経済学入門 マクロ編 ティモシー・テイラー かんき出版 まとめ1 

概要

マクロ経済学は経済全体を俯瞰し、4つの目標を財政、金融政策で実現するためのもの

 マクロ経済学は経済全体を一つの生き物と捉える俯瞰的な見方のこと。財、労働、資本それぞれの市場に注目するミクロ経済学では語れない経済成長や国際収支を説明する。

 主には財政政策と金融政策を用いて、経済成長、失業率、インフレの低下、持続可能な国際収支の4つの目標を達成することがマクロ経済学の意義となる。前半ではそれぞれの目標となる項目と大まかな調整法について説明がされている。

経済成長:生産性の向上によってもたらされる。

失業率:消費を増やすことで企業の売り上げを増やし、失業率を低下させる。

インフレの低下:需要を抑えることで貨幣価値を上げ、インフレを低下させる。

国際収支:「国民貯蓄」+「国外からの資金流入」=「民間の設備投資」+「政府の借り入れ」

が成り立つ。左辺が供給、右辺が需要となるため、様々な政策で各項目のバランスをとることで国際収支を持続可能にする。

 

マクロ経済

政策の目標と達成するための道具 財政、金融政策が4つの目標にどう影響するかを知ることが重要

マクロ経済政策の目標は次の4つになる。
1.経済成長
2.失業率の低下
3.インフレ率の低下
4.持続可能な国際収支

これらを達成するために以下の二つの道具を用いる。

1.財政政策

2.金融政策

財政政策と金融政策が4つの目標にどのように影響するか知ることが重要となる。

GDP 経済の状況を知る優れた道具

 GDPは1年間に生産された最終生産物の総額。国全体でどれだけのものが生産され、売られたか、買われたかを示す。GDPは売買の対象にならないものは対象でないため、実態を表さないこともあるが、経済の状況を知るための非常に優れた道具になる。

GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入

経済成長 生産性の向上が長期的な経済成長を可能にする

 1年の経済成長がわずかでも、長期間で見ると複利の効果で大きな成長につながる。3%の成長を続けると、40年で3倍以上の経済規模になる。

 長期的な経済成長は生産性の向上=時間当たり or 労働者の一人当たりの生産量が増加することで実現する。

生産性の向上 

生産性の向上は物的、人的資本の増加と技術の進歩で起きる

 

 生産性が向上する要因は以下の3つ
1.物的資本の増加(仕事で使う設備が増える)
2.人的資本の増加(働き手のレベルアップ)
3.技術の進歩(より効率的に生産できるようになる)

 アメリカのような先進国では、経済成長の1/4が人的資本の増加、1/4が物的資本の増加、1/2が技術に進歩でもたらされている。低所得国では教育などの人的資本の増加が占める割合が大きい。

失業率 消費が増えれば企業の売り上げが増え、ヒトを雇うようになる

 

 失業とは労働の供給量が需要量を上回っている状態。企業は景気が悪くなっても、給料を下げるのではなく、新しい人の採用をやめたり、解雇することを選ぶことが多い。

 失業は自然失業と景気の変動による失業に分けられる。自然失業は社会のルールなど人為的な要素を含むものの、景気に影響されない失業。自然失業を下げるには法律やルールを変える必要がある。

 景気変動による失業率を減らすためには消費やサービスに対する需要を促進して、景気の悪化を食い止める必要がある。消費を増やすことで売り上げが上がれば、企業がヒトを雇うようになる。

 財政政策で減税による需要の促進したり政府がお金を使うこと、金融政策で中央銀行が金利を下げることで企業の生産活動を盛んにし、雇用を増やそうとするが、大きな不況のダメージを消し去ることはできない。

インフレ 物価があがること急速に進むと生産性の向上が進まなくなる

 インフレとは物価が全体的に上がること。様々な商品の価格から消費者物価指数等で算出される。

人々がお金をたくさん持っていて、商品が不足しているときに起こる。
 インフレが急速に進むと、生産性の向上が見込めなくなり、市場が上手く機能しなくなるため、需要を抑える対策でインフレを抑制する。

国際収支 お金の流れが国内外どちらに向かっているかが重要

 

 国際収支を把握するうえで重要になるのが経常収支。経常収支は貿易収支、サービス収支、所得収支(外国とのお金のやり取り)、経常移転収支(海外への送金、対外援助など)の合計で求められる。

 経常収支が赤字であると国内に合ったお金は海外に流れていくが。流れたお金は金融投資という形で国内に帰ってくる。

 経常収支はお金の流れの問題でお金が国内外どちらに向かって流れているかが重要。

金融資本における需要量と供給量は一致する。
需要は投資需要と政府による借り入れ、供給は貯蓄と国外からの資本の流入となる。

「国民貯蓄」+「国外からの資金流入」=「民間の設備投資」+「政府の借り入れ」が成り立つ。

 経常赤字は国外からの資本流入が増えることとなるので、民間の設備投資か政府の借り入れが増えることになる、経常収支は単に貿易の問題ではなく、国民貯蓄率や企業や政府のニーズのバランスで成り立つもの。
 外国の貿易政策が経常赤字の原因になるわけではなく、保護貿易で改善できるわけではない。

もし需要をまかなう国民貯蓄がなければ、海外からの投資で賄うことになり、貿易収支は赤字になる。

総需要と総供給 需要が供給を生むかその逆かは時間軸による

 総供給とは供給される全ての製品を合わせたもの 潜在GDOまでGDPが大きくなった時に総供給は最大になる。潜在GDPとは全ての人、設備が最大限使用された際にどれだけのものが生み出されるかを示す。潜在GDPでは失業率は自然失業率と等しくなる。

 需要が供給を生むか、供給が需要を生むのかは時間軸によって異なる。
需要が供給を生む考えは短期的な、供給が需要を生む考えは長期的な政策を考える際に有効とされている。需要が供給を生む考えはケインズ派、供給が需要を生む考えが新古典派と呼ばれる。

理想的な状態は生産力が成長し、総供給が増え、生み出された供給が総需要を即座に拡大すること。

インフレ率と失業率 失業率が低下するとインフレしやすい

 マクロ経済政策の目標の内、「失業率の低下」と「インフレ率の低下」は短期的に見るとトレードオフの関係にある。

 失業率が低く、潜在GDPに近い状態では賃金や物価がインフレしやすい傾向になる。一方で長期的には、インフレ率に関係なく、失業率は自然失業率まで戻ってくる。

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