腸内細菌の逆襲 江田証 幻冬舎新書 まとめ

本の概要

 最近の研究から腸内細菌の過剰繁殖や本来と違う場所で繁殖した場合に病気につながることがわかっている。

 様々な要因で傷つけられた腸内細菌が原因となり小腸内細菌増殖症(SIBO)を招いている。

 腸内細菌の状態は脳にも影響を与える。ある種の自閉症は腸内細菌の乱れが関係しているともいわれている。

 小腸は様々な栄養の吸収を行うが、その内部はもともと細菌が定着しにくい。しかしストレス、食生活の乱れなどで本来以上に腸内細菌が増殖してしまうことがある。

 増殖した細菌はガスの発生によるおなかの張りとなり、不快感の原因となる。

 発生したガスは小腸を膨張させ、粘膜をダダ漏れにし、本来通さない毒素を体内に通してしまう。

 様々な食物が腸のバリア機能を低下させるが、特に高脂肪、低繊維の食事が腸に良くない。細菌が好むこれらの食事を控えることが腸内細菌の過剰繁殖を防ぐポイント。 特定の細菌が増えないためにはバランスの取れた食事も有効。

 腸内細菌はそのバランスも重要なため善玉菌でも過剰な摂取はバランスを崩す可能性がある。

この本で学べること

  •  腸内細菌の働きとなぜ腸内細菌のバランスが崩れると病気になるのか
  •  SIBO(小腸内細菌増殖症)とはなにか、他のどんな病気を誘発するのか
  •  SIBOの原因と最近のバランスを取り戻す方法

まえがき 腸内細菌が暴れ始めた

 腸内細菌は我々の味方と考えれてきた。しかし、最近の研究から、腸内細菌は繁殖する場所を間違えたり、過剰に増殖した際に健康を脅かし敵となることがわかってきた。

 ストレス、食生活の乱れ、環境汚染、抗生物質の乱用などで傷つけられた腸内細菌が小腸内細菌増殖症(SIBO)という病気で逆襲している。

 第1章 腸内細菌に操られるヒト

 腸内細菌の歴史は42億年前にまでさかのぼる。当時の地球はほとんど酸素がなく、細菌は無酸素状態で生存していた。

 その後、地球に酸素が発生すると、酸素を嫌う最近は酸素の無い環境へ移動。大腸も酸素の無い環境の一つで腸内細菌の住みかとなった。

 腸をはじめする消化器はもっとも古い器官で最も進化している。脳よりも古く、脳の制御がなくても単独で機能し続ける。

 また、腸内細菌の状況も脳に影響を与える。ある種の自閉症には腸内細菌の乱れが関係している。

 小腸はもともと蠕動運動で激しく動いているため、細菌が定着しにくく、増えすぎないようになっている。ストレスは蠕動運動を妨げ、腸内の細菌を過剰に増殖させてしまう。

 正常な腸内細菌のバランスとは多種の腸内細菌がバランスを保って存在すること。腸内細菌は我々の食べた残りかすを食べるため、特定の最近のエサを増やさないため、多くの種類の食べ物を食べることが重要となる。

 抗生物質によって腸内細菌が乱れるのも特定の細菌を排除し、バランスが崩れるため。

小腸内細菌増殖症(SIBO)はおなかの張、ガス、下痢、便秘などの症状があるものの内視鏡やCT検査、エコーなどの検査で目に見える異常がない。

 SIBOは正常時1万程度の腸内細菌が10万以上に増殖している。正常に比べ大幅に増えた細菌は腸内で大量のガスを発生させるため、そのガスを調べることで原因を突き止めることができるようになった。

第2章 腸のガスから万病が始まる

 過敏成腸症候群は腹痛、腹部不快感、お腹の張り、排便習慣の変化といった不快な症状に苦しめられている病気。ほぼ10人に1人が苦しんでいる。

 過敏性腸症候群は慢性的な疲労感、集中力低下など様々な症状で苦しんでいる。その患者の多くはSIBOを治療すると症状が改善している。

 他にも繊維筋痛症や間質膀胱炎などのように、一見、腸と関係なさそうな症状が、腸内細菌の暴走によるものである可能性も指摘されている。

第3章 医者もわかってくれないお腹のトラブル

 過敏性腸症候群の原因はこれまではっきりとしていなかったため、ストレスが原因と診断されやすい。

 過敏性腸症候群の84%もの人がSIBOを合併しており、小腸の細菌が正常の人よりも過剰に増えていた。

 過剰な細菌が発生させるガスがお腹の張りの原因になっている。小腸内で発生するガスの違いで症状が異なる。水素ガスは下痢、メタンガスは便秘など。過敏性腸症候群の症状が様々であるのは細菌によって発生させるガスが異なるため。

 第4章 小腸を襲うSIBOという難病

 胃カメラや大腸カメラでも小腸は観察できず、小腸の粘膜はSIBOの患者であっても大きな変化はないと思われていた。

 しかし、内視鏡の発展で観察を行うとSIBO患者の小腸が炎症を起こしていることが明らかになった。

 小腸は胆汁や膵液を用いて食物の消化分解を行う器官。ほとんどの栄養分が小腸で吸収される。全身の免疫細胞の7割が存在するなど免疫臓器でもある。

 小腸はもともと大腸に比べ、細菌が少ない。SIBOの患者の小腸は細菌の数は増え、種類が少なくなっている。

 またガスの発生により、小腸が膨らんだり、縮んだりるすと。小腸の粘膜がダダ漏れになり、本来通してはいけない毒素や栄養分を通してしまう。=リーキーガット

 細菌の異常発生は胃酸などで分解する、蠕動運動で大腸に押し流すなどの方法で抑えられている。

第5章 長年苦しんだ人を救う最新治療

 腸は2層の粘液層によってバリアを貼り、腸内への最近の侵入を防いでいる。

 西洋食のような高脂肪、低繊維の食事は粘液層を薄くしやすい。

 このような腸のバリア機能を低下させるのは

  • 果糖(フルクトース)
  • アルコール
  • 痛み止め
  • 歯周病菌
  • ストレス
  • 激しい運動(ウォーキングはOKだが、走ってはいけない
  • 食中毒

 など様々。

 善玉菌だからとビフィズス菌や乳酸菌を過剰に摂取するとバランスが崩れる可能性も有る。特定の菌を加えても腸内の他の最近の相互作用を相殺できるわけではない。

過剰の細菌増加を抑える方法としては抗生物質の投与が有効。

ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸などの必要なエネルギーを含むエレンタールはあらかじめタンパク質、脂肪、炭水化物を消化しており、消火管にやさしい。

第6章 最良最強の食事療法「低FODMAP食」

 食事療法で重要なことは細菌が好む食べ物を避けること。小腸で消化、吸収され難い糖を排除すれば細菌のエサがなくなる。

 小腸で吸収されず、細菌のエサになりやすい糖質をFODMAPと呼ぶ。       オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールなどの発酵性の糖質の総称。

 これまで過敏性腸症候群の食事療法は食物繊維を多くとり、食事の回数を増やすとされてきたが、過剰な食物繊維は細菌のエサとなる、食事の回数が多ければ、空腹時に起こる蠕動が起こらなくなるなどの理由で否定されている。

 炎症を起こしたり、暴走している免疫細胞を大人しくすることで免疫力を高める細胞Treg細胞はリキーガットの改善にも効果がある。

 Treg細胞は腸内細菌の刺激によって生まれる。17種類の細菌がTreg細胞の産出に関わっているが、全ての細胞がないと産出されないため特定の細胞を摂取するのはあまり意味がない。

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