101のデータで見る日本の未来 宮本弘暁 PHP新書 3分要約

3分要約

日本は今どんな現状なのか?

 日本の国力、世界での存在感は急激に減少しているが、国際社会で存在感を示すには強い経済力と国力が必要不可欠。日本復活のためには今日本や世界で何が起きているかを知ることが第一歩になる。

日本や世界で何が起きているかをどうやって理解すればよいか

 3つのメガトレンドに注目することが必要。

1.人口構造の変化:日本では人口減少と高齢化だが世界では引き続き人口増となる

2.地球温暖化対策によるグリーン化:脱炭素、カーボンニュートラルが経済構造を変える

3.テクノロジーの進歩:第4次産業革命が大きく環境を変える

メガトレンドは相互に影響し、経済、社会に影響を与える。

メガトレンドはどんな分野に影響するか

 多くの分野に影響するが、本書では7つ紹介されている。

1.経済成長:少子化は労働力減少を招くが、テクノロジーの進歩とグリーン化で経済成長は可能

2.財政:日本は財政難。高齢化では財政政策の効果が小さくなる

3.医療、健康:高齢化は医療費の増大をもたらすが、テクノロジーの進歩は質と効率化を向上させる

4.農業、食料:人口増による需要増加、温暖化による収量減が課題。フードテックやスマート農業に期 待される

5.教育:内容の変化、大人の学びなおしが必要

6.エネルギー:需要増加だが再生可能エネルギーが拡大している

7.地方、住宅:地方の人口減と空家の問題が課題となる。テクノロジーでの解決が期待される

メガトレンドで社会はどう変わるのか

 テクノロジーが新しい職を生み出したが、短期的には機械の代替されて失業することもある。その際に別の職に移る流動性が重要だが、日本の流動性は低く変化する必要がある。                              

 社会環境を変えることでメガトレンドを生かすことができるようになる。

日本復活の第1歩は世界や日本でなにが起きているか理解すること

 現在、日本の国力、世界での存在感は急激に減少している。成熟国であるから経済成長を追い求める必要はないとの意見もあるが、国際社会で存在感を示すには強い経済力と国力が必要不可欠。

 日本が今後復活するための第一歩は日本や世界でなにが起きているか理解しすること。個々の国で起きていることだけでなく、世界の経済状況を理解し全体像をつかんだうえで、日本の現在と未来を考えることが重要。

世界環境を理解するには3つのトレンドを抑えるべき

 世界環境を理解するうえで、抑えておくべき3つのメガトレンドがある。

1.人口構造の変化

 日本では人口減少が起きるが世界では人口が爆発的に増加し、人口構成も変化する。

2.地球温暖化対策によるグリーン化

 脱炭素に向けた動きは既存の経済構造を大きく変える。

3.テクノロジーの進歩

 AI、ロボット、ビックデータ、IoTなどによる第4次産業革命が起きる。れらのメガトレンドが相互に影響しながら経済、社会に影響を与えていく。

日本の人口は急減するが世界の人口は増え続ける

 日本の人口は今後40年でカナダ一国分(3840万人)の人口減少が起き、労働力に低下を招く。人口減少の裏には少子化と高齢化があるが、これほどの人口減少を体験した国はほとんどない。

 少子化が進み、今後20年間は人口減少が進むが高齢者は増え続け、日本の高齢化率は今後も他国よりも高いと予測されている。高齢化と長寿化は個人がどのように人生設計をするのか?という問題をすべての世代に突きつけるようになる。

 日本とは違い世界の人口は増加を続けており、特に今後はアフリカの人口が増加していく。人口増加だけでなく高齢化も進行し都市化の流れが世界中で起きていく。

脱炭素の動きが加速する

 温出効果ガス排出による温暖化は世界に大きな影響を与える。様々なシナリオの中で最も排出量が少ない予測であっても気温が産業革命前と比較し、1.5~2.0℃上昇する。

 1.5℃の上昇でも猛暑は8.6倍、極端な大雨は1.5倍。干ばつは2倍と予想されている。海面上昇、水不足も深刻化し、2050年までに気候変動によって1億4000万人以上が移住を迫られる可能性がある。

 そのため、世界では温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いた合計をゼロにする脱炭素化の流れ(ネットゼロ)が進んでいる。

 日本でも2050年までの排出量を合計ゼロにする目標が立てられているが、厳しい状況。日本の部門別の二酸化炭素排出量が多いエネルギー、産業、運輸分野などでの削減策を考えることが重要。

 環境問題に積極的に取り組んでいる企業を選んで投資するESG投資は増加しており、カーボンニュートラルに向けた政策によって今後15年でGDPは0.7%増やし、2027年までに1200万人の雇用が創出される可能性があるとされている。

第4次産業革命が働き方や生活を根底から変える

 ビックデータ、IoT、AI等の新技術による第4次産業革命が進んでいるとされ、私たちの働き方や生活を根底から変えると言われている。

 5Gの超高速、超低遅延、多数同時接続Iなどによって、あらゆるものがインターネットにつながるIoTを可能にし、IoTによって集められたデータはビックデータとして処理されるようになる。集まったデータを活用することで機械学習可能なAIに必要な大量のデータを用意できるようになっていく。

 画期的なテクノロジーが生まれると、これまでの産業がなくなり、新しい産業が生まれる。新規技術が普及するまでのスピードは速くなっており、大きな変化が早く起きるようになっている。

3つのメガトレンドは特に7つの分野に大きな影響を与える。

1.経済成長

 日本のGDPは他国と比べ停滞が続いている。デフレによる経済停滞も原因だが、メガトレンドの変化に対応できなかったことも理由の一つ。人口減少、高齢化、技術進歩などの変化が起きたが日本は時代遅れの経済システムを使用したため衰退の道をたどってしまった。

  経済理論では国の生産量は、資本、労働、技術の3つの要素に作用されるとされる。少子高齢化は労働力減少を招くが、技術進歩やグリーン化によって長期的な経済成長率が高まる可能性は充分にある。

2.財政

 日本の歳入は公債による借金に依存しており、危機的な状況になっている。バブル崩壊後の長期的経済低迷による税収減、高齢化による社会保障費の増大などが主な原因。

 国の借金はわるいことではなく、財政出動を行うことは財政政策の基本だが、額が大きくなりすぎると国債が買われなくなっていまう。また、高齢化すると雇用機会が増えても意味が小さく、消費も増えにくいため財政政策の影響が小さくなることも知られている。

 気候変動に必要なインフラ整備のための支出も増えるが、世界の多くの公共投資が非効率であることが知られており、賢明に行っていく必要がある。

3.医療、健康

 高齢化に伴い、障害や疾患が増え、医療費の増大をさせる一方でテクノロジーの進歩も健康に大きな影響を与える。医療費の増大以外にも医者の高齢化や過重労働による医者不足、要介護者の増加による財政問題、介護離職なども深刻化する

 一方で、ロボット、ナノマシン、AIなど医療技術の向上は医療の質を高めるだけでなく、遠隔医療、画像診断のAI化、創薬の期間短縮など効率化にも大きく影響する。

4.農業、食料

 日本では人口減少だが、世界では人口増加が続き、食料の需要増加への対応が課題になっている。温暖化が農作物の収穫量減をもたらすなどの影響もある。

 従来の農業を根本的に変えるスマート農業は先端テクノロジーで超省力、高品質、高生産を実現する新しい農業。

 有機農業の普及による農地からの二酸化炭素排出減、代替肉や培養肉などのフードテックによる効率化などに注目が集まり多くの投資が行われている。

5.教育

 日本の教育はいまだにパターン化された技能を取得させる従来の教育を行っている。社会で求められる人材像は変化したが、教育は変化していないため質は劣化している。

 世界では教育のデジタルテクノロジーを導入する動きが広がり、その市場規模も大きくなっている。画一的な授業ではなく、習熟度に合わせた学習教材や方法を提供するっことを可能にする。日本でもICT環境を整える動きが少しづつ見られている。

 日本の教育分野への公投資はの割合は他国と比べても低く、教育費を削って社会保障にお金を回している状態。

 今後は長寿化と変化の早い時代に対応するため、学びなおし、知識のアップデートなどの成人学習も他国に比べを下回っており、生涯学習を広める工夫が必要。

6.エネルギー

 世界のエネルギー需要は増加しているが、その中身は転換期にある。脱炭素化の流れが加速する中再生可能エネルギーが拡大している。日本でも脱炭素の目標を掲げているが、達成は難しい。化石燃料から太陽光、風力などの再生エネルギーへの転換が必要だが、欧州に比べ遅れている。

7.地方、住宅問題

 日常生活に必要なサービスは一定の人口規模の上に成り立っているため、人口が減少するとサービスの維持が困難になる。2050年には全市区町村の3割が2015年比で半分未満になると予想しており、特に地方での人口減少は深刻。

 小売り、医療、介護、交通などが人材確保できずに、維持できなくなったときの解決策として注目されているのがデジタル化。一部の自治体では先端技術を用いた業務の効率化に取り組んでいるが、その割合はまだまだ小さい。

 空家は街の景観を阻害し、不動産価格の下落、治安の悪化など環境、経済両面に影響がある。日本の空家は増加傾向となっている。人口減少の影響もあるが、日本は税制が空家を放置したほうが有利、中古住宅市場に小ささなども原因になっている。

労働は経済の革新であり、時代に合わせた変革が必要

 労働は経済学の核心を占めている。労働は所得を得たり、精神的充足を得るなど人生と切り離せないがそれだけではなく、経済に与える影響も大きいため。失業は労働資源が十分に生かされていない状況であり、経済、財政政策でも雇用は重要なターゲットになっている。

 日本の特徴である終身雇用や年功賃金は人口構成の変化やテクノロジーの進化、グローバル化で時代遅れとなっており、労働市場に多くに矛盾や問題が生じている。

 メガトレンドによって経済構造が変われば新しい産業が生まれ、古い産業が衰退する。そこで鍵となるのは労働市場の柔軟性だが、労働の再配分がうまくいかなければ経済成長の足かせとなる。

 職業人生が長くなれば労働環境の変化に直面する機会も増える。これまでも技術の発展は職を奪うのではなく新しい職を生み出してきたが、短期的には機械に置き換えられた人が失業することがある。その際に新しいセクターに労働がスムーズに移動できるかが重要になる。

 労働市場の流動性と生産性が比例しているとのデータもあり、日本でも労働市場の流動化ができるかがカギになってくる。

労働者の知識のアップデートを行うことが大事になる

 流動的な労働市場を構築するには、能力評価の適正化、報酬の年功化から成果へ変化させることが必要。個人がスキルを磨くインセンティブを持たせるために学習機会や自己投資への税優優遇などを行うことも検討すべき。

 労働者の知識のアップデートが求められるため、社会人が学びなおす場にするなどの教育改革が必要。

 問題意識、深い思考力、解決能力は知識注入型の教育では身につかないため教育内容も変える必要がある。また、グローバル化に伴い様々な地域、人種の人たちと仕事をする機会も増えるため、文化、歴史、宗教といったリベラルアーツも重要。

税負担に応じた受益があれば負担感は減る

 財政は消費税、相続税を上げる必要性があるが、負担に応じた受益があれば負担感は減る。高い税負担を受け入れに足る社会的な仕組みを考えるべき。

 労働事情改革で高齢者や女性の雇用を促進し、労働力人口減少を少しでも弱めることも重要。社会保障費の削減、消費意欲増大、経済成長率の底上げなどの効果が期待される。

従来の仕組みを変えることでメガトレンドを生かすことが可能

 健康に投資し、健康寿命を延ばすことは社会コスト節約、高齢者の雇用拡大に重要なため日常の健康作りを促すような税優遇が検討に値する。企業による健康経営は生産性を上げるとのデータもありイメージUP以上の効果がある。

 人口構造の変化、グリーン化、テクノロジーの進歩というメガトレンドは日本の経済、社会環境を大きく変化させているが経済や雇用環境は変化していないため、様々なゆがみが生じてる。コロナによるパンデミックが強制的に働き方をかえるきっかけになっているため、これを機に自己改革を行い経済に活力を取り戻すべき。

 そのためには現状を認識し、問題意識を持ち、深く考え、解決策を探る必要がある。

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