子供が教育を選ぶ時代へ 野本響子 集英社 3分要約

3分要約

教育はどのように変化しているのか

 従来の教育は忠実で従順な市民を生み出すため、画一的で自分で考えることをしない人を生み出すことを目標としていた。

 時代の変化で教育で求められているものが変化している。

現代の教育に求められていることはなにか

 知識や情報の詰め込みの意義は減少し、情報の意味を理解したり情報の断片を結び付けることが重要になっている。

 そのためには4つのC、批判的思考、コミュニケーション、協働、創造性を学ぶことが重要とされ、これらを身に着けるためには教育を内容を大きく変える必要があるが。

マレーシアの教育と日本の違いはどこにあるのか

 マレーシアは4つのCを教える新しい教育のシフトしているため3つの特徴がある。

1.教育の種類が多い

2.転校委が容易

3.学校以外の学ぶ場が整備されている

 内容にも違いがあり、自分の考えを正しく伝える言語能力、表現能力を身に着けることを重視した内容になっている。日本でも少しづつ変化が見られおり、親は今が過渡期であることを認識しておくべき

教育について理解すべきことは何か

 完璧な教育は存在せず、子供の特性によって適切な教育は異なる。結局は子供が自分で楽しいものを見つけるしかないため、親にできるのは子供のやりたいことを邪魔しないで何かに興味を持ったときに学ぶ方法を紹介できるようにしておくこと。

世界では教育の多様性が増加している

 社会が変わっているのに学校教育は昔のままという意見はよく聞かれること。筆者は公立高校になじめなかった子供を連れてマレーシアに移住し、教育の多様性に驚いた経験をもっている。

 マレーシアでは公教育の多様性、インターナショナルスクール、ホームスクールと呼ばれる無認可の教育機関が一般的であり、転校が当たり前にできている。

 日本はマレーシアの10~15年前の状況にて、多様化が少しづつ進んでいる。日本と海外の教育の違い、海外の新しい教育の現場実感が紹介されている。

日本の教育は子供になぜを考えさせないような教育

 近年小学校での厳しい指導(漢字のとめはらい、給食中の私語禁止など)が報道されている。多くの学校では子供のなぜと考えさせないような教育になっている。

 筆者の子供もこのような公立校の教育が合わず、マレーシアに移住をし教育を受けている。マレーシアの教育には3つの傾向がある。

1.教育の種類が多い

2.転校が容易

3.学校以外の場所で学ぶ流れが確立しており、好奇心の強い子にも対応できる。

以前の教育は忠実で従順な市民を生み出すことを目的としていた

 知識を授けるタイプの教育は産業革命の時代に工場で働く人を作るための教育で、日本だけでなく世界中で行われていた。画一的な行動をとらせ、事業時間を細切れにし自発的な学習を拒むことで自分で考えられる人ではなく、忠実で従順な市民を生み出すことを目的としていた。

時代の変化で必要な教育は変化している

 現在では知識や情報を詰め込むことの意義は減少し、情報の意味を理解したり、情報の断片を結び付け世の中の状況を幅広くとらえることが重要になっている。そのためには批判的思考、コミュニケーション、協働、創造性の4つのCを学ぶことが重要とされている。

 マレーシアの先端である21世紀型の教育はこの4つを身に着けることを重視しているが、日本の教育では特に情報の仕分け、考える力、情報発信者を疑う力が著しく欠けている。日本でもアクティブラーニングなど教育改革を進めているが、入試の仕組みが変わっていない、教員の負担増に対応できていないなどの理由で浸透してはいないが、変わってきている部分もある。親は今の日本の教育は過渡期であることを認識しておくと良い。

 海外に移住しないと新しい教育が受けられないわけではなく、自習のための教材はインターネットにあふれている。ただし、日本語のコンテンツの数は英語に比べて圧倒的に少ないため英語ができるだけで学びの範囲は世界中に広がっていく。

21世紀型の教育は一生役立つ思考力を身に着けることが目的

 世界の教育は大きな流れとして従来型と21世紀型に分けられる。従来型は先生が教科書、黒板を使って、知識を教えるもの、21世紀型は4つのCを教える方向のもの。

 子供の学力を測定を示すPISAランキングの上位国でも従来型から21世紀型への変換を目指す国が増えている。多くの国では社会で求められる能力と学校で教えていることがあっていないため、変革が必要と考えられている。

 ただし、変革によって職業に役立つ教育だけをやるのではなく、ベースとなる方法論をじっくり学ぶことを優先し、哲学などを通じて一生役立つ思考力を身に着けることを目的としている。

 マレーシアでも親が自分たちの受けた教育との違いから、従来型の教育を望むことも多いため、両方を折衷した教育を行う学校も多い。また、子供によって合う合わないもありやってみないとわからない面もあり、重要なのは子供自身が納得しているどうかになる。

4つのCを身に着けることで思考力を養うことができる

 21世紀型での4つのCの教育は従来型とは大きく異なる。

・コミュニケーション

 授業を聞いているだけでなく、意見をいうことを重視され、伝え方や表現法を訓練させる課題が多い。21世紀型の教育で最も重要視されるのは自分の考えを正しく伝える言語、表現能力。教師は教えるのではなく、答えを見つける力を育成する必要があり、そのためには感情コントロールに優れ、意見を言いやすい環境を作る能力が重要になる。

・協働

 学校教育の重点が競争から協働へと向かっている。自分の成績が良いだけでなく、人に教えたり、リーダーシップを発揮することが評価され、互いの能力を補う力での分業作業を学ぶ。

 グローバル化などの変化に伴い、年齢、性別、国籍などを問わずに様々な人と協力できるかも重要になっており、そのために自分たちが無意識にのうちにバイアスを持っていることを認識させる授業を行うこともある。

・創造

 クリエイティビティが教えられるかは議論があるが、意見を言いやすい環境が自由な発想を生むという研究結果はある。課題でもプレゼンをしたり、動画を作るなどもある。

 自分で考えた発明品を作る過程でデザイン、素材、製造工程、資金調達を経験するような授業も存在する。

・クリティカルシンキング(批判的思考)

 多様な視点から考察する能力を学ぶことも重要とされる。そのために特定の記事を題材にして、書かれた目的、ソース、メディアの立ち位置、バイアスの有無を分析する授業もある。

 批判的思考=論破ではなく理解を深め、視野を広げるためのもので、自分や世の中の正しいとされる情報を疑うところからスタートすることが重要。

適した教育は子供によって異なる

 学校主導ではなく、自分主導で学ぶ人も増えている。動画や独学サイトの存在で自学習の効率は大きく向上した。

 科学者、専門家がYoutuberとなり、教育動画を提供することも増えており、多数の生徒に一人の教師が知識を教えるのであれば、動画でもよいのでは?と子供たちが気付いている。大学の講義を無料で聴講できるサイトやプログラミングを学べるサイトも多く、ホームスクールなどでは教師は教えるのではなく、子供が興味のあることを探り、適したツールを紹介する役割へと変化している。

 自己学習にも向き不向きがあり、モチベーションを保つことが難しかったっり、ITリテラシーの低い場合には向いていない。好奇心旺盛で学びたいことがきまっているタイプの人に向いている。

完璧な教育は存在しない

 マレーシアには従来型から21世紀型、その折衷型と教育の多様性は大きい。学校に合わないからという理由で転校することも一般的で、多様な教育でどれが子供にあっているかを選ぶことができる。子供にも多様な選択肢があればどれを学ぶかを悩んだり、変更することで思考力、決断力も学んでいる。

 日本でも少しづつ、教育の選択肢は増加しており、不登校を問題行為とはしないなどの変化もみられる。教育を選ぶ時代になると、選択肢が多くなる悩みも増えていくが、子供が何者かはやらせてみないとわからないため、合う学校は人によって異なる。マレーシアに移住して生き生きする子も日本に帰りたいという子も両方いる。

 完璧な教育は存在せず、向き不向きがあるが、子供がハッピーでなければ学ぶことができないことをまずは理解する必要がある。

 子供の成長に最も影響が強いのは子育てなどの共有環境ではなく、友達関係のような非共有関係であるとのデータもあり、子供にとって友達の存在はやはり重要。

親のできることは子供の邪魔をしないこと

 これまでと違い学び続けることが必要な時代になり、早期教育の意味は小さくなっている。未来を予測し、どんな能力を身に着ければよいかは誰にもわからないため、重要となるのは変化に対応できるためのスキル。精神的な柔軟性を身に着けるためにも一度学んだことを捨て、別のことを学ぶ経験や以降錯誤で失敗することも重要になる。

 親にできることは子供の邪魔をしないこと。結局は子供が自分で楽しいものを見つけるしかないため。子供が何かに興味を持ったときに学ぶ方法を紹介できるようにすると良い。

 どうしてもきっかけを作る多い場合は、親がやってみるとよい。親が夢中になっていれば子供もやりたくなるかもしれない。

 教育改革は難しいが、親や教師、社会が学びなおす姿勢をもてば、徐々に変わっていくことができる。教育に悩んだときはまず目の前の子供が何を見ているのか、どんな世界に生きているか聞いてみると親が知りえないほど広い世界が広がっているかもしれない。

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