メタ認知 三宮真智子 3分要約

3分要約

認知とメタ認知とは何か

 認知は見る、聞く、読む、話す、記憶、理解、考えるなどの頭を働かすこと全般のこと。

 メタ認知は認知についての認知のことで、より高い位置から認知を捉えたもの。

メタ認知はどうやって高めるのか

 認知の仕組みを理解することで、認知活動の能力を上げることができる。

  • 興味のあることほど効率良く学習できる
  • 他者との関わりから知的な刺激を受ける
  • 自分で考える→他人の考えに触れる→自分の考えを見直すというループを意識する
  • ポジティブな感情をうまく活用する

変化の大きく早い社会では、個人個人に的確な判断が求められ、メタ認知を高めることの重要性は増しており、個人の能力Upだけでなく、社会全体を多方面に幸せな方向に導くことができる可能性を秘めている。

メタ認知はなぜ注目されるのか

 知能の中心が認知的な能力であるため認知状態をモニターしたり、コントロールすることが知的活動において重要なため。

 変化が激しく不確実な社会では従来のような学力ではなく広い視野を持つことや多様な立場を尊重する姿勢を保つことが重要であり、これにメタ認知が大きく貢献する。

自分や他人の認知状態を認知するメタ認知の重要性が分かり始めている

 メタ認知という言葉を聴く機会は増えている。その意味は分かりにくいが、メタ認知とは認知についての認知のこと。認知とは見る、聞く、読む、話す、記憶、理解、考えるなど頭をはたらかせること全般のことを呼ぶ。

 メタ認知とは認知をより高い観点から捉えたもので、自分自身や他人の認知について考えたり、理解したりすること。自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をするもう一人の自分とイメージするとわかりやすい。

 メタ認知的な活動は認知状態をモニターしたり、コントロールすることは、他者の視点に立ったり、自己調整を行うために欠かせない活動といえる。

メタ認知は知能に大きな影響を与える

 心理学では従来、頭の良さを知能という概念でとらえてきた。知能は学習、抽象的に考える、環境に適応するためのものとされるが、このような幅広い能力をきちんと図るのは不可能なため、知能は知能検査で測られた能力と定義されている。

 メタ認知の存在が知られてくると、知能の中心が認知的な能力であるため、メタ認知が知能に大きな影響があるのは間違いないとされてきた。メタ認知能力が認知能力を十分に発揮させ、増幅させる力であり、知能の中枢といえる。

 従来の知能テストは比較的簡単な課題をいかに早く解くかを問題としていたが、認知作業の早さだけでは課題の遂行能力や認知的な制御がどのように働いているかを診断することはできず、実生活における頭の良さを測ることはできない。

 本当の頭の良さは狭い意味での認知能力の高さだけでなく、他者と協働したり、外部の環境を活用することで自分の認知能力を高め、それを発揮できる力。

 変動が激しく、不確実で複雑で曖昧な社会では、従来のような学力ではなく、広い視野に立って物事を考え、多様な立場を尊重し調整することが必要になり、メタ認知の必要性は増している。教育現場でも学びに向かう力の育成などメタ認知を意識した内容が少しづつ始まっている。

メタ認知で認知の仕組みを理解しておくと認知能力上がる

 メタ認知で自分の認知の仕組みを理解しておくと、認知活動の能力が上がり、学習の効率を上げたり、パフォーマンスを向上させることができる。

 意味のない文章を覚えることは難しいが、意味づけをすると覚えやすくなることは多い。「力持ちの男が新聞を読んだ」よりも、「力持ちの男が力仕事のアルバイトを探すために新聞を読んだ」のほうが個々の情報が関連づけられ記憶しやすくなる。

 抽象的な知識に文脈を与えることで、知識は記憶に残りやすくなる。さらに記憶した文脈から本質的な構造を取り出す脱文脈を行うことで、学んだことを身に着けるだけでなく、応用できるようになる。文脈化と脱文脈の工程を意識すると学習の応用が利くようになる。

興味のあることの学習効率は良いため,自分が興味を持てるように工夫すると効率が上がる。

 勉強がつらいと感じると学ぶことがストレスになり、ストレスホルモンの分泌で記憶や思考といった認知活動は妨げられる。一方で、学ぶことが楽しいと思えるとドーパミンやオキシトシンといったホルモンを分泌し意欲が高まり、頭もよく働くようになる。

 自分の関心のある分野では学習の効率は良い。関心の無い分野の学習を行う場合は、内容を具体的な話に置き換えるなど自分ごとにすることで負担を感じずに学びを深めることができる

自分で考える→他者の考えに触れる→自分の考えを見直すというループが重要

 他者と関わりも知的な刺激を受け、頭を活性化するため、他者とアイディアを出し合うことも効果がある。どんな意見でもいえる雰囲気がある、どんどん交代して話す、聞き手が相槌打つなども発想が活性化せることがわかっている。

 ただし、自分の発想力を高めるには自分で考えることが重要。自分でこれ以上無理というところまで考え、他者の考えに触れ、自分の考えを見直す工程を繰り返すことで、思考の柔軟化や発想の増加や質の向上が可能になる。

 多様なものの見方は論理的な意見の組み立てや説得力ある意見を形成するためにも欠かせないが、自分に近い意見をばかり見てしまう傾向はネットの普及によってさらに強まっている。討論は異なる意見を持つ人に触れる機会を与えてくれるため、反対意見を持つ人と討論することもメタ認知を高めるために有効。

 頭の働きは環境や体の影響を受けやすいため、頭の状態をモニターし、うまく働かない原因を探し取り除くことを習慣化することが重要。メタ認知に関する知識を持つことでの頭を上手に使うことができる。

感情は認知能力に大きな影響がある

 感情の乱れは認知機能を大きく低下させる。またメタ認知機能も低下させるため、自分の認知機能の低下に気づきにくい。

 感情は直面する現実そのものによって直接引き起こされるのではなく、現実をどうとらえるかで生じるため,ある出来事をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかで感情は大きく変化する。人類は社会的関係に強い関心を持つように進化してきたため、人間関係で悩みやすく感情を乱されやすい。

 ネガティブな感情に捉われたときこそ、自分の感情を冷静に見つめ、なるべく悪いほうに考えをめぐらせないようにすることが重要。

 良い感情は認知機能を大きく高めるため、メタ認知によって自分の感情をモニターし、よりポジティブにしていくことはとても有効。諦めや不安が大きいと感じたときには、少し自信をつけるように低い目標を立て成功体験を蓄積することでやる気が高まる。メタ認知によって自身で感情をコントロールすることができることが実感できるようにもなる。

子供の時にあれこれ考え,失敗しながら良い方法を探ることがメタ認知を育む

 メタ認知が育つためには環境、特に人的環境が重要。まずは自分で考えることが大切だが、この主体性が身につくかどうかは周りに人々の態度に大きく影響される。子供のころにあれこれ考え、時には失敗しながらより良い方法を探っていくことがメタ認知を育むためには必要になる。多様な見方に触れ、思考を柔軟にすることでメタ認知を鍛えることができる。

個々で判断をおこなためにはメタ認知を高めることが不可欠

 メタ認知は思い違いをただしたり、より良く学ぶための頭の働きを良くすることができ、環境の力でメタ認知力は伸ばすことができる

 多くの人が自分の頭脳の潜在能力に気づいておらず、それをメタ認知で発揮することができる。優れたリーダーに従っておけばよい時代は終わり、個人個人に的確な判断力が求められる時代になっており、メタ認知を高めることは必須になっている。

 メタ認知は個人の頭の中だけで完結するのではなく、他者から刺激を受け成長していく。メタ認知はすぐに身につくものでなく、人間の認知のもろさ、危うさを受け入れたうえでそれをどうとらえるかを日々考えることで育っていく。メタ認知で自分の力を延ばしながら、社会全体を多面的に幸せな方向に導いていくことができる可能性を秘めている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました