調べる技術 書く技術 佐藤優 SB新書 要約

情報量の増加=インプットではない

 本書は作家として活動する筆者が必要な情報を調べ、それをもとに書くといった知的生産術をまとめたもの。月平均2冊の本を出し、抱える連載やコラムは90にもおよび、膨大な創作作業は膨大なインプットに支えられている。 

 情報過多な時代でインプットの量が増えていると考えがちだが、本当に情報を身につけるにはインプットとアウトプットの両輪が欠かせない。この両輪によって教養力がついていく。教養力は想定外の出来事に直面したときに自分の頭で考え、適切に対処するために欠かすことができない。

知的生産は限られた人だけが行うものではない

 知的生産というと作家や評論家、企業家、クリエイターなどのイメージがあるが、なにかしらの生産活動に従事して入れば、生産活動とは無縁ではなく生産活動の中にある知的な濃度をいかに高めるかが大事になっている。

  また、知的生産力をたかめることそれ自体を目標にするのではなく、知的生産力を高めることで人生の充実度を上げることが重要であり、知的生産は人生の目的でなく、手段であるべき。

社会の二極化が進み、生き残るために知的生産が欠かせない

 日本では学力の分布は正規分布ではなく、二極化しフタコブラクダのような分布になっており、社会でも同様な傾向がみられている。社会構造はゆるやかな正規分布であることが望ましいが、社会構造の変化には時間がかかるので自分で生き抜く工夫が必要である。行く抜くためには読解力等の基礎学力とコミュニケーションが欠かすことができない。

知的生産=アイデアの生産

 知的生産は人間に固有な知的活動であり、「0から1を生み出していく能力」と「1を100にしていく能力」があり、モノではなくアイデア生産といってもよい。

 新しいものを生み出すだけでなく、現状を改善したり、マニュアルにない臨機応変な対応なども知的生産にあたる。どんな仕事にも知的生産的な部分とそうでない部分があり、そうでない部分でしか仕事ができないとAI技術と競合することとなってしまう。

知的生産は総合力を高め、AIにない特徴を持つことができる

 知的生産能力をあげる第一段階はインプットで中学~高校の教科書レベルの基礎学力をつけることと、自分の仕事に関する知識をアップデートすること。

 得た知識をアウトプットすることで、ただの物知りではなく知的生産にすることができる。社会に受け入れられなければ知的生産をしたことにならないため、社会との接地面を探り、インプットを磨き、トライアンドエラーを繰り返していくことが知的生産には欠かすことができない。

 AI技術は分析力に非常に優れ、人間が勝つことは難しい。人間は価値判断、感覚、発想力、創造力、想像力を動員し、付加価値をつけることでしか生きていくことはできない。このような総合力を身につけるために知的生産が欠かすことができない。

インプットには土台をつくるものとアウトプットを行うものがある

 知的生産はしかるべき情報のインプットから始まる。インプットには理解力の土台をつくるためのインプットと具体的なアウトプットのために行うインプットの2種類がある。

 インプットの基本は読むことであり、理解力の土台を作るためには理解力が必要になる理解力を磨くためには基礎的な知識、教養を自分の頭に入れて置くことが重要となる。

 新聞を読むことで移り変わるニュースに触れることはインプットとして重要だが、新聞を理解するためには基本的な知識=高校の教科書レベル特に、歴史、政治経済、数学の知識が必要となる。

 基礎的な知識以外のインプットについては、時間効率を考慮し、仕事に直結するかどうかという視点を持つことをお勧めしている。

新聞は効率的に情報を入手できる

 新聞は政府の発表などの一次情報をプロが選別し、一般読者向けにかみ砕いた2次資料であり、効率的に情報を入手できる。ただし、一つの見方に偏らないように2紙以上の購読をしたい。

 ネットの情報は玉石混合なため、NHK、新聞のニュースサイトや辞書、辞典検索サイトなどの信頼できるサイトに絞ると良い。

 ネットの情報は正確性に劣るだけでなく、過去の閲覧履歴から最適化されてしまい、情報を広く見ることや異なる見方を把握できなくなる傾向もある。

 SNSやメッセージアプリも時間を無駄にしたり、話し言葉を多用することでの読解力の低下につながるため、最低源としたほうが良い。

手書きのノートの活用がおすすめ

 筆者は新しく触れた知識を自分のものにするために、一冊のノートに手書きで記載している。全ての情報を1冊のノートに記載することで、過去の記載を参照にしやすい、デジタルに比べ、手間がかかるため必要な情報か選別してから記載できるなどの利点がある。

 今日何があったかの日誌をつけることもおすすめで、振り返ることで改善点を見つけられ、記憶のとっかかりにすることができる。

 知識を自分のものにするとは知識を定着させ、必要な時に引き出せるようにすること。そのためにも手書きでの記載がシンプルで確実な方法となる。

読書では本の抜き書きとそれに対する自分のコメントを記載している。本の重要な部分の抜き出しを行うことで、知識の記憶への定着率は確実にあがる。

自分の頭で考える=批判的思考力をもって物事をみること

 日ごろから情報を鵜呑みにせず、自分の頭で考えることは知的生産力をあげることにもなる。対象を理解し、自分の評価を加える批判的思考力を持つことが自分の頭で考えるということになる。

適切な時間管理は知的生産力を高め、人生を充実させるために不可欠

 一定時間内に自分のこなせる仕事量を計量すれば、自分の能率を踏まえた仕事の計画を立てるられるようになる。自分のキャパシティを把握し、チャレンジの際もキャパシティの2割増し程度に抑える意識をすると成長しつつ、燃えつきをふせぐことができる。

 長期の計画はなるべく細かく期限を切り、短期計画を立てることで先延ばしや焦りをふせぐことができる。

仕事を任せるときは期待しすぎないほうが良い

 相手に仕事を任せる際には任せっぱなしにせず、確認することが重要だが、確認を催促と取られると任された方の期限をそこねてしまう。リマインドの頻度、言い方には注意が必要。

 相手の能力を自分の期待の6割程度と見積もっておき、リスクヘッジしておくと全体の計画の質や効率を落とさずに仕事を進めることができる。

惰性での消費を避け、自分で考えたことでお金を使うべき

 自分が何にお金を使っているかを知ることも重要となり、習慣や惰性で漠然と消費するのではなく、自分で考え、定めたスタイルで消費する必要がある。

 知的生産に使う額は可処分所得の10%程度とすると良い。

 友人との関係や休息はただ、楽しみなだけでなく、知的生産力を高める効率を上げるためにも必要である。人生を充実させるための知的生産という視点を持つことが何よりも重要になる。

 

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