ライフシフト 100年時代の人生戦略 リンダ・グラットン アンドリュー・スコット 東洋経済新報社 後半 概要

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多様化によって実験のリスクが減り、必要性は増える

 長寿化のもたらす恩恵は時間という贈り物。人生が長くなれば目的意識を持って有意義な人生を形作るチャンスが生まれる。

 3ステージに当てはまらない新しいステージも多く実践されるようになっている。新しいステージというと仰々しく聞こえるがティーンエイジャーや引退者のステージも19世紀になって形成され始めたに過ぎない。

 3ステージの人生では実験は危険で普通と違う道を歩くことは大きなリスクであった。マルチステージではステージが多様化するため、個人ごとに魅力的な組み合わせや順序が変化するため、実験のリスクが減り、必要性は増すようになる。

 ティーンエイジャーや引退者のステージは年齢とステージが一致していたが、マルチステージが一般化すればステージと年齢が一致する時代も終わることとなる。年齢とステージが切り離されため、若さや柔軟性、未知の活動に乗り出す姿勢を持つことは重要になる。

新しいステージへの移行には無形の資産への投資が必要

 エクスプローラーは探究者のステージであり、金銭を稼ぐことよりも身軽に様々なことに挑戦したり旅をすることで新しい経験をし自らの価値観を問い直すことになる。

 何歳でもエクスプローラーになれるが、特に適しているのは18~30才、40才半ば、70~80才の3つに時期。これらの時期は人生の転機になりやすいため、内省や新たなスキルを得ることが必要になる場合が多い。

 現代の若者世代は選択肢を多く持ち、選択肢を分析し自分に合うものを選び、アイデンティティを形成していくことを明確に意識しすることが前提となる初めての世代。

 インディペンデント・プロデューサーは旧来のキャリアの道筋から外れ起業家となったり、企業と新しいパートナー関係を結んだりするステージ。

 従来の企業家と異なり、永続的な企業を作るというよりもビジネスを行うこと自体を目的としている。生産活動を通じて、学習し無形の資産を増やすことが最大の目的となる。

 ポートフォリオ・ワーカーは異なる活動を同時に行うステージ。過去の経験を活かし相乗効果のある複数の活動が出来れば大きな効果を上げることができる。

 それぞれのステージの移行期間には無形の資産に大きな投資を行うことになる。エネルギーの最充填やスキル、あたらしい人的ネットワークに投資する自己の再創造が主な目的で移行期間を乗り切るお金を用意しておくことも大事になる。

お金との向きあいかたは長期的な目線を持つ

 長い寿命は必要なお金を増やすことでもあり、お金との向き合い方も変える必要がある。金融リテラシーを高め、短期的な利益に目を向け過ぎず、長期的な利益に目を向けることを意識することが重要人間は本能的に長期的視点を持つことが苦手なことを理解しておくと短期的な利益に惑わされにくくなる。

余暇の時間を消費ではなく、投資に変えることが求められる

 長寿化が進んでも、時間の使いかたの重要性は変わらない。20世紀移行労働時間は減少し、余暇時間は大きく増え、それに伴いレジャー活動が著しく増加した。

 今後も労働時間の短縮は続くと見られ、また多様なステージは働く時間の多様化を求める要望も大きくなると考えられる。これまで通り、金銭的価値を重視する時期は長時間の労働を行い、休暇や家庭を優先する時期は労働時間を短くするなどの働き方を企業が認めるようになる可能性も高い。

 余暇時間の増加をそのままレジャーで消費してしまうと、無形の資産への投資が多く求められる時代に対応できない。

人間関係も大きく変化し、固定的な役割は失われていく

 従来の社会でとはパートナーとの関係性も大きく変化する。3ステージの人生では男性が金銭を稼ぎ、女性が子育てや家事を行うと役割を分けることが多く見られた。女性が金銭的な労働を増やすことで固定的な役割から流動的な役割へと変化していく。

 役割が流動的になるとパートナーとより質の高い関係を持つことが必要になる。二人が役割を流動的に変えられれば、片方が移行期間になって収入が低下しても対応することができる。

 他にも長寿化が異なる世代との交流を促し、世代間の分断を弱めたり、人生が長くなり子育てに費やす時間が少なくなれば友人との関係性を重視するようになるともいわれている。

個人、教育機関、企業全てが変わる必要がある

 ここまで長寿化のもたらす変化と必要な意識について書かれてきた。大きな意識の変化を促すため抵抗や課題も大きい。平均寿命の上昇予測の精度は高いため、適切な準備を行うことも可能と考えられる。

 個人の意識:3ステージの人生ではアイデンティティの大きな変化は必要なくロールモデルにしたがっていればよかったが、長寿化では変化と多様化が避けられず、そのためにも計画と実験を行い柔軟性を持つことが必要。また無形資産への投資を行うことも重要になる

 教育機関:長い人生では学習と教育の重要性は増し、多くの時間を費やすようになる。テクノロジーの導入、年齢の壁を壊す、創造性や独創性、やさしさなどを教える方法を考えること、テクノロジーの進歩に対応するための教育を拡大することなどが課題になる。

 企業:雇用者と働き手の関係を有形の資産だけでなく、無形の資産でも結びつくようにする。移行を助けるような制度をやマルチステージを前提とした柔軟なシステムを作る。年齢を基準にすることをやめ、実験を行うことを容認することが必要。

 企業は画一性を求めるため、変革には障害も多いが、人材の重要性が高付加価値産業で増しているため、優秀な人材を求める企業から徐々に多様な選択肢を持つようになると予想される。

 政府:法、税、社会保障、雇用、結婚などの精度を長寿化社会に合わせて作り変える必要がある。3ステージの人生を前提した制度設計をやめ、移行に伴う不利益を小さくしたり、低所得者の移行を助ける制度を作る、有形資産だけでなく無形資産にも目を向ける。

 人間は現状維持を好み、短期指向が強く変化のもたらす恩恵が先の場合、なかなか実行に移すことがない。企業も画一的で柔軟性の低い制度を守ろうとするが、多くの人が行動を起こすことで企業の変化を後押しできる。一人一人が実験を通じて真に大切なものを探索するようになり、多様性が称賛されるようになることが長寿ライフの果実となる。

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