食べることの進化史 石川伸一 まとめ

本の概要

 死刑囚の最後の食事が話題になるように「食事への向きあい方が、その人となりを物語る」ことを暗に感じているのかもしれない  

 食と人との関わりがどう変わってきたかをみていくことで、人の未来像を予想する際に役に立つ

食と人類の関係

 すべての人類に古くから共通する事項は

料理をする:火を使う動物は他にいない

共食をする:同じ食事をシェアすることは少ない

 の食に関わるふたつであって、食は人間に多くの意味を持つ

 人類の歴史の中で好きなものを食べるようになったのは農業が始まって以降のごく最近に過ぎない

 現在、遺伝子組み換えや培養肉など新しいテクノロジーによる食に不安を持つ人も多い

 我々の原始的な欲求は穴居人(洞窟などの住んでいた時代の人類)から変わっておらず、テクノロジーと原始的な欲求に軋轢があると、たいてい欲求が勝利してきた

食の未来

 料理はその時代の世界観の影響を受ける 

 現代は宗教が衰退し、科学が発展している時代のため料理を科学で発展させる考えが広がっている

 培養肉などは科学発展で可能になる 食料不足、環境問題、畜産業での問題解決に役立つとみられている 

 一方で、新しい食べものはただ内容が優れていても、普及せず、消費者に理解され受け入れられることが重要となる 

 遺伝子編集技術で自由に生命をデザインすることができるようになれば、光合成可能で食事をする必要のない身体や、宇宙に適応するために無機物や岩石からエネルギーを得る身体になるかもしれない

 今の食べるという行為が時代遅れになるかもしれない

 人間は雑食のため、新しい食料に対し、

毒性を心配し躊躇する「食物新奇性恐怖」

積極的に食べようとする「植物新奇性嗜好」

 の相反する二つを併せ持っている 

 新しい食が定着するには

恐怖を減らすこと(昆虫をそのままではなく、チップ状にする)

感性に訴えることが重要(栄養だけが重要なわけではない)

食による人類の変化

 人類の祖先は多種多様な植物を食べていた 特に地面に埋まっている芋は栄養も高く、乾季でも見つけやすいメリットがあった

 肉を食べることはエネルギー効率が高く、大きな腸が不要となり余ったエネルギーが脳に振り分けられるようになった

 脳の巨大化は火の調理による効率化でさらに進んでいった

 進化の過程でエネルギーが運動量を上回ることはほとんどなかったため、祖先たちはおいしいものを求め、積極的に食べるように脳の仕組みを整えてきた

 そのためにそれに抗うダイエットは難しい 将来的には余ったエネルギーを脂肪ではなく、脳に回せるタイプの人がより子孫を残すようになり、遺伝子が自然選択によって残っていく可能性も有る

食の与える意味

 食には食べる「モノ」と「コト」両方の意味がある

 食べる行為は社会的な意味を持ち、食べるものから固定概念を与えることや国民食のように集団のアイデンティティとなる場合もある

 ただ、栄養を摂取するためのではなく、安心感や満足感を得ていると言える

 絵本や昔話には食のシーンが多い 自分の中に異質なものを取り込みながら成長することを本能的に納得できるから、大人の文学における性の役割をしている

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