タンパク質源としてコオロギ食に期待が集まっている
コロナウイルスの流行で世界中でワクチンの争奪が問題になっている。世界の人口は増え続けており、もし食料不足が問題化した場合はより深刻となる。
特にタンパク質源の不足が予想されており、日本でもこの課題を解決していく必要がある。
コオロギは陸のエビとも呼ばれ、この課題の解決法となる可能性がある。昆虫食の中でも、コオロギには食材としての多く利点があり、ミツバチ、蚕につぐ第3の家畜昆虫にするプロジェクトが進んでいる。
肉食は地球温暖化の原因のひとつ
家畜生産は人間の誘発する温室効果ガスの15%を排出していると言われており、温暖化の要因の一つになっている。
食肉にはそれ以外にも家畜の数の増加を支えることができない、赤身肉や加工肉の接種による健康被害、水やエサとなる穀類などの資源を大量に使用する、動物福祉などの問題がある。
それに対応するために、大豆による代替肉も開発され市場でも注目されている。昆虫食も食肉の課題を解決する方法の一つで、日本ではあまりメジャーではないが、多くの国で昆虫を常食している。あまり昆虫食の文化の無いヨーロッパでも多くの昆虫食のスタートアップが設立され、資金調達に成功しており、市場の拡大に期待がかかっている。
昆虫食は優れたタンパク質源となり肉食の代替が期待されている
昆虫食が優れている点には以下のようなものがある
1.二酸化炭素の排出が家畜を飼育する際の100倍少ない
2.動物性食材の中で最もエサを少なく飼育できる。
3.肉と同等のタンパク質が含まれている
4.タンパク質以外にも繊維、脂質、ビタミンが含まれている。
昆虫食は持続可能な社会における肉食に代わるタンパク質として期待されている。
コオロギは昆虫のなかでも食糧難の解決に適している
コオロギは雑食であり、人の残した食料で育てることができる点が他の昆虫との違いとなる。タンパク質以外の栄養素も豊富で、脂肪、カルシウム、マグネシウム、鉄やビタミン等も含んでいる。
腸内細菌の働きを助けるという研究結果もある。
唯一の問題は昆虫に含有されるタンパク質やキチンのアレルギーを持つ場合があること。
コオロギセンベイは想像以上に市場で受け入れられた
2020年に無印良品から発売されたコオロギセンベイはエビに近い風味で人気となり、品切れになるほど予想以上の人気となった。
コオロギの研究は以前から徳島大学で行われており、筆者もコオロギを用いて、発生の研究を行っていた。コオロギの遺伝子情報やその操作法を開発し、コオロギ研究ではトップクラスであったが、食べることは考えていなかった。
その後、昆虫食に注目を浴びるとコオロギにも注目が集まった。クラウドファンディングを用いて
食用コオロギの研究に必要な資金をあつめ、研究を実施した。その結果がコオロギ・パウダーを用いたセンベイのヒットにつながった。
コオロギ食の問題も徐々に改善されている
コオロギは飼育が容易で成長が早く、雑食さらには通年で繁殖、視育が可能で味にくせがないと食用
にするに優れた点が多くある。
一方で、コストが高い、食料残渣のみでの飼育法、昆虫食への抵抗感による認知度の低さなどがある
コストについては高密度での飼育、自動化による人件費の削減が進められている。
食物残渣についてはおからや小麦粉の生成の際にでるフスマ、味噌の残渣での生育が可能か研究が進んでいる。
心理的なハードルについては、子供の内から昆虫食に親しむように子供用の食品への利用や栄養の豊富さを浸透させていくことが重要となる。
コオロギは8回脱皮するが、脱皮した殻を機能性材料としたり、糞を肥料として利用するなど、優れた循環型の産業構造の構築が検討されている。
センベイ以外にもクッキーやクランチ、ラーメン、発酵させることでコオロギ醤油とするなど幅広い食材への応用が行われている。
コオロギ食は循環型の食糧生産システム開発に採用されている
現在、政府は2050までに実現すれば大きな社会課題を設定している。ムーンショットとはアポロ計画での無謀とも思える目標だが実現すれば大きなインパクトとイノベーションを生み出すような目標のこと。
ムーンショットの一つに持続可能な食料供給産業の創出の項目があり、コオロギとミズアブを利用した循環型の食糧生産システムの開発が採用されている。
フィンランドではコオロギ食が進んでいる。
環境意識の高さもあり、フィンランドではコオロギフードをはじめとした昆虫食が浸透している。多くの企業がコオロギフードを手掛けており、2019年ヨーロッパで900万人が昆虫や昆虫を原料とした食品を消費したが、2030年には3億9000万人になるとの予測もある。
アメリカでは2023年印昆虫食の市場が580億円に達するとの予測がある。アメリカでは昆虫を食べることにためらいを持つ人も多いが、プロテインバーに利用するなど栄養素を押し出した高級製品を展開している会社もある。
コオロギはワクチンの開発にも有用
現在、一般的なワクチンは注射で行われている。パンデミック下では医療従事者の数が足りず、経口ワクチンの開発が望まれている。またワクチンの種類も増加する傾向にあり、感染症だけでなく、がんや自己免疫疾患などにも利用される可能性が高い。
ワクチンの作製には抗原になるタンパク質の産生が必須となり遺伝子編集技術が高い。
クリスパーによって遺伝子編集技術は高い精度と容易さで大きな注目を浴びている。コオロギの遺伝子編集の効率性もあがっており、抗原をコオロギの体内で作り、そのコオロギを食べることで免疫を獲得するといった方法も検討されている。
コオロギの活用は人口増大による食糧問題や健康問題を解決できる可能性を秘めている。
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