仕事の未来 ジョブオートメーションの罠とギグエコノミーの現実 小林雅一 3分要約

3分要約

AIによる仕事の代替が注目を浴びている

 AIやロボットによる生産性向上を図る動きが進んでいる。10数年来には大半の仕事を代替するともいわれている。

 仕事の代替は

  • 人間がやりたくない仕事を代替し、人間はもっとクリエイティブな仕事をする。
  • 企業の人件費削減+生産性の向上

 のどちらをもたらすのか。AIの普及でAIの教師役という新しい職業が生まれたもののとてもクリエイティブな仕事とは言えない。

現在のAIでは一部のタスクを行うくらいしかできない

  • パターン認識のような単純作業は可能だが、人が熟考する必要のあることはできない。
  • 驚くような動きをする反面、ペットボトルの蓋を開けるような単純作業はできない
  • 人間の入力したデータをもとに判断するため、独創的なアイディアを出すことは少ない。また、独創的なアイディアを出しても、出した理由を説明できない。

 等であくまで、人間の仕事の一部のタスクを行うにとどまっている。

 肉体的な作業は人間の様々な動作を行うのはとても難しい。一方で頭脳労働についてもAIを用いた代替、生産性向上は思ったほど進んでいない。

頭脳労働ですら代替は進んでいない

  生産性向上のカギはチームの思ったことを言える精神的な安心感、失敗を認め改善することだが、現状のAIでは対応は難しい。

 AIで精神的な安心を生み出すのは難しく、失敗かどうかを判断するのは人間のため自身で失敗を認めるというプロセスがまだないためAIによる仕事の代替は特定のタスクに留まると考えられている。

この本で学べること

  • AIを使ってどのようなことをしようとしているのか
  • AIでの仕事の代替はどこまで進んでいるのか
  • 仕事の重要な要素とAIではなぜそれが満たせなのか

AIは自動化による生産性の向上に利用される動きが進んでいる

 近年、雇用の変化にAIやそれを搭載したロボットによる自動化で業務の効率化、生産性の向上を図る動きが進んでいる。

 十数年以内に全職種の半分はロボットに置き換えられるという予測もある。

AIやロボットとの共存を図るにはどうしたらよいかを現状を知ることで考えていく。

AIはパターン認識を得意とするがそれ以外は苦手

 若年層の多いインドでは、毎年1200万人が新たに労働市場に流れ込むため、若者の就職難が問題になっている。

 そんな中で新しい職業として「AIの教師」という職業が登場している。

 大量の画像を教材として、これは何々とAIシステムに教え込んでいく。

 機械学習の9割以上がこのような教師あり学習となっており、人間が教師をする必要があり、AIシステムの開発時間の80%を占めている。

 人間によるトレーニングは過酷な単調作業。AIは未来を切り開く夢のテクノロジーのをイメージするが、求められている労働のクオリティは延々と続く単調作業でしかない。

 それでもジョブオートメーションはIT企業特にGAFAがリードし、加速していく。

 Googoleのラリーペイジは

10人中9人は今の仕事をやりたくないでしょう。全ての人が効率性を犠牲にしてまで、今の仕事を守るために奴隷のように働くという考えが、私に言わせば全く無意味です。それが正しい答えであるとは思えません。

P27

 と語り人のやりたくない仕事(3K労働など)をAI、ロボットに任せ、人間はクリエイティブな仕事に従事すべきと語っている。

 AIは教師付き学習が必要で、その精度もまだまだで3K労働を代替する目途はついていない。

 また、AIが新しい労働を生み出してはいるものの、単調な作業の仕事でしかない。

 そのようなことから、研究者の間での共通認識は仕事全てが丸ごと奪われるのではなく、一定のタスク(作業)がAI、ロボットに置き換えられると予想されている。

 AIを敵視するのではなく、活用法を学ぶことが重要。

 フィンランドなどは多額の資金の必要なAIの開発はあきらめ、他国の開発したAIを応用す産業に生かす方針を取っている。 

 今のAIは人間が数秒でできる単純作業はできるが、長い間熟考しなければならないことは出来ない。

  • モノを見て何であるか見わける
  • 目の前の人が言ったことを聞き取る。

 これらの作業はパターン認識と呼ばれる。様々なデータから規則性や類似性を見出す作業でAIでもある程度可能。一方で、人の意図を読み取ることは苦手なため全ての仕事の代替は難しい。

自動運転はAIが職を奪う象徴と見られている

 Googoleの開発した自動運転車は米国内で悪質な嫌がらせにあっている。

 テクノロジーが職を奪う象徴として見られ、反感を持っている人もいる。

 ウーバーは配車サービス業者の草分けとして、注目を集めてきた。

 既得権益(タクシー業界)との闘い、ドライバーの待遇の悪さからの反発などが問題になっている。

 ウーバーはこれらや人件費増に対応するため、自動運転に注力してきたがウェイモ(Googole設立の自動運転開発企業)には大きく劣る。そのウェイモでも運転支援以上の性能のめどは立っていない。

 一方で、ウェイモによって自動運転が実用化されれば、自動車メーカーは車体を製造する下請けメーカに過ぎなくなり、携帯端末メーカと同じになる可能性はある。

AIロボットは一部の作業を肩代わりするにとどまる見込み

 現在のAIロボットは派手な離れ業であっといわせることができるが、ペットボトルの蓋を開けるなどの簡単な作業もできない。それを受け人がやる一部の仕事を肩代わりするロボットの開発にシフトしている。

 これらのロボットは一部の仕事に収まるという主張もあれば、徐々に人間の仕事を奪っていくという懸念もある。

 Amazonの倉庫では、商品棚から梱包スペースまで商品を運ぶロボットを導入した。現在は運搬だけだが、梱包用ロボットの開発も進めている。

 実店舗でもレジレスを進め、省人化を進めている。店舗を巡回し、商品の残数をチェックする巡回ロボットや宅配ロボットは自動運転と同じ技術を使うが、不具合が起きても重大事故につながらないため、実用化は早い。ドローンを利用した配送は安全性や騒音などから一部に留まるとみられる。

 ロボットの農業分野での活用には期待が大きい。農業就労者数の減少を補える可能性もある。

画像診断ではAIが活躍するが、説明責任を果たせない点が欠点

 医師による誤診率は1930年ごろから改善していない。AIに診断を任せることで改善ができるのだろうか。

 IBMのワトソンは自然言語処理に優れたAIとして、クイズの回答のために開発された。

 医療用にも用いらており、専門家と同じ治療法を提示したり、医師が見落としていた知用法を発見したこともあった。

 ワトソン自体が医者の入力したデータをもとに判断しているため、人間を超える独創的なアイディアを出すことはない。

 また、医学情報を常に更新する必要があるなどの弱点もあるが、若く地位の低い医師でも年長で地位の高い医師に意見しやすいなど、階級的な現場を改善することにも期待されている。

 ディープラーニングによるMRIやCTの画像診断も進化し、医療現場での利用が期待されている。

 医療データの取り扱いも、現在は匿名化されたデータであれば企業が許可なく利用できるが、許可が必要となる流れもある。

 ディープラーニングが複雑化しており、説明責任(なぜ、その結果を得たりや提案をするのか)の説明が不可能になると、どこまで信頼できるかは分からない。

生産性には心理的安全性が重要だがAIで心的な部分を補うことは困難

 アマゾンは従業員の再教育プログラムに力を入れている。同じ職場で高いレベルに移ったり、他の職業の訓練なども含まれている。

 このプログラムはアマゾンの過酷な労働環境への反発に対するPR戦略の意味合いが強い。ロボットによる人の代替までのつなぎとして、ヒトのロボット化(厳しい管理下での仕事)が批判されている。

 Googoleではチームの生産性の違いを観察し、パターンを見出そうした。しかしなかなかパターンを見出すことができなかった。

 その後の研究で心理的安全性を持つチームの生産性が高いことがわかってきた。本来の自分をさらけ出し、それを受け入れる安心感がチームの生産性を高めると結論つけられている。

 アマゾンは社内ダーウィン主義ともいわれる苛烈な競争文化をもち、従業員同士が批判しあう。

 企業文化は正反対ではあるものの、心的な面が生産性の向上のカギを握っている。また、両企業とも失敗を認め、改善に取り組んでいる。

 これは現状のAIでは対応が難しい部分。

思い切った改革をしなければ、生きるために働くだけになってしまう

 イタリアでは若者の就職難から高度人材が単純労働を行っている。 

 日本でも終身雇用、年功序列から能力重視への移行が進んでいる。今ここで思い切った改革をしなければ、高度人材が単純労働でただ生きているために働くことになってしまう。

 単純労働はAIやロボットに奪われる可能性もあるが、人が働くのは人に認められ、人として尊重されるためという部分もある。

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