3分要約
デジタル革命で社会はどう変化したか
多くの人がデジタル空間で過ごす時間を増やすようになっており、コロナ禍でデジタルシフトは急激に進んだ。新しい技術が社会にいきわたるには時間がかかるため、デジタルシフトによる社会の変化はまだ続く。
変化が大きく混乱するが自社が変わらなくても、社会の変化は止まらないため、変化に対応することが必要になる。
デジタル革命でビジネスはどう変化したか
多くの企業はビジネスモデルを維持し、デリバリーやオンライン接客、キャッシュレス対応などに留まるが、一部の企業は異なる次元で変化を起こし、新しい価値を顧客に届けている。そのような企業とは顧客はつながっていることに価値を見いだすようになっている。
つながる価値の利点はなにか
商品や体験を売るのではなく、顧客価値を向上させることを目標とすることでつながる価値を作るため、他者との差別化がしやすく、模倣もされにくい。
つながる価値を持つ企業の特徴は何か
・ビジネスモデルをデジタル前提で作り上げ、オフラインの情報を取り込むことで顧客に最適化したサービスを提供している。
・オンラインとオフラインの顧客体験を融合させ、顧客を追い回すのではなく顧客にン感謝されるようなサービスを提供する
・商品やサービス、プロモーションだけでなく、顧客接点に力を入れ、データの収集を行っている。
デジタル革命にどう対応すべきか
まずは、自社の顧客がつながり続けることの価値が何かを問うこと。デジタル化の遅れを業務改善の遅れではなく、競争力低下と捉え、ビジネスモデルをデジタル前提で見直すべき。
デジタル革命は顧客視点のマーケティングへの回帰で顧客とのつながりを起点としたビジネスモデルの構築が必須になる。
- デジタル革命はまだ革命の真っ最中で今後も多くの領域で進化する
- コロナによってデジタルを通した体験を価値と受け入れる人が増えた
- 成功した企業は顧客とつながることを価値にしている
- 企業の強みは機能や体験価値ではなく、つながる価値にシフトした
- 製品や体験は模倣されるが、つながりの模倣は難しく優位性がある
- デジタルで顧客とつながることで製品を売る企業と差別化できる
- 顧客とのつながりのために販路、顧客接点の重要性が増した
- 顧客を追い回すのではなく、感謝されることでつながりを作れる
- 商品ありきではなく可変にし、顧客とのつながりを重視すべき
- 事業の一部をデジタル化するのではなく、デジタル化を前提にビジネスモデルを作る必要がある
- デジタル化の遅れは競争力低下を意味するようになっている
- デジタル化はより詳細な顧客情報の入手と最適化を可能にする
- 顧客にとっては接点がオンラインであることが重要なわけではなく、より体験価値が高いことが重要
- デジタル革命は顧客起点に立ったビジネスを追求してきたかを問いかけている
デジタル革命はまだ革命の真っ最中で今後も多くの領域で進化する
1990年代後半に始まった社会全体のデジタルシフトは、通信インフラの整備やスマホの普及で、SNS、eコマースを発展させ多くの時間をデジタル空間で過ごすようになっている。
新しい技術が社会にいきわたるには、長い年月がかかるといわれており、例えば電力普及には40年ほどの時間がかかった。デジタル革命でも同じことが言えるとすると、現在は革命の真っ最中で20年前に今の暮らしが想像できなかったように、20年後の予想も難しい。
革命のさなかであるため混乱するのは当たり前であり、自社が変わらなくても社会の変化は止まらない、デジタル革命で何が起きるか全てを見渡せる人間など存在しない。予測は不可能だが、我々自身も革命のゆくえを決める一人であることを意識し、変化を感じ、走りながら考え、道を開いていくことが重要。
本書では変化しなければ対応できない、デジタル革命が引き起こす顧客、価値、競争の変化、マーケティングの進化を見ていく。
コロナによってデジタルを通した体験を価値と受け入れる人が増えた
コロナ禍がもたらした最も顕著な変化は暮らしのデジタルシフトが急激に進んだこと。仕事のみならず教育、買い物が急激にデジタルシフトし、デジタルを通した体験を価値として受け入れことが浸透していった。
多くの企業はデリバリー、オンライン接客、キャッシュレス対応といったこれまでのビジネスモデルの維持にとどまっているが、異なる次元での変化を起こし顧客の新しい体験を実現する企業も多い。
デジタル化の波に乗り加速した企業がデジタル化に対応できなかった企業を飲み込む現象は、一部の地域や業界に限った話ではなくなっている。
成功した企業は顧客とつながることを価値にしている
コロナでの急激なデジタルシフトへと移行する顧客行動が追い風となる企業と逆風になる企業で明暗がはっきりと分かれた。
追い風にした企業の特徴はデジタルで単に販売チャンルをオンラインにしただけでなく、顧客とのつながりを強化することに成功していること。
顧客の課題をデジタルで解決するなどして顧客とのつながりを維持しなければ、顧客接点を持っていても、顧客側が価値を感じなくなっていく。デジタルシフトがもたらす本質的な変化を見て変革していかなくてはならない。
企業の強みは機能や体験価値ではなく、つながる価値にシフトした
顧客価値はカスタム・バリュー・ピラミッドであらわされる。
基盤となる1層目は商品やサービスが持つ機能が実現する顧客価値。どんな商品、サービスも機能価値だけでは顧客に選ばれなくなってきている。
2層目は顧客が実感できる価値を示す体験価値。店舗やアプリを通じた顧客接点など、顧客とのあらゆる接点が顧客価値の実現に寄与する必要がある。
3層目が企業と顧客がデジタルで直接つながり、常に最適な提案が届けられようによるになると感じるつながっている価値。デジタル革命によって顧客と企業は直接つながりを築けるようになり、顧客とのつながりは持っていたほうが良いものではなく、持たなくてはならないものへと変化したため、企業側は常に顧客にとって自社とつながりつづけることの価値が何かを問う必要がある。
製品や体験は模倣されるが、つながりの模倣は難しく優位性がある
ペロトンは家庭内で使うスマートバイクを販売し、セットされたモニターを通じてフィットネスプログラムをサブスクリプションで配信している。老舗フィットネスクラブの破綻が報じられる中、急成長している。
ペロトンはスターインストラクターやユーザー同士のコミュニティを実現することで顧客につながっていたいと思わせることに成功している。バイクの販売やプログラムの配信は模倣することはできるが、繋がっている価値の模倣は難しく優位性を持つことができる。
自社の顧客価値が何かを考えると際には、それを実現する提案行動はなにか、さらに他社に模倣されるものでないかと考える必要がある。
つながり続けたいと思われない企業でなければ、顧客接点があっても、顧客価値はなくなり、つながりは消えてしまう。
デジタルで顧客とつながることで製品を売る企業と差別化できる
顧客とデジタルで繋がっている状態が当たり前になり、前提としたビジネスモデルが必要になる。その際に参考にすべきなのはアマゾン。
アマゾンはオフラインに存在する巨大なデータを把握するために様々な領域に進出している。デジタルで既に顧客とのつながりを築いているため、デジタルIDで顧客を認証できることの意味は大きく、既存の業界のルールを破壊することができる。
従来、ビジネスのデジタル化は場所のデジタル化(EC)、プロモーションのデジタル化(電子広告)がせいぜいであった。アマゾンは顧客の価値を向上することを目的としているため、プロダクトを顧客に応じて可変的にするなどして素晴らしい体験を届けようとしている。そこがただ製品を売る企業とは大きな違いになる。
顧客とのつながりのために販路、顧客接点の重要性が増した
マーケティングでは4つのPが重要とされる。
Product:商品、サービス
Price:課金方法
Promotion:促進施策
Place:顧客接点、販路
オフラインのビジネスでは商品、課金法、プロモーションを用いて、販路を如何に広げるかとPlaceは最後に考えられることが多かった。しかし顧客接点を常に持てる現在では、Placeは顧客接点の場所になるため、Placeからつながりを作り、得たデータを基にパーソナライズされた商品、課金法、プロモーションを提案し続けることが、ビジネスで求められている。
顧客を追い回すのではなく、感謝されることでつながりを作れる
YAMAPは登山者向けの地図アプリを提供する企業で、電波の届かない場所でも地図を見ることができる。自分の登山記録の保存や他の登山者の持ち物を参考にできるなどの機能で人気になっている。
YAMAPはインターネット企業であるが、オフラインでの顧客との接点を大切にしており、カスタマーサポートを最重要項目としている。
オン、オフラインでの顧客行動を分析し、トレンドを分析することが可能になるが、顧客を追い回したりするのではなく、顧客の盲点を伝えるなどで顧客から感謝されることで徐々につながりを作ることで顧客の生の情報が集まるようになる。
商品ありきではなく可変にし、顧客とのつながりを重視すべき
スナックミーはおやつを定期的に届けててくれるサブスクリプションサービスで顧客は中身を選べず、予期せぬ出会いがあることが特徴になっている。
SNSなどからスナックミーが得たデータであれば、顧客の好みのものだけを送ることもできるが、あえて、外れたものも送ることで新しい出会いを作り出している。
顧客との接点はオフライン、オンライン問わず重視しており、顧客との対話の中から商品、サービスが生まれることも多い。商品を固定的なものでなく可変的なサービスと捉えている点がデジタル時代のビジネスの大きな特徴。
お菓子を売るのではなく、おやつを食べる時間に顧客価値としているため、お菓子としては少し高価でも多くの人が継続するようになる。顧客価値は自らの提供価値を言語化すれば良いのではなく、競争力の源泉とする必要がある。
事業の一部をデジタル化するのではなく、デジタル化を前提にビジネスモデルを作る必要がある
日本ではリアル店舗のデジタル化変革は大手、中小企業とも遅れているが、トライアルはITで流通を変えるというビジョンのもと、270店以上の店舗を有するスーパーマーケトとして検討している。
アプリを通じた決済によってレジを不要にしたり、顧客に応じた広告、カメラからの顧客行動の把握を基にした商品紹介などを実施している。
トライアルが目指してるのは、考えない買い物。顧客のニーズを把握し、あらかじめアプリ内のショッピングカートに連動できれば何を買おうか悩む必要がなくなる。
考えない買い物が低価格、ワンストップ、レジ待ち無しで実現できれば、顧客がトライアルとつながり続ける価値は大きくなる。
デジタル化に経営で取り組むことは、事業モデルの一部をデジタル技術で差し替えるのではなく、デジタルを前提としてビジネスモデルを作り上げること。
顧客行動の把握は顧客自身の満足だけでなく、広告の効率UPにつながるため、小売業の広告業への進出はトライアル以外でも見られる。
デジタル化の遅れは競争力低下を意味するようになっている
顧客とのつながりがビジネスモデルの起点となり、それを創り出す顧客接点こそが競争力となる。顧客接点を強くするためにはビジネスモデルのアップデートが必要であり、デジタル化の遅れは業務改善の遅れではなく、他社との競争力低下を直接的に意味している。
ルルレモンはヨガウェアブランドでコロナ禍で成長を加速させている。健康意識の高まりから市場もフィットネス市場には注目が集まっているが、デジタル接点を設けるだけでは顧客とのつながりを強化できるわけではない。
ルルレモンは店舗を販売の場ではなく、イベント開催などによる体験の場と捉え、顧客とのつながりを追及してきたため、コロナ禍でのデジタル化でもつながりを維持することができた。
鏡型のデバイスを顧客の家に設置することで顧客と直接つながるようになった。ペロトンはスマートバイク、ルルレモンはヨガウェアと異業種だが、ホームフィットネスという同じ領域で競争することとなった。
デジタルを前提にしたビジネスモデルを進化させていくと、プロダクトに基づく業界区分を無意味化するような動きが進んでいく。
デジタル化はより詳細な顧客情報の入手と最適化を可能にする
ウォルグリーンはアメリカに9000を超える薬局を有している企業で、つい最近までDX改革に大きな課題を抱える企業だったが、コロナによってリアルとデジタルを融合させ顧客のニーズを把握し貢献する必要性に迫られた。
ドライブスルーの導入、遠隔医療サービス、顧客行動の把握とパーソナライズ化などを実施した。
ウォルグリーンは購買データだけでなく、顧客ニーズや健康に対する意識、買い物行動を把握することを可能にし、広告サービスの精度を上げることに成功している。
顧客にとっては接点がオンラインであることが重要なわけではなく、より体験価値が高いことが重要
コロナ禍において、多くの企業はオンラインへのシフトを行ったが、オンラインとオフラインの両方で接点を用意しただけにとどまったが、顧客にとって接点がオンラインかどうかは重要ではない。成功した企業はオンラインとオフラインでの顧客体験を融合させている。
ウォルマートは店頭受け取りプやデリバリーなどでコロナ禍においても利用者を増やしている。顧客からのデータを収集し提案をパーソナライズすることで顧客の体験価値を上げることができるが、顧客からより良いデータを収集するには信頼が欠かせないため、どれだけ信頼関係を築けるかが重要になる。
アマゾンは顧客の行動を購入したかだけでなく、行動データを集めることでパーソナライズ化を行おうとしている。継続的な購入があれば買ったものを使用したことがわかるため、なくなるタイミングでの再購入を促すなどの販促が可能となる。アレクサの導入は購入する際の心理的なハードル下げ、実店舗であるアマゾンGoではオフラインのデータの収集を目的としている。オフラインでの顧客の行動を如何にデータとしてつかみ、オフライン、オンラインを問わず顧客に提案を行うことを強く意識している。
デジタル革命は顧客起点に立ったビジネスを追求してきたかを問いかけている
デジタル革命における、ビジネスモデルのアップデートはつまりが顧客とのつながりを起点としたビジネスモデルを構築すること。
オンラインとオフラインを行き来する顧客と向き合い、顧客中心主義を実現するためには顧客行動をデジタルで眺め、そこで得られた知見をスムーズに事業に反映する仕組みが必要。個別の要素の精度を上げつつ、全体最適を整える難しさがある。
まずは、企業の存在意義を考える、モノはいつか必ず模倣されるためつながりこそが重要と認識することが重要になる。
デジタル革命は顧客起点のマーケティングへの回帰であり、コロナ禍で企業につきつけられたのはデジタルに対応していたかではなく、顧客起点に立ったビジネスモデルを追求してきたかどうか。
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