日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか 永濱利廣 3分要約

3分要約

日本病とは何か

低所得、低物価、低金利、低成長の4低が普通になり、30年間経済が成長していない。4低が普通になってしまった状態を日本病と名づけている。

日本と比べ世界はどのような状況か

世界では右肩がりに賃金が上昇している。多くの国で稼いだお金が消費に回り、賃金が上昇する好循環(=良いインフレ)が起き、成長が続いている。

日本のようになることを恐れた海外では日本の状況が研究テーマとなり、日本のようにならないようにしたことでリーマンショックから素早く回復することができた。 

日本病になった原因は何か

 デフレが長期にわたって続いていることが経済停滞の大きな要因。

 バブル崩壊時に借金返済を優先し、消費が低迷した際に金融政策と財政出動などを十分に行わなかったため、長期のデフレとなり経済が停滞し続けている。

近年では黒田バズーカで金融政策は行われているが、財政出動や減税などの政策が不十分であったためデフレの脱却ができていない。

どうすれば日本病を克服できるのか

今日よりも明日が良くなると感じれば、消費に使う額が増え、インフレに向かう。

・財政出動や減税でお金を使う機会を増やす

・金融政策で市場にお金を増やす

・政府債務や財務が危険などの誤った認識を変える

ことが重要。デフレを脱却し良いインフレの状態になることがまず最初にやるべきこと。

日本は4低の対策をとらなければ状況をはさらに悪くなる

 日本経済はバブル崩壊以降30年ほとんど成長していない。日本は長いデフレの中にあり、「低所得、低物価、低金利、低成長」の4低が普通になりつつある。

 このまま対策をとらなければ、日本の状況はさらに悪くなっていく。

日本の絶望的に長期化した4低を日本病と名付け、その病を色々な角度から分析し、原因と脱却するための道筋を考察していく。

日本の賃金は低迷している

 ビックマック指数(世界33位)などからもわかるように日本の購買力は大きく低下している。賃金も韓国よりも安く、G7諸国でもイタリアに次いで安い。

 世界の国は右肩上がりに賃金が伸びているが、日本だけが長期的に停滞している。

 経済が良くなるとは、稼いだお金がものやサービスの消費に使われお金の循環が良くなること。バブル崩壊で、不良債権処理のために稼いだお金を借金返済に回し、消費が低迷し、モノが売れなくなり賃金が上がらず、さらに消費を控えるという流れでデフレに陥ってしまった。

 日本病が海外の国々から日本化として恐れられ、研究テーマにもなっている。リーマンショックなどの不景気時に日本の失敗に学び、デフレを放置せず正しく対処したため、迅速に経済政策を行い回復することができている。

デフレから脱却できないことが低迷の原因

 国ができる経済政策は、中央銀行の行う金融政策と政府が担う財政政策の二つ。

 リーマンショック時には金融政策として金利を下げるだけでなく、中央銀行が市中の金融商品を買って市場に供給するお金の量を増やす量的緩和も行われた。

 金融政策でお金を供給し、公共事業や減税などの財政政策政府主導でお金の使い道を作ることで欧米諸国はデフレを回避してきた。

 日本はバブル崩壊後の利下げをすぐに行わず、行ってからも段階的であったため経済が停滞した。金融政策は黒田バズーカによる量的緩和話されたが、消費税率引き上げなどもあり、本格的なデフレ脱出には結びついていない。

 今日よりも明日がよくなると感じないと貯蓄よりも買いたいものを優先できるがデフレマインドが根付いた日本では、この心理もデフレ脱却の大きな妨げになっている。

一度の失敗で全てを失ってしまうような制度や社会を変えることも重要

 購買力平価ベースの賃金では日本はアメリカの半分で、韓国よりも少ない。

 賃金が上がらない原因は以下のようなものがある。

・労働の流動性が低く、給料が安くてもやめない、長期的に働く方が有利なため人件費の割合が小さい

・年功序列、終身雇用など独自の雇用形態による新陳代謝の悪さ

・一度失業すると、もとに戻ることができない。

 失敗しても復活できるようなトランポリン型の社会構成となるように法制度や社会改革、再教育などが必要。

現在の物価上昇はデフレ脱却ではない

 2000~2020年間、OECD諸国の中でデフレであったのは日本だけ。一般に先進国のインフレ率は2%程度が経済の安定にとって望ましく、緩やかに物価が上がることでお金が回るようになり企業も家庭も国も豊かになる。

 日本でも2013年ごろから緩やかに消費者物価指数が上昇しており、デフレを脱却したとの声もあるが、その内容は悪い物価上昇。

 燃料費や食料品など輸入品の価格が上がり、海外から安いものが入ってくることで国内の製品やサービスが安くなっている。日本以外でもエネルギー価格に影響をうけてはいるが、賃金に直結するサービスの価格が上がっているため賃金が上がる。一方で日本は賃金に直結するサービスの価格が下がっておりデフレを脱却したとはいいがたい

良いインフレと悪いインフレがあり、現在の物価上昇は悪いインフレ

 この状況を打破するため、日銀も2013年から量的、質的金融緩和を行ってきた。一定の効果は見られたが、インフレ2%という目標は達成できなかった。

 これは財政出動で政府がお金を使い景気を引っ張り上げる動きが足りなかったため。特に2014年の消費税引き上げには財政出動とは逆の財政引き締めであり、影響がとても大きかった。

 インフレにも良いインフレと悪いインフレがあり、

良いインフレ:景気が良い→企業が物価を上げる→収益UP→従業員の賃金UP→購買力上昇という好循環

悪いインフレ:生産コストの高騰による物価上昇。収益UPにつながらず、賃金はUPしないため

 需要>供給が上回ることで物価上昇をしているかが良いインフレと悪いインフレの大きな違い。

良いデフレは存在しないため、デフレの放置は危険

 インフレに良いものと悪いものがあるが、良いデフレは存在しない。アメリカが波はあっても成長し続けてるにのは不景気時に財政と金融政策でデフレを放置しなかっため。

 デフレ下では企業も家計もいざという時のために手元にお金を残しておくことを優先する。特に企業が投資等を控え貯蓄超過の状態が続いているのは、日本だけ。

すでに金融政策で効果が少なく、財政出動や減税を渋っているが、投資減税などお金を使った方が特になる状況を作る必要がある。

日本の財政状況は危機的状況でなく、財政出動しても問題ない

金利が下がれば企業がお金を借り投資を行い安くしたり、利子に払うお金を減らす効果があるが、日本では企業がお金を貯め込む主体になっているため、金利低下の効果が小さい。

日本の状況は金利をもっと下げたいが物理的に下げられない流動性の罠という状況になっている。このような状況では財政出動と減税だが、日本ではどちらもあまり積極的に行われていない。

日本では政府の債務が大きくなることを避けようとする人も多いが、

・政府の債務=民間の資産の増加となるため経済が拡大すれば、政府の債務も拡大する

・日本の国債は海外保有が少ない

 大幅なインフレには注意が必要だが、2%の指標に達していないうちは財政出動によって政府が効果的にお金を使うわないと日本経済は良くならない。

長期デフレの根源は経済政策の失敗 財政出動や減税で回復できる

デフレマインドと貯蓄過剰は政府とマスメディアの間違った喧伝にも原因がある。政府債務が危機的状況、財政が危ないなどの報道や発表は間違っている。

スクリフレーションは締め付けとインフレを合わせた造語で、中所得者を締め付けるインフレのこと。生活必需品の値段が上がっても高所得者や経済成長している新興国ではなんとかなるが、先進国の中所得者は仕事が新興国に移り賃金が上がらないが、生活に必要なお金は増えていき苦しくなる。

グローバル化の恩恵を受けやすい高所得者に富が集まりやすい状況が労働者の反発を招き、トランプ政権の誕生やイギリスのEU離脱に繋がっている。

 一方で日本は経済成長していないため、高所得者も中所得者も全体的に貧しくなっている。政府の債務残高と経済規模の拡大は比例しているため、まずは財政政策による景気回復が必要。

増税は筋トレのようなもので、健康な体で行わなけえばマイナスになる。デフレ時の消費増税は経済を停滞させる大きな要因になってきた。

日本の長期デフレの諸悪の根源は日本人の努力不測ではなく、政府や日銀の経済政策の失敗。それによってもたらされた過度の将来不安を無くしていけば日本が復活して行くチャンスもある。

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