3分要約
GAFAの問題点とは何か
Googleによる検索の独占でも見られるように、巨大化し影響力が大きくなり過ぎすることでプライバシー、消費者保護、競争、民主主義のあり方まで多岐に渡る。また法律のグレー状態にビジネスに対して、海外企業に強く言えない日本政府の状況も問題になる。
日本企業が強く言えないことでどんな問題がおこるのか
国内企業ではNGでも海外企業ではOKとなる一国二制度となってしまい、日本企業が不利になってしまう。メールの内容解析による広告サービスではGoogleがすでに行ってきたにもかかわらず、Yahooが始める際にサービスの停止要請があった。
他にも海外企業にだけ課せられない消費税の問題など、海外企業を優遇してしまう。またメールの問題ではGoogleを止めなかったため、Yahooにも許可を出さざるを得なかった。本来は消費者のプライバシーを基に判断されるべき部分での議論がされるべきだが、消費者がしわ寄せを受けてしまった。
なぜ日本は海外企業にものをいえないのか
・法律の改正やルールつくりの遅さ
技術の変化でグレーゾーンでのビジネスが増えたときに法律やルールつくりの曖昧さがあると、日本企業はグレーゾーンを避けるが、海外企業は避けてくれない
・アメリカとの関係性
アメリカ企業への干渉はアメリカとの関係性を悪くする恐れがあり、はっきりといえないケースも多い。
・縦割り行政
例えば経産省から指導が入ると、総務省に泣きつき対応してもらうなど縦割りによる対立意識や統一見解のなさが問題にもなる。
・企業とのあいまいな関係
日本企業とはなあなあの関係で、曖昧なルールでもしたがってくれる部分が多かった。海外企業にはルールの透明性と強い説明責任が求められるが対応できていない。お願いベースでの対応では日本企業のみが従い、海外企業が従わず、海外企業を優遇する結果となってしまう。
今後のGAFAによる問題と対応はなにか
制度面からのプライバシーの問題は対応は遅いものの、進んできた。また欧米での強い批判からGAFA自体もプライバシー保護の問題に取り組みクッキーの排除などをおこなっている。
一方で、プライバシー保護は顧客との直接接点の重要性をたかめたため、GAFAの優位性を上げ、独占がさらに進んだ。
対抗できる企業がなければ規制の強化も独占の阻止にはつながらないため、変化に対応し新しい分野への挑戦を後押しする姿勢も必要。
- GAFAの巨大化は問題も起こしているが日本はモノが言えない状態が続いている
- 海外企業ではOKでも国内企業はNGとされる場合も多い
- クッキーによってユーザーの情報を集め、広告に使用されている
- 政府の組織でもデータをGoogleに渡している場合もある
- 急変する事態に現行の法制でのグレーゾーンが増えている
- 2015年に改正された個人情報保護法でも端末情報は保護すべき内容に含まれなかった
- 2020年ようやく、非個人情報でも無断で渡すのは違反との考えが出てきたが、対応は遅すぎた
- 公正取引委員会の判断がGoogleの独占を許した
- 日本でも徐々に対応は進んでいる
- ルールつくりの曖昧さが海外企業を優遇し、国内企業の足を引っ張ることも
- ルールは出来たが運用し、海外企業にも強い対応ができるかが重要
- データ収集に対する対応も遅れている
- 表現の自由の規制が国からプラットフォーム企業に移っている
- クッキーの制限はプライバシーの問題を解決するが、プラットフォーム企業の地位を向上させる
- 変化に対応し、GAFAに対抗する企業を生み出すことが重要
GAFAの巨大化は問題も起こしているが日本はモノが言えない状態が続いている
近年、インターネットでGoogle検索を行うと実際のサイトを訪問しなくても、Google上で調べたい情報が手に入ることが多くなっている。
ユーザーにとって便利であるのは確か、またGoogle自身の社会的責任を果たすために信憑性の高い情報を提供しようとしていることも確かだが、全てをGoogleが握ってしまうことに対する脅威があることも確か。
検索の問題はごく一部でGAFAが巨大化したことの問題は、プライバシー、消費者保護、競争環境、民主主義のあり方まで多岐に渡る。
EUはGoogleの行動を問題視し、莫大な制裁金を課した一方で、日本ではGAFAが引きおこす問題への対応は遅れている。日本はなぜ海外のプラットフォーム企業にモノが言えないのかを検証していく。
海外企業ではOKでも国内企業はNGとされる場合も多い
ヤフーがメールサービスの中で、メールの文面を解析し、内容に応じた広告配信を検討した際に、通信の秘密の侵害の恐れがあると総務省から停止するように要請された。しかし当時すでにGoogleは同様のサービスを行っていた。
Googleは日本国内にサーバーを置いておらず、電気通信事業者ではないから、日本の法律に従う必要はないと判断している。このような一国二制度問題は海外企業への消費税非課税など多く見られる。
始めにGoogleがメール解析を始めた際に指摘できなかっため、ヤフーにも許可を与えざるを得なくなり、しわ寄せは利用者が負うこととなってしまった。
最終的には国内でサービスを提供していればサーバーの有無に関わらず、電気通信事業者としての届け出を行う必要があるように法改正されたが、法律の改正には長い時間がかかっている。
クッキーによってユーザーの情報を集め、広告に使用されている
対象者の詳細な情報を入手し、最も効果的な働きかけをピンポイントで行うマイクロターゲッティングは広告サービスだけでなく、幅広く利用され社会に大きな影響を与えている。
サイトを訪問した際のクッキーと呼ばれる識別番号を割り当てられ、閲覧者の識別を可能にしている。閲覧者が訪問したサイトがクッキーを発行しそれをユーザーに割り当てている場合を1Pクッキーと呼び、そのサイトでの行動のみが記録されている。
閲覧者が訪問しサイトとは異なる第3者がクッキーを発行する場合もありこれは3Pクッキーとよばれ。3Pクッキーでは第3者が様々なサイトにクッキーを配布するようにしておけば、様々なサイトでの行動履歴がアクセスしたわけではない第3者に知れてしまうことになる。
Facebookやグーグルは両方のクッキーを用いることで多くの情報を集めている。特にFacebookは実名登録であるため、他のサイトでは個人を特定できない情報でも、Facebookの情報とあわせることで個人を特定する情報になってしまう。Googleもアンドロイドでオフラインの様々な情報を集め、自社の持つオンラインの情報と合わせようとしている。
日本の個人情報保護法は、特定の個人を直接識別できるのものと定義しているため、ウェブの閲覧履歴や位置情報などを個人情報としておこなかった。しかしこれらの情報は他の情報と結びつくことで簡単に個人情報に変わってしまう。欧州ではこれらのWeb上の情報を個人情報とする動きが起きている。
政府の組織でもデータをGoogleに渡している場合もある
政府系の組織でもGoogleの解析システムを導入し、サイトの利用者のデータをGoogleが把握してしまっている例も多い。多くの組織でこれらの認識がなく、利用者のデータが誰にわたり、どのように使わるのかに無頓着な状態になっている。行政機関であれば差し出すデータは国民のデータであるため、政府にはその意味を考える責務がある。
急変する事態に現行の法制でのグレーゾーンが増えている
技術やサービスが急激に変化することで、従来の法制度で判断できないグレーゾーンは拡大してきた。日本企業は批判を恐れグレーゾーンでの商売をためらう中で、外国企業が次々にサービスを展開してきた。
ストーリービューにプライバシーの侵害の疑いがった際に欧州や韓国では抗議や訴訟に発展したが、日本は法的義務のない指導に留まった。日本企業は指導でも改善をするが、海外企業の場合法的措置や罰金などがなければ従わない可能性も充分にある。
2015年に改正された個人情報保護法でも端末情報は保護すべき内容に含まれなかった
個人情報保護は2003年に制定され、時代に対応できていないという声もあったが、10年すぎても見直されていなかった。欧米では直接個人を特定できないスマホやパソコンの識別子も個人情報とする流れになっていた。
日本でも議論が始まったが、グレーゾーンをはっきりさせようとするとどちらによっても保護派と利活用派の対立が避けられず、難しい状況が続いたが、2015年に12年ぶりに改正された。
一部のデータは新しく保護の対象となったが、端末情報を識別するIDは保護すべき個人識別符号の中に入らなかった。IT企業からのガラパゴス化するとの反発があったためとされるが、欧米では、情報端末の情報を保護する方向で政策が進んでいた。
先進の中で日本だけが現代的なプライバシーに背を向け、利用者の同意なくデータを活用してきた。GoogleやAppleは欧州での批判を受け、プライバシーの基準を満たすべき活動を続け、クッキーの排除に乗り出している。日本の広告企業はクッキーの排除に対応できず、広告市場においてGoogle支配を阻止できる見通しをなくしてしまった。
2020年ようやく、非個人情報でも無断で渡すのは違反との考えが出てきたが、対応は遅すぎた
個人情報保護の改正でも端末の識別情報は対象にならず、他の情報と組み合わせることで個人を識別できる状況は続いていた。
それでも、仮にあるサイトで非個人情報であった情報を提供し、提供先で個人を識別できるのであれば、非個人情報であっても無断で渡すのは違反ではとの考えもあり、2020年に個人関連情報の創設でウェブの情報の集積に対応することができた。
それでももっと早く対応できていれば、利用者はデータを守り、事業者は明確なルールのもとで利活用を進めることができた可能性はあった。
公正取引委員会の判断がGoogleの独占を許した
Googleはアンドロイドの携帯の検索エンジンの初期設定をGoogleにするように強制していたが、多くの国で競争法違反で訴えられ、検索エンジンを選択するようにした。
日本は公正取引委員が巨額な制裁金を要求することはなく、検索エンジンを選択画面を求める通知に留まった。また、日本には検索エンジンの対抗がないため、選択できてもあまり状況が変わらないという指摘もある。
Yahoo検索もシェアは高いが同社はGoogleのシステムを使用しており実質的にはGoogle検索一択になってしまっている。2010年それまで独自の検索エンジンを使用してきたが、撤退しGoogleのエンジンの利用を発表した。アメリカのYahooも撤退しており、マイクロソフトにエンジン(ビング)を採用していたため、日本も同様の判断をするかと思わせたが、Googleを選択した。
当時のシェアはYahoo53%、Google37%と数少ないGoogleが首位でない国であったが、Googleを選択すれば市場を独占することになる。だが、公正取引委員会も問題なしとの判断を示した。この時期欧米ではGoogleの寡占を警戒して様々な政策をとる中で意外でもあった。
検索はそのバランスを少し欠くだけで世の中の見方を変える力を持つため、多様性が必要とする声も少なくないが、Googleによる寡占は進み、現在では99.58%となっている。
日本でも徐々に対応は進んでいる
プラットフォーム企業の下請けになってしまう脅威と対決姿勢を深める欧州委員会を意識し、日本でも徐々に対応が検討されている。
独占禁止法を無料サービスに適応することが難しい面もあったが、取引を金銭ではなくデータで行っている、ユーザーに対しプラットフォーム企業が強力な影響力を持つことなどを理由に徐々に適応しようという動きも見られ得るがあまり強い処置には踏み切れていない。
対応に一過性の無い原因ともなっていた行政の縦割りを排除し、省庁を横断して、海外企業へ対応する例も見られる。
ルールつくりの曖昧さが海外企業を優遇し、国内企業の足を引っ張ることも
法律が時代の変化に対応できないため、結果として国内事業者の足を引っ張ることもある。Yahooは動画サービスを2007年に開始したが、日本の著作権違反の動画が公開された場合の責任の所在がはっきりしておらずリスクが大きく撤退した。アメリカの著作権法は指摘されてから削除すれば問題ないため、Youtubeの方が活気があり結果的に大きなビジネスとなった。
法改正やルールつくりの曖昧さや遅れが一国二制度になどで海外企業を優遇し、国内事業者の足を引っ張ている。
ルールは出来たが運用し、海外企業にも強い対応ができるかが重要
これまでの経緯などで、2020年にようやく電気通信事業者法が改正され、外国法人でも電気通信事業者として届出を行うことを求め、違反すれば業務改善命令を出すこととなった。
これまで行政と日本企業は曖昧で居心地の良い関係に安住してきたが、海外企業への対応でルールの透明性と説明責任を強く求められるようになった。
プラットフォーマー取引透明化法によって、法的責任を問う流れもあるが、実際には罰金も低くお願いベースであり効果はあまり高くない。国内企業にのみ対応を求めるものになれば1国2制度同様の結果になってしまう。
データ収集に対する対応も遅れている
データの収集の重要性が増す中で、政府の行うデータ収集に対するガバナンスも必要だが、これらの仕組みも整っていない。
コロナでの感染者の把握、患者などの位置情報の活用なども後手に回ってしまった。またCocoaは不具合なども問題だが、アプリの基盤となる仕組みはGoogleとAppleによって作られており、彼らの持つデータは質でも量でも国家が上回る存在になっている。
表現の自由の規制が国からプラットフォーム企業に移っている
2016年のトランプ大統領就任以来、フェイクニュースの話題が大きく注目されている。
欧州でも問題視され、政府がプラットフォーム企業と話し合い、対策の義務化と法律による規制も検討されている。これまで思想は自由で、虚偽があったとしても真実とぶつかることで淘汰されると考えられてきたが、現実ではフェイクニュースの拡散、ヘイトスピーチなど多くの虚偽が拡散されている。
パーラーは検閲を行わないSNSことを売りしていたが、トランプ支持者による議会襲撃を受け、GoogleとAppleがアプリストアから排除され運営不能となった。
パーラーは暴力的な投稿で溢れており、プラットフォーム企業の判断は妥当と言える。しかし表現の自由を規制する主体が国家からプラットフォーム企業に移ったことを思い知らされる出来事となった。
ターゲット広告によるマネタライズの仕組みをプラットフォーム企業が持っている以上、透明性の確保や政治広告の禁止などが必要になっており、法律化する可能性もある。
クッキーの制限はプライバシーの問題を解決するが、プラットフォーム企業の地位を向上させる
3Pクッキーへの批判の高まりを受け、AppleやGoogleは3Pクッキーを排除する仕組みに乗り出している。しかしクッキーの制限は第3者へ情報供与というプライパシーの問題の解決にはなるが、今後はGoogleのようにユーザーと直接接点を持つ事業者がますますデータを支配できる時代になる。
不十分な法整備や規制のせいでプライバシーの問題を解決できなかったため、結果的にそれに対応したGoogleの地位が向上したとも考えられる。
プラットフォーム企業はユーザーとの接点を増やすことを重視し、資金を費やし、コンテンツに磨きをかけている。
変化に対応し、GAFAに対抗する企業を生み出すことが重要
GAFAに対応できる企業がなければ、規制の強化はそれに耐えることのできるGAFAに有利に働き、結局彼らが市場を総取りする可能性がある。
ライブドア問題など新興企業への風当たりが強い、ハードウェア重視からの脱却の不十分さなどが原因だが、データ時代の社会構造の変革の中では変化しなければ生き残れない。
インテルは創業期からの主力製品であるDRAM分野で日本企業の攻勢を受けた際に撤退している。一度死んだ気になって新しい分野にチャレンジした結果が今のインテルのCPU市場で地位であり、日本もそうなる必要がある。
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