超加速経済アフリカ 椿進 3分要約

3分要約

アフリカの経済がどういう状況か

 日本人の持つ、飢餓、内戦等のイメージはごく一部でしかなく。多くの人が驚くほどの速度で発展している地域も多い。メディアは本当のアフリカの姿を伝えていないため多くの日本人はアフリカの現状を理解できない。

なぜアフリカ経済が加速しているのか

 生産年齢人口が多くなれば経済は発展するといわれている。アフリカでも医療衛生の発展で乳幼児の死亡者が減ったこと、最低限の食糧確保が可能になったなどで若年層と人口が増加したことで経済が大きく発展した。

 生産年齢の増加は生産拠点、市場としての魅力を高めるがそれ以外の理由も経済を加速している。既得権益者がいないため、新しい技術が広がりやすく、医療、金融、物流などで新技術の利用が行いやすい。またそれに伴うデータ収集が容易であるため、アフリカをAIなどの新技術の実証地に選ぶ会社も増えている。

日本がアフリカの発展で知っておくべきことは

 日本企業の進出はバブル崩壊移行減少している。現在は上昇傾向にあるものの。中国が国を挙げてアフリカに進出しており、中国の1/100ほどしか進出していない。

 アフリカの発展も日本の高度成長期と同じようなことが必ず起こる。先進国には当たり前のものがないことも多く、日本が過去の成功例と今後のアフリカで起こることを知り適切に対応すれば大きなチャンスになる。

アフリカは日本人の想像以上に発展している

 日本人のアフリカに対するイメージはテレビのニュースで流れるスラムや飢餓、内戦などが大きい。それらはアフリカの一端ではあるがほんの一部でしかない。

 新幹線が走り、近代的な建物が並び、巨大なショッピングモールがにぎわい多くの人が驚くほどの加速度的な発展を遂げている。

 アフリカ全体の経済規模は日本の4割程度に成長しており、中位年齢が20代の国が多く若さは日本との大きな違い。すでにアフリカで多岐な利益を上げている日本企業もあるが、ほとんどのメディアがアフリカの本当の姿を伝えていないため、知られざるアフリカについて記そうと考えて本書は書かれている。

アフリカの最大の武器は若さ

 アフリカ大陸はインドの十倍も大きく、砂漠やジャングルのような住みにくい場所だけでなく涼しく過ごしやすい気候の場所もある。

 近年の医療衛生の発達による乳幼児の死亡率低下、最低限の食糧確保が可能になったことで、中位年齢が圧倒的に若い。日本は48.4才だがアフリカは19.7才で若さと人口の爆発は国家運営を適正に行えば人口ボーナスとして大きなパワーをもたらす可能性がある。

 15歳から64才までの働ける人口である生産年齢人口とその国の経済のピークは一致すると言われている。中国は今が生産年齢人口のピーク、インドは2040年ごろ、アフリカはそのあとにピークを迎える。

電気の普及率よりも携帯の方が高い

 アフリカ全体で見るとおよそ半分くらいの人が電気の無いところで生活している。しかし、携帯電話の普及率は非常に高く、有名なマサイ族でも成人ではほぼ全員スマホやケータイを持っている。

 充電は小型のソーラーパネルや村の充電サービスを利用し、通話やFacebook、ゲームなどにも利用されるが特に財布代わりとして生活必需品になっている。スマホへの切り替えも多く、年間の販売台数はアフリカ全体で見れば中国やインドよりも多くなっている。

 近年は東南アジアの発展からアジアの時代ともいわれるが、アフリカと東南アジアの経済状況はほぼ同じくらいになっている。

日本で起きた経済成長と同じことがアフリカでも起こる

 ナイロビでは世帯年収が380万円の層が約10%、カイロでは46%と徐々に収入が増えている人も多く、日本の商品を変えるような中間層が特に都市部で増加している。

 アフリカ全体で見るとまだ7~8割は農村に住んでいるため、マーケティングする際には都市のGDPなどを見ていくことが重要になる。

 住宅事情、外食文化、消費文化などはGDPの伸びとリンクして起こるため、日本が発展してきたことと同じようなことがアフリカでも起こる。この50年で経済の発展を経験した日本ではどの経済規模の時にどのようなことが起こるかをよくわかっているおりアフリカビジネスに利用できるはず。

既得権益者がいないため先端技術が広まりやすい

 日本でもモバイルマネーの利用率はあがっているが、中国に比べるとその割合は小さい。実はアフリカ以上にモバイルマネーの普及は遅れている。アフリカでは人口の7割、成人の9割がモバイルマネーを利用している。

 アフリカのケータイはほとんどがプリペイド式でチャージしたお金をほかの人に遅れたり、日本と違い簡単に現金に戻すことができる。ケニア最大の通信会社が展開するM-PESAでの年間のトランザクションは約4兆5000億円でケニアのGDPの約半分にあたるほど普及している。膨大な取引によるビックデータと個人の与信を可能にするため、大きなポテンシャルを持つ社会インフラといえる。

 この仕組みは銀行を不要にするという意味でも破壊的なイノベーションとされている。チャージした現金を現金のように使えるため現金を持たなくなり、紛失や強盗の心配も減少している。

既存インフラが少なく、既得権益者がいないため、先進技術が広まりやすい現象はリープフロッグ現象と呼ばれるが、アフリカでは通信だけでなく、医療、金融、物流などでもリープフロッグ現象がみられる。

 医療では病院や医師のすくない地域も多いため、遠隔医療や症状をAIに入力し診断する仕組みも累積で240万人以上が利用されている。遠隔診断の利用で83%が実際に病院に行くことなく治療を終えており、効率的になっている。スマホにつなげて使えるモバイル式超音波診断器の企業も進出している。

 物流では輸血用の血液や医薬品を運ぶZiplineはドローンによるデリバリーが多く利用されている。血液をストックする仕組みや道路のインフラが脆弱なため、多くの人が出血多量でなくなっているために求められているサービス。

 規制が少ないため、飛行データや医療データの蓄積が容易であり、実際のデータを如何に集めるかが重要なAI開発ではアフリカでの実証が非常に有利に働く。

 M-PESAは大きく成長しているが欠点もある。1つは海外送金ができなこと、もう一つが異なるキャリアの携帯への送信が難しいこと。この欠点をクリアしたのがChipper cash。従来の送金サービスに比べ手数料が安く、今後送金可能な国が広がればさらに拡大することになる。

 アフリカでは小規模な運送会社が無数に存在し、全国をカバーするような運送会社はない。そこで荷主と運送会社を自動マッチングすることで全国に荷物を運送するシステにサービスも広がっている。戦後の日本も同じ状態で全国ネットワークを作り上げるのに40年かかったが、わずか1年で成し遂げている。

 これらのサービスは既得権益者のいないところで、本質のニーズに対し、IT技術でソリューションを提供し大ブレイクしている。既得権益者がいるとそれを守る力学がどうしても働き新しい取り組みが遅れてしまい、いいアイディアが生まれても実現ができない。そのため多くのシリコンバレーの会社アフリカから商用サービスを展開している。

中国はアフリカへ大き進出している

 アフリカにはすでに多くのグローバル企業が進出し、一定の事業規模を実現している。うまくいっている企業はまずは、基礎的な商品から進出し、経済レベルが上がるに従って次の商品やブランドを順次展開している。

 サムスンは現地進出を活発的に行い、日本メーカーからシェアをうばっている。駐在員が永続的にその国に駐在し腰が据わっていたこと、電力供給不安などアフリカの状況に合わせた商品を提供したことが成功の要因。最近では中国企業の進出が目立ち、スマホでは中国メーカーがトップブランドになっている。

 中国は国を挙げてアフリカに進出している。その目的は資源の確保、国連でのアフリカからの票を獲得するなどの理由が大きいが、市場としてもとらえている。物価が近いため、中国の商品をそのままアフリカで売ることができる。経済発展のアドバイスを行う人材も送り込んでいる。

日本の進出は40年前の1/3だが、再び増えている

 アフリカに進出しているの日本企業は約500社で日本人の数は7500人だが、40年前は現在の3倍の日本人がいた。バブル崩壊後日本企業は次々に撤退してしまった。日本の後にアフリカには韓国企業が進出しその後、中国が進出した。今では中国の1/100程度になっているが、再び企業の進出が進んでおり、今後も続くと思われる。

 日本の中古車をアフリカに売るサービスが大きくヒットしたり、インスタントラーメンが人気だったりと一部では日本企業の存在が増している。

アフリカの課題は貧困をなくすこと

 アフリカの大きな課題は貧困をなくし、世界との差をどう埋めていくか。そのために経済発展が必要となる。

 都市部では日本人と同等の経済力を持つ人も増えている。ビジネスの拠点となっているTier1都市であるカイロ、ラゴス、ヨハネスブルグ、ナイロビだけでなく次に来るTier2であるアジスアベバ、ダルエスサラーム、キガリ、カサブランカなどもチェックしておくことが大事になる。

 経済発展に伴う、住宅の建築ラッシュや道路の渋滞、高速道路の建設など日本経済発展で通った道をアフリカ諸国も通るため、都市化のインフラ整備のニーズはとても大きい。

日本の強みは過去の成功例を知っていること

 アフリカ進出のパターンは主に4つになる。

1.資源や一次産品の獲得の場

 金、ダイヤモンド、石油、レアメタルなどの天然資源やコーヒーなどの食品の輸入を目的とする

2.将来有望な市場として

 自動車、食品や化粧品の消費財、ヘルスケアやIT等のサービス、インフラなどは人口増もあり有力な分野

3.生産拠点

 人件費の安さと人口の多さで中国と同じようなモデルも有効となる

4.新たなビジネスの発掘と実証

 規制や既得利権の少なさを武器に新たなビジネスを試し、データを取得する場として進出する。AIなどデータの重要な領域では特に大きな可能性を秘めている。

 アフリカには先進国には当たり前のものがまだない。真のニーズに気づき、それを商品化、サービス化し当たり前のことを当たり前にやることがヒットの秘訣。

 日本の最大の強みは過去の成功例を知っていること。日本の1960~80年代で起きたことと同じことがアフリカでも起きる。

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