液体 この素晴らしく、不思議で、危ないもの マーク・ミーオドヴニク インターシフト  要約

概要

 液体は固体と違い、その形が容易に変化する。液体の水が命を支える性質を持っている半面力が加わったときに圧縮されず流動するという特徴は津波の原因となったり、爆発を起こす、毒として働くなど破壊的な一面も持っている。

 本書では飛行機での旅の様々な局面とそれを実現している液体の性質を取り上げている。

液体が日常の様々な場面で利用されていることをわかりやすくしることができる。

ケロシン(燃料)

 人類は夜に明かりを取るために多くの油をランプで利用してきた。ケロシンは原油に含まれる炭化水素で炭素原子が6~16個の液体で、明るく、粘性も低かったことからランプの油として多く利用されるようになった。

 ケロシンは大きなエネルギーを持つが、自然には爆発することがないため、飛行機の燃料としても利用されている。

アルコール(陶酔)

 アルコールは様々な形で世界中で飲まれるお酒の主成分。神経系の働きを鈍らせる毒として作用するが、ほろ酔いであればよい気分になり緊張を緩め、社会の潤滑油となる

 飲料のアルコールはエタノールが主成分であり、メタノールは炭素が一つ少ないだけだが極めて毒性が高い。自家製のお酒で死亡例がでるのはメタノールの除去が充分でないことが原因で起こることも多い。

海水(深遠)

 水に物を浮かべ、その物の体積と同じ量の水より軽ければ水に浮き、重ければ沈む。浮くことで泳ぎを楽しむことができ、浮力を調整すればダイビングを楽しむこともできる。

 一方で、水は熱容量が大きく液体は気体よりも密度が高いため、冷たい水は体温を奪われやすく、凍死の危険性も高い。地震による津波も多くの犠牲者を出している。

接着剤(粘着)

 液体は粘つく性質があり、古代から多くの工夫で粘つきを利用した接着剤が研究されてきた。物同士を接着することは古代から現代まで非常に重要なテクノロジーになっている。

 樹脂は粘つきで虫を捕まえるために木が生み出した防御手段であり、古代から接着剤として利用されてきた。


 動物の皮に含まれるコラーゲンを煮詰めるとにかわとなり、接着剤として利用出来ることがわかると、にかわが樹脂にとって代わるようになる。
 現代では、ゴムやエポキシを利用など新たな合成物が接着剤として利用されている。

液晶(幻想)

 液晶は結晶と液体の間のような性質をもつ物質。結晶は各分子がそろって同じ向きになって流動性がない、液体は各分子はそろっておらず、回転、振動、移動を繰り返しているが液晶は向きはそろっているが、動くことは出来る。

 液晶は電場を抱えると向きを変えることができ、向きを変えることで光の偏光を変えることができる。これが様々なデバイスに使われるデジタル画面に使用される液晶の原理となる。

体液(感情にも訴えかける)

 唾液は物を食べやすくする、消化を助けたり、口内の中性に保ち虫歯を防ぐなど様々な役割がある。

 その一方で、どろっとした粘液に対して人間は強い不快感を覚える。体液が外にある状態は鼻水や軟便など不調を示すものが多いためかもしれない。

 涙は体液ではあるが、目の刺激物を洗う以外にも、情緒性が絡む涙もある。男性が女性の涙を見るとテストステロンの濃度が下がり性的な興奮を妨げる効果がある。

お茶、コーヒー(飲料)

 お茶やコーヒーは世界中で飲まれる飲料。紅茶や緑茶は同じ葉で加工方法が違うだけである。紅茶をおいしくいれるには様々な工程と手法があり、科学の発展した現代でも難しい。
 一方、エスプレッソマシーンの発展で簡単においしいコーヒーを味わえるようになった。

液体せっけん(洗浄)

 石鹸の成分は界面活性剤と呼ばれ、油と水の両方になじむため、水だけでは落ちないよごれも落とすことができる。
 始めは固形石鹸だったが、多くの界面活性剤が開発されたことなどから徐々に液体石鹸も増えはじめ、シャンプーやボディーソープなど種類も増え、現在では1000億ドル市場の製品となった。

冷媒(液体→気体)

 初期の冷蔵庫は塩化メチル、二酸化硫黄など有毒物が使用されていた。液体が気体に変わる際に周囲のエネルギーを吸収することで冷媒として働く。
 これらの物質は沸点が低いため、冷媒として利用されていた。気体となった冷媒は圧縮されて液体にも戻すことで再度冷蔵庫を冷やしている。


 しかし、ガスになった有害物質が漏れ出すことがあり、死亡事故も起きていた。その後、フロンが冷媒として用いられたが、オゾン層の破壊の原因となるため、現在では使用されておらず、ブタンが使用されることが多い。

インク(液体→固体)

 インクは液体の状態で紙などの上に乗った後、固体になるため紙の上に物を書くことができる。
 インク自体は古くから存在するが、常に不便なものであった。万年筆の出現は大きな進歩だったがそれでも欠点はあった。

 現代のボールペンはにじみがない、力を加えたときだけインクが出るなど、万年筆の欠点を克服することを可能にしている。

雲、溶融(自然)

 雲は水蒸気が上昇し膨張して冷えて、核となる粒子(塵や煙など)にくっつき凝固してできたもので液体からできているものになる。

 地球の中にあるマグマやマントルも液体の一種。これらの流動性によって、地殻変動や山の形成、地震が発生する。

持続的な水の利用が求められている

 道路に利用されるアスファルトも非常に粘性が高いが液体の一種。
 地球全体で水の利用料が大幅に増えており、水の消費量を少なくしたり、効率化することが求められている。

 多種多様な液体を理解しているからこそ、快適な生活を送ることができる。今後も多くの分野で液体の利用は進み、新しい液体を用いた技術の登場が起きていく。

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