と各社の熾烈な競争は、質の高いコンテンツを大量に作り出し、さらに多くの人が集まるという好循環を生み出している。

ボイス革命はスマホ依頼の衝撃になる

 音声コンテンツの普及はインターネットで配信されるテキスト、画像、動画といったラインナップに音声が加わっただけではない。

 人と情報の接点の進化は口伝え→筆記→印刷→TV、ラジオ→PC→スマホと進化してきた。この変化は情報量の増加だけでなく、情報を得るための生活の犠牲度を減少させてきた。

 画面に縛られないボイステックの世界では情報を得るために費やす時間や手間はさらに減ることとなる。情報を取る手間や時間を減らすことがボイステック革命がスマホ以来の衝撃となる大きな要因。

音声をデータ化できるようになったことでマネタライズしやすくなり市場が広がった

 あちこちにボイステック革命の予兆は起きているが、まだ未発達で成長の可能性の高い市場になっている。革命は音声テクノロジーの進化、デバイスの普及、聴く習慣の拡がりで起きた。

 これまでも音声そのものをデータ化し保存することは出来たが、その内容をデータ化することができなかった。テクノロジーの進化、特に解析技術の進化で音声の中身をデータができるようになると検索、レコメンドが可能になり、マネタライズが可能となり市場が広がった。

音声は情報のファーストタッチをスマホから奪う可能性がある

 デバイスはスマートスピーカーとワイヤレスイヤホンの普及が大きく、ながら聞きを可能にし、声での入力を可能にした。人が情報に触れるファーストタッチをどの端末が握るかは覇権を握るプレーヤ―を決める上で重要となる。
 つぶやくだけで検索できれば、スマホ以上に手軽に情報に触れることが可能となるため、ファーストタッチをスマホから奪う可能性があり、この点が多くのIT企業が音声業界に進出する理由。

 日本では来るまでの移動時間が少ないなどの理由もあり、音声でデジタルで聞く習慣が他国に比べてもない。
 しかし、クラブハウスの流行などで、聴く習慣は徐々に広がってきている。コロナによって人のぬくもりを感じられる音声に関心が向き始めたことも音声へ注目が集まる理由。

音声の最大の特徴はながらができること

 目を使ってみる可処分時間以上に耳を使える時間は多い。家事や移動中など動画を見ることは難しくても、音声を聞ける時間も多く、目の3倍以上の可処分時間を持っている。

ボイステック市場はまるっきり新しい市場

 音声による発信はテキストや動画に比べ、手軽であり、配信者が大幅に増加する可能性を秘めている。配信のハードルが下がれば今まで、ネットで得ることの難しい当事者からの情報が多く配信される。

 可処分時間の多さと相まって情報の質と量が増加し、市場が広がっていく。

 スマホの登場がこれほど人間行動や習慣を変えると予測できた人は少なかったため、ボイステック市場でも予想も出いない変化が訪れる。

音声は人に軸をおいたメディア

 多くの人が情報を無料で得ることになれており、発信者に共感できなければお金を出さなくなっている。テキストや動画と比べて、音声の本人性は高く、感情が伝わり、加工の余地も少ないと捉えられている。
 また、音声は文章に比べ、情報を伝える効率が良い、発信者の人となりや魅力をより伝えやすいなどの特徴も持っている。

パーソナライズによるマネタライズが市場拡大の鍵

 ラジオは効いている人がどこで聞いているか、どんな人かなどが発信者には分からない。パソコンやスマホであれば、ユーザーの情報を知ることができ、ターゲット広告や位置情報を活用した広告などを出しやすいという特徴がある。

 脳は多くの情報の処理が苦手なため、動画+音声よりも音声のみのほうが頭に残りやすいという脳波測定の結果も出ている。また、耳からの情報は視覚情報にくらべ嫌がられにくいという特徴も持っている。

 何かをしながら、ながら聞きとしてる際にそのしている関連した広告訴求できれば、効果は非常に高くなる。

 Apple Watchなどと組み合わせることで、特定の音声を聞いた時に心拍数や体温がどう変化したかを測定することができるようになる。これらを利用した音声マーケティングも考えられている。

 また、画面を見ることは目の負担も大きいため、高齢者の恩恵も大きい。画面で入力するよりも簡単に音声で入力できれば、大きなメリットとなる。
 
 人体への情報の流入経路は目か耳のどちらか。ボイステック革命は耳が大きく拡張することを可能にする。
 

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