政策起業家 駒崎弘樹 筑摩書房 3分要約

3分要約

政策起業家とはなにか?

 官僚や政治家だけでは解決できない複雑な問題に取り組み、政策のアジェンダ化に尽力し、政策の実装に影響を与える人のこと。

なぜ政策起業が重要なのか

 社会の変化が早く、お手本の無い時代で政治家や官僚以外の視点、特に課題の当事者たちが政策に関わることの必要性が増している。

 一個人が社会問題に小さな解を生み出しても、社会に広げるのは難しいが、国が政策化すれば社会を変えることができる。

 選挙だけで民主主義に参加するのでは少なすぎるため、投票以外の方法で民主主義に参加することで社会を早く変えられるようになる

政策起業家が政策を与えたものはどんなものがあるのか

 小規模保育の実現、医療ケア児の預かり、双子ベビーカーのバスへの乗車など様々。必要無いルールの変更、多様性の少ない議員への問題提起で政策化を実施することができる。

どんな方法で政策起業できるのか

 事業化し、それをてこに国を動かす方法もあるが、ごく普通の人がアンケートを取り、区議に連絡を取ることで政策化した例もある。

 不条理を何とかしたいと思う気持ちがあれば、誰もが政策起業家になることができる。

官僚や政治家でなくても政策に影響を与える人を政策起業家と呼ぶ

 筆者はこれまでNPOの代表、民間人として、いくつもの法律を変えてきた。官僚や政治家だけでは解決できない複雑な問題に取り組み、政策のアジェンダ化に尽力し、政策の実装に影響を与える人を政策起業家と呼ぶ。

 かつてのように欧米にお手本があった時代は終わり、社会の変化が早くなる中で政治家や官僚だけが作った政策では日本は回らず、課題の当事者たちが自ら政策を考え討議する回路をつくる必要性は増している。

 本書では、普通の人が政策、制度を生み出し、小さな個人が大きな変化を生み出す奇跡の軌跡を紹介する。

個人が見つけた社会問題の解が政策化し社会を変えることが可能

 筆者は病気になった子を預かる病児保育を行うNPO法人フローレンスを起業し、社会保障からこぼれた人々を助けてきた。それによって政府の委員会に呼ばれ、政策起業を行うようになった。

 自社の社員が保育園に入れないことをしり、小規模な保育園を作ることを決意。しかし保育の人数が20人であることが認可保育園での条件の一つであるため、小規模保育園を開くことはできなかった20人という数字に意味がなかったため、ルールを変えることで実験的に、小規模保育園を作ることができ、のちに法制化され、正式に小規模保育が可能になった。

 一個人が社会問題に対して小さな解を生み出し、それを国が政策化し、社会を変えていくという回路が存在することが存在しており、世の中を変えることは絵空事ではない。

 小規模保育は2010年に筆者が立ち上げた1つだけだったが、2015年には1600か所にまで広がっていた。単体でどれだけ頑張ってもこれほどの数の保育園を作ることは難しいため、制度化のインパクトは非常に大きい。

政治家が社会課題の当事者であれば解決をしやすい

 医療を必要とする子(医療ケア児)を預かってくれる保育園、幼稚園はなく、両親が付きっきりで孤立してしまうケースも多い。医療ケア児は医療の発達で昔であればなくなっていた未熟児を救うようになったために生まれることができるようになった。そのため自治体で把握もできておらず、対応ができていない。

 筆者たちは杉並区と協力することで障害児保育園ヘレンを開園することができた。さらに自身も医療ケア児を持つ野田聖子議員の働かけもあり、医療ケア児の受け入れ努力を法律化することができた。社会的課題の当事者はマイノリティであるため、政治の場での発言はできないが、当事者が政治家の中にいれば政治的アジェンダに押し上げやすい。政治の場に多様な当事者が必要なる理由はこういう部分にある。

事業化しなくても政治を動かせる

 社会課題の解になるような小さな事業を立ち上げ、それをてこに制度を変えてきたが、実際に事業を行わなくても提言に強い力を持たせることは可能。

 日本ではひとり親の貧困率が世界的にも高い。低所得のひとり親への児童扶養手当は一人めは4万1300円だが、第2子は5000円、第3子は3000円と子供が増えるごとに減額されている。

 筆者はネット署名を集め、政治家に提出することとしたが、その過程で反対意見も噴出した。しかし、反対意見等もでることで、注目の薄い児童扶養手当に注目が集まる結果となり、最終的には3万著以上の署名を提出し、支給額が引き上げられることとなった。

政治の窓が開くのを待ち、解決策を投げ込む

 様々な施策をおこなってきたが、男性の育休所得率を上げることはうまくいっていない。そのなかで筆者らは育休義務化を目指し、様々な活動をおこない、多くの人を巻き込むことで育休と産休の義務化を行うことができた。

 保育園落ちた日本死ねというブログがSNSを通じて拡散し大きな話題となった。政府が匿名であることで信ぴょう性が薄いとすると、多くの人から反論が挙げられた。

 筆者は保育園を増やせない原因は保育士不足であり、その理由は待遇が低いためであるため待遇を上げる必要があると政治家に解いていった。議員の中には自身の周りに働く母親がいなかったため、このような問題があることを把握していない人も多かった。国会議員に多様性が必要となるのは社会課題の解決に直結するためであることを感じさせる原因となった。

 多くの運動で十分ではないものの、保育士の給与は向上していった。何年も専門家や有識者が訴えても生み出せない波を匿名ブログが生み出した例といえる。

 政治が大きく動いたり、流れが変わる時を政策の窓が開くと表現する。本来は問題を早く解決するためにすぐに解決したいが、政治や制度は常に事後的に動くため窓がしまった状態では解決しようとすることはない。そのため政治の窓が開くのを解決策を持って待ち、開いたタイミングで解決策を提案することで次に困る人を減らすことを考えることが重要。

ごく普通の人でも政策起業家になれる

 これまでの事例はNPO法人の代表である筆者の立場だからできたのでは?と思われることも多い。しかしごく普通の人でも政策を提案することはできる。

 友人が双子ベビーカーが都バスに乗れないことに不便を感じた一般小女性が女性区議にメールをし、アンケートを行なうことで都バスのルールを変え、双子ベビーカーをたたまずに乗ることができるようになった。

 不条理を何とかしたいという気持ちがあれば誰でも政策起業家になることができる。

政策起業は問題を生み出す構造をかえることができる

 問題には常にそれを生み出す構造が存在する。問題に対処しつつ、構造を変えなければ本当の解決にはならない。構造にアプローチするのが政策起業といえる。

 4年に1回の選挙だけで民主主義に参加するのでは足りず、投票以外の方法で民主主義に参加する必要がある。多くの人が政策起業家になることで政策や制度のPDCAを高速で回せるようになり、社会を変えることができるようになる。

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