学校では学力が伸びない本当の理由 林純次 3分要約

3分要約

日本の学校ではなぜ学力が向上しないのか

 学校教育が様々な面で制度疲労を起こしているにも関わらず、時代の変化に追いついていない。学校制度、教育内容、教師、親など様々な原因がある。

教育制度の問題点はなにか?

 教育の目的がいまだに素早く的確に回答を出すことに重きを置き、暗記を重視している。世界では暗記に加え、思考力、言語、行動力などが重視されている。

 一斉授業が一般的でレベルの高い子は多くの時間が暇で、認知に問題のある子は全く理解できないとう状況が続いてしまうことも問題になっている。

教育内容の問題は何か

 教科書のレベル、分量、科目間の関係性、授業時間の不足など量、質とも問題視されている。少子化によって受験が簡単になっているため、教育内容が不足しても進学できてしまうことで問題が顕在化しにくくなっているが、研究レベルの低下や優秀な人材の海外流出など問題も多い。

教師の問題は何か

 過酷な労働環境で優秀な人材が集まらず、人間的に問題のある人も増えている。仕事量も過剰で重要であるはずの強化を教える準備や知識の更新が後回しにされることも多いため、勉強は学校に期待せず塾や予備校で教わろうとする生徒も多い。

問題を解決するにはどうすれば良いか

 多くの対策があるが、大きくは下記のようなものが挙げられる。

・学校の卒業ではなく、各スキルでの認定を行うことでのスキルの明確化と学ぶ場所の多様化

・年齢などに捉われない柔軟な通学制度や能力別のクラス、飛び級の容認など多様性を広げる

・教師の負担減と知識のアップデートを促すランク化

・科学的に意味のある指導法の一般化

制度面、人材面で大きく改革しなければ教育を変えることは出来ない。大人がそれぞれに課せられた責任を果たし、関与していくことが重要。

日本の学校では学力は向上しない

 20年の教師生活を行い、生徒の利益を最優先してきた筆者から見ると、現在の日本の学校では学力が伸びない。

問題は、制度、運用、環境など広範囲に渡っている。現在の教育は同じタイプの人と協調し、正答のある課題に対し、素早く的確な回答を出していく人材の育成のままで時代の変化に追いついていない。

日本の問題点、海外の取り組み、筆者の思う対処法などが述べられている。

学校教育の制度は制度疲労を起こしている

文部科学省のカリキュラムは未だに暗記に重点を置いているが、世界では暗記に加え、思考力、言語力、行動力になっている

不登校の増加、通信制の増加などは制度疲労を表した要因である。フリースクールなどが充実するなど少しづつ多様化している面はあるが、教育界には代わるべき点はまだ多い。

理想と現実のギャップが大きすぎる

 普通学級の生徒であっても、その10%程度は基本的な認知能力に欠陥があり、多くの学校では彼らを落ちこぼれしないような授業が行われている。文部科学省は「自ら考え、判断し、表現することにより、様々な問題に積極的に対応し、解決する」ことを目標に掲げているが、現実的にはクラス内での差が大きく対応は難しい。

 暗記力や我慢強さなどに大きく遺伝が関わっており、生まれながらに暗記が苦手な場合や忍耐力がない場合もあることを前提に、担当する生徒がどのような性向を持っているかを見極める必要がある。

教員のレベルも低下している

 教員のレベルの低下も止まっていない。正規の免許状を持たない教員の増加、免許状を持っている教師の授業の質も低下傾向にある。

 過剰な仕事量から教科を教える準備時間を減らしていること、労働環境の悪さなどが知られることで、採用倍率が下がっていることが原因。多くの子供が勉強は塾や予備校の先生の方から勉強をおそわりたいと感じている。

文科省のカリキュラムや方針にも問題がある

 一貫性のない文科省のカリキュラム設定、TOEFLなどの英語の民間業者の利用や記述式の導入を見送ったことなどからも、学力を本気で高めようという意志が感じられない。

 教科書のレベル、分量も他国と比べて低く、内容に疑問が残る部分も多い。さらには授業時間不足や科目ごとの連携のなさなども大きな問題になっている。

 みんなで同じ内容の授業をうける一斉授業が未だにほとんどであることも問題。レベル高い子にとってはレベルが低く退屈を感じている。一方で能力的、精神的に学習を行うことが難しい子にとっては意味がわからない状態で騒いだり、暴れたりといった行動につながることも多い。

 定期考査の影響で試験前しか勉強しないため、学習し続けるという習慣がつかないことも問題になる。

両親にも問題は多い

 両親の影響も大きい。いわゆる毒親の増加、モンスターペアレントに対して教師が萎縮してしまうことも多い。

ネグレットや虐待を受けた子が家庭でのストレスから学校で暴力などの問題に至ることも少なくない。

 家庭で行うべきしつけを学校任せにするなど学校にお守りを期待する保護者も増えおり、本来の学力の向上や人格の陶治に取り組めていない。

少子化によるレベル低下、優秀な人材の海外流出も止まらない

 少子化によってどこかに進学できるという状況も勉強量の少なさの原因になっている。過度な受験戦争には賛否があるが、受験制度は必要で、その多くが暗記量を測る物でも仕方ない。知識を蓄えることなしに考えることも応用することもできないため、知識の蓄えを問う受験精度の維持が必要である。

科学研究でのレベル低下も止まらない。博士の就職先のなさなども要因で優秀な生徒の海外流出も加速してしまっている。

オンラインの利用で多様な教育が可能になる

  オンラインでの学びの場は増加しおり、それぞれのレベルの子にあった速度で進めることができる。レベルの高い子が退屈しないなどメリットが大きい。ホームスクールも広がり、成績が伸びる例も報告されている。

 これらの教育では社会性が育たないとの声もあるが、現在の学校が社会性や協調性を身につける場になっているとはいいいがたい。ホームスクールを選択する場合積極的に社会のコミュニティに参加させることも多く、デメリットとも言い難い。

問題の解決には状況把握と多様性を持った仕組みを作りだすことが必要

多くの問題を抱える中でどう変えていくのかには、さまざまな手法がある。

  • カリキュラムを段階的に容易することで無駄を少なくする
  • 学ぶ場所や方法を選択できる制度に変更する
  • 英語検定のような検定を各科目でおこない実力の補償や能力の明確化を行う

学校の卒業証書よりも学習した修了証や能力資格に価値をおくことができれば、多様性に富んだ教育が可能になり、経済格差や地方格差による影響を減らすこともできる。

  • 能力別のクラス編成とし飛び級を認める
  • 転校をしやすくする
  • 大学の数を減らし、大学に進学するコースと技術を身につけるコースを区分する

 多様な教育を取り入れるためにも、柔軟な通学制度と明確な目的を持たせることが重要になる。

  • 部活動などのアウトソーシング
  • 教員制度の改革での教員の多方面からの評価、ランク化
  • 遺伝子の影響の大きさを認め、努力すれば夢は叶うという思考からの脱却
  • 科学的知見にもとづいた指導方法

 若い世代が次の時代を担うために必要な能力を身につけるのに適切な方法を多数用意することが重要。大人たちがそれぞれの責任において学校の現状を知り、新たなシステムを作っていくことで本当の義務教育を作り出すことができる。

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