概要
連日軍事政権の発足でニュースにもなっているミャンマー。そのミャンマーの中で差別されているロヒンギャの人たちがなぜ差別を受けるようになったのかを知ることはニュースを理解するうえでも大きな助けになる。
2017年にミャンマーから隣国バングラディシュに流れ出る難民の姿が、メディアで多く報道されてた一方でロヒンギャ問題が正確に報道されていないケースも目立つ。
ロヒンギャ難民の問題から理解しようとすると理解は難しい。軍事政権の政策によってロヒンギャ問題が起こり、結果的に難民になったという背景を知ることが重要。ロヒンギャではなく、難民だけに焦点を当ててしまうと問題の把握と解決が難しくなる。
27年以上ミャンマーを取材してきたジャーナリストによってロヒンギャ問題が解説されている。
常に他正しい情報を得ること、自分の味方にも偏見や間違いがあるかもしれないと思うことが、この問題に限らず重要であるかがよくわかります。
ロヒンギャとは
ミャンマーとバングラディシュの国境付近に暮らす人々でイスラームを信仰している。
現在ミャンマーからもバングラディシュからも拒否され、無国籍状態で行き場所がない状態。
なぜ差別を受けるのか
ミャンマー軍事政権の政策が生み出した構造的な差別。民族や文化の違いを軍政が利用し対立を作り上げてきた。
軍部も自分が行使する権力に正当性がないことを理解していたため、市民の反感が軍部に向かないように絶えず、人々を断絶し分裂させておく必要があった。
英国の植民地時代にはインド系の人が多く住み、高利貸などでミャンマー人の反感を買っていた。インド系の反感はムスリムへの反感へ変化し、差別意識を強くしていった。
多数派を占める上座部仏教の権力基盤を強化するためにも、イスラームに対する差別的な潜在意識が作り出されていった。
軍事政権はミャンマーの統一化を図るために少数民族を無視したミャンマー至上主義も推し進めるため同化政策を推し進めており、宗教、民族ともに同化させていく方針であった。
さらにロヒンギャをバングラディシュからの不法移民とし、市民権を与えなかった。このような状態から他のムスリムからも差別を受けるようになっている。
問題の解決のために知っておくべきこと
バングラディシュのコックスバザールにはロヒンギャの難民キャンプがあるが、そこには国連や援助団体から支援を受けた公式キャンプとそれ以外の非公式キャンプがある。
バングラディシュ自体も裕福な国ではなく、ロヒンギャの人たちに仕事を奪われるなどの思いから反発を持っている。
多くのロヒンギャは民族として認められるのではなく、ムスリムとしてのロヒンギャとして認めてほしいと考えている。しかし、国際社会からはロヒンギャ民族問題とされることもあり、解決を困難にしている。
民族と称することで先住民族としての権利を主張していると捉えられとより政府から認められることは難しくなる。にもかかわらず、国連がロヒンギャ問題を少数民族の迫害問題としてことも問題解決を難しくしている。
ミャンマーは2011年まで軍事独裁国で情報統制によって正しい情報を海外から知ることは難しかった。
イスラームの知識不足も問題を難しくしている 日本でのイスラームのニュースは中東のイスラームのものが多く、東南アジアのイスラームの情報は少ない。
またイスラームに対して欧米の報道が偏っている場合も多い。イスラームの派閥争いが宗教戦争になっているイメージがあるが、実際には為政者が対立を理由にして政治的権力や経済的利権を乱用しているだけのケースも多い。
第2次大戦中、日本がミャンマービルマに侵攻した事実も、日本軍の無謀な作戦という視点が多く、
現地の人の被害がどのくらいだったかに触れる報道も少ない。
どうすれば解決に向かうのか
民族問題ではなく、軍事政権によって作られた差別であることを認識する必要がある。
ロヒンギャ難民は絵になるため、ロヒンギャを扱うことで記事や番組が売れ資金を得ることができる
。そのため背景を知らずに報道することもあり、本当の解決は難しい。
市民権法を改正する必要があるが強力なリーダーシップが必要。軍政下での人権問題が原因であることをメディアや教育で伝えていく必要がある。
それぞれの立場の人(自分自身も含め)が偏見を持って見ている可能性があることを常に頭に入れることも重要になる。
アウンサンスーチー氏の存在
ミャンマー軍事政権では独裁者がいたのだが、その名前や存在はあまり知られていない。その要因はスーチー氏の存在があったため。
非暴力の人権活動家としての面が強調されることが多いが、粘り強く現実的な政治家。
軍がなければ少数民族との和解や憲法改正が進まず、その影響力、必要性を考えているため、ロヒンギャ問題に対して公言をしていない。
それが原因で、国外からスーチー氏への批判も高まっているが、批判は過剰と筆者は考えている。
国外のメディアは根本の原因である軍部の批判ではなく、ニュースになりやすいスーチー氏の批判に向けているに過ぎない。
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