日本人の承認欲求 太田肇 3分要約

3分要約

承認欲求とはなにか

 「他人から認められたい、そして自分を価値ある存在だと認めたい」という欲求。ただ目立ちたい注目されたいというものでなく、釈迦的な動物である人間の基本的な欲求。

 その他の欲求とは異なり、独力で満たすことができず、他人の意思に依存しているのが大きな特徴。承認欲求には表と裏の二つがある。

表:優れた能力や業績、個性をたたえるもの 加点評価

裏:規律を守り、輪を乱さないもの 減点評価

 裏の承認欲求が強さと閉鎖的な組織がセットになると、組織内で承認欲求を満たそうとする気持ちが強くなり効率性が落ちることも多い。

テレワークと承認欲求から何がわかるのか

 日本が他国に比べても、テレワークによる生産性向上割合が低く、その原因が日本人に解く湯の組織や承認欲求に潜んでいる。

 原因と対策を知ることで日本の弱点を克服できる可能性がある。

なぜ、テレワークを拒否する人が多いのか

 テレワークでは承認欲求が一部しか満たせないため、対面での仕事を望も声も大きい。

 日本に特有な理由として、集団主義で仕事の分担が明確でない、上司が偉さの美せびら可視ができないなどの理由も大きい。

 日本の企業は閉鎖的でメンバーが同質的等の理由もあり、企業内で承認欲求を満たそうとする気持ちが海外よりも強い傾向にあることも要因の一つ。

日本人の弱点の克服には承認欲求とどう向き合えば良いのか

 外部から承認欲求を満たせるようになれば、企業内で承認欲求を満たそうとする意識が減って組織の効率化を図ることのできる可能性も有る。

 閉鎖的な空間では承認欲求は偉いという形で実現されたが、フラットな組織ですごいや流石という形で満たすことに切り替えられれば、高いモチベーションにつながっていく。

 自由な生き方と承認の両方を手に入れることも可能になる。

テレワークと承認欲求から日本人の働き方を理解することができる

 コロナによるテレワークは日本人の働き方の特徴を改めて、明らかにしている。また日本人の働き方には承認欲求が強く関係しており、この二つのキーワードをかけ合わせることで奇妙な現象や不可解な行動を解明でき、組織の病を取りのぞく手がかりを得ることができる。

日本がテレワークで生産性が低いのは組織や承認欲求が原因

 コロナによるテレワークの普及は、様々な影響を与えた。徐々に社会の状況も落ち着き始めたが、人々の働き方やキャリアに対する考え方がすべて元に戻るとは考えにくい。

 日本は他国に比べてもテレワークによる生産性の上がる割合が低い。原因はITの遅れや集団をチーム単位の仕事が多いためなどといわれることも多いが、証拠はなかなかえられない。実際には日本特有の組織や承認欲求が潜んでいる可能性が高い。

 日本人の承認欲求がテレワークの洗礼を受け、どんな運命をたどるかを見ていく。

テレワークでは金銭以外の報酬を得ることが難しい

 テレワークに切り替えることが難しい理由を追及すると、技術的な問題よりも社会的、心理的な要因が大きな要因であり、テレワークで満たさないものは刺激。

 テレワークをしているとお金以外の報酬を得られていないように感じる人も多く、刺激=無形の報酬といってもよい。テレワーク前は無形の報酬が仕事に付随していることの価値を低く見たり、感じていなかったが、その価値は以外にも大きいものであり、無形の報酬には承認欲求が強くかかわっている。

承認欲求と他人から認められ、自分を価値ある存在と認めたい欲求

 承認欲求はただ目立ちたい、注目されたいという欲求ではなく、もっと奥深く普遍的でなもの。生理的な欲求や安全安心の欲求と並ぶに人間の基本的な欲求で、「他人から認められたい、そして自分を価値ある存在だと認めたい」という欲求。

 社会的な動物である人間は、自分が他人からどう見られているかを知りたい気持ちが強い。そのためには他人から知らせてもらう必要があり、その姿はできるだけきれいな姿であってほしい。

 職場におけるコミュニケーションから無意識に承認欲求を満たしている。テレワークではどうしても受け取る情報や刺激の量が減ってしまい、承認欲求を満たす機会が少なくなり、ストレスとなってしまう。

 多くの欲求は独力で満たすことができるが、承認欲求を満たせるかは他人の意思に依存していることが大きな特徴。

日本は社会的な承認を重視するため自己効力感が低い

 日本人は自己効力感が低い人が多い。アメリカなどでは能力の高さを示す外的な成功で自己効力感が得られるが、日本では社会的な承認が得られて初めて自己効力感を得ることができる。自分の力を確かめる基準が外にあることが多いことが、自己効力感の低さの原因。

 自己効力感は目標達成への原動力になるため、目標達成→承認→自己効力感→新たな目標という好循環が必要になる。

テレワークで得られる承認は対面に比べ少ない

 テレワークで承認機会が減れば、好循環がなくなってしまう。

 テレワークでは見せたくない部分を見せなくてよい反面、承認されるのが見せているごく一部になってしまう。人間には自分の良いところを認めてもらいたいという欲望がある反面、ありのままを認めてほしい部分もあり、テレワークではありのままを認めてもらう機会は減ってしまう。

上司がテレワークを拒むのも、対面のほうが承認欲求を得られるため

 日本は欧米に比べ、個人の職務が明記されておらず、集団主義で仕事の分担が明確でないため、仕事の管理がしにくいことも上司がテレワークがうまくいかないと考える大きな要因。

 しかし、上司の承認欲求が満たされにくくなることも大きな要因。大部屋で一緒に仕事をしたり、食事に行ったりすることで上司側の承認欲求が満たされていたが、テレワークでは満たされにくくなり、尊敬という承認欲求が満たされなくなってしまっている。

日本は会社で承認欲求を満たしたい気持ちが強い

 組織には家族やムラなど自然発生的で情によって結びつく、基礎集団と特定の目的を達成するための目的集団の二つがある。会社は典型的な目的集団であるが、日本では基礎集団としての特徴を他国よりも強く併せ持っている。

 二つの特徴を併せ持つ集団は共同体組織と呼び、3つの特徴がある。

1.閉鎖的

2.メンバーが同質的

3.個人が集団に溶け込み、仕事内容や責任が明確でない

 共同体はその維持と安定を優先し、その関係の中で承認欲求を満たそうとしてしむため、欧米よりも会社で承認欲求を満たしたいと思う気持ちや一度得た承認を失いたくない気持ちが強くなる。

 サービス残業、有給消化の低さ、役職への執着、稟議やハンコ文化などの権力を見せつける無駄な分化の連鎖など様々な日本に特有の問題が組織内での承認欲求が原因となっている。

 承認欲求には何度も会うなどの物理的な近接性を持つと相手を承認したくなる、相手に承認されると承認しようとおもう返報性をもつことも問題が複雑になる。

 上司が部下を評価する際にも身近にいる部下を高く評価する傾向にある。このこともテレワークを妨げる要因の一つになっている。

祖式がフラット化すると偉さで承認欲求を満たすことが難しくなる

 テレワークやITの普及で管理職の役割は部下の管理からプロジェクトリーダーに近いものへと変化している。また、価値の源泉がハードからソフトになることで規模の有利差が小さくなるため、組織や社会もフラット化していく

 フラット化は偉さを見せびらかす機会を減らし、出世を目指す人の減少にもつながっている。

 一方で、Z世代といわれる若い世代は承認欲求を表に出さず、抑制的に社会生活を行っている。彼らも承認欲求を持っているが共同体内で抜け出すと周囲から叩かれるため、抑圧的になる。

承認欲求には表裏の種類の欲求が存在する

 承認欲求は表と裏に分類される。

表:優れた能力や業績、個性をたたえるもの 加点評価

裏:規律を守り、輪を乱さないもの 減点評価

 Z世代のような若い世代でもは、会社の役職のようなわかりやすい形で見せびらかす特権がないため、周囲を気にしてしまう。それでも表の承認欲求を満たしたい欲求はあるため、それを満たすためにチラ見せを意識することで周囲から叩かれずに欲求を満たそうとしている。

外部から承認欲求を得ることができれば、企業の閉鎖性を改善できる

 テレワークと日本人の持つ承認欲求の特徴の相性が悪いことは事実だが、共同体の中で感じている承認欲求を失ってはいけないという呪縛や偉さの見せびらかしから解放されるチャンスでもある。

 テレワークと出社を組み合わせであるハイブリッド型の効率が良いというデータも多く、この形でテレワークが定着する可能性が高い。ハイブリッド型の定着は以下のような利点がある。

1.裁量権の拡大と外部との関わりが持ちやすくなる

2.意欲の向上

3.成果重視への移行

4.労働流動性の向上

 外部からも承認欲求が得られるようになれば、会社で無理に承認を得ようとした流れが変わる。会社が閉鎖的であったために起こっていた問題を解決できる可能性も秘めている。

外とのつながりを強くすることで自由と承認の両立が可能

 日本の働きかたに問題は多いが、単に共同体組織から脱却し、日本人特有の承認欲求を無視し、表面的に欧米を目指せばよいわけでもない。

 あくまで外の世界とつながることが重要であって、共同体内の濃い人間関係をすべて捨てるようなことはすべきではない。

 ハードからソフトへの価値移転が起こっているが、ソフトでは情報の質が極めて重要になるため、濃い関係は大きな武器になる。濃い人間を築く方法や築いた関係を閉鎖的な会社という空間ではなく、外との世界へ活かすことが重要になる。

 閉鎖的な空間での見せびらかしは地位による偉いで実現されてきた。フラットで開かれたコミュニティですごいや流石といわれるような形で承認欲求を満たすことができれば、高いモチベーションにつながり、経済の効率化にもつながる。

 自由な生き方と承認の両立は困難とされてきたが、テレワークをきっかけに外の世界とつながることで両方を手に入れる道が開かれてきたといえる。

 

 

 

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