日本の政策はなぜ機能しないのか 杉谷和哉 要約

本の要点、概要

 多くの人がなぜ、こんな政策があるのだろうと?と疑問に感じたことがあると思います。

 また、以前効果のあまりなかった政策と似た政策が実行されているのでは?と感じることもあると思います。

 このようなことが起きてしまうのは、政策による社会的介入の効果をきちんと評価できていないため、実行した政策に本当はどのくらいの効果があったのかを把握できていないためです。

 そこで、エビデンスに基づく政策決定=EPBMに大きな注目が集まっています。EPBMはエピソードによるいい加減な根拠ではなく、きちんとしたエビデンスに基づいて政策を実現していくことを可能にするものです。

 しかし、日本でも、EPBMの導入が検討され始めていますが、どの導入法には問題があり、このままでは、、政策評価の効果が薄く、一時のブームで終わってしまう可能性もあります。

 EPBMに限らず、日本の政策評価がうまくいかない理由には、理論と実践の乖離が挙げられます。日本の政策評価の歴史と失敗の理由を知ることでEPBMを有効に利用し、政策の精度を上げるためには、何が必要なのかを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・公共政策を評価する方法

・EPBMとは何か

・日本の政策評価の歴史と問題点

公共政策の問題点とその対策は何か

 個人や民間で解決できない問題に対し、政府や自治体が解決を図るものが公共政策です。

 しかし、公共政策の効果のなさや無駄の多さに疑問を持つ人が多いように、政策の効果には改善の必要があります。

 近年、政策の効果の改善や無駄の削減に有効とされるEPBMが注目されています。

公共政策の効果のなさや無駄の多さが問題になる中で、効果の改善や無駄の削減に有効とされるEPBMが注目されています。

EPBMとは何か

 EPBMは「Evidence-Based-Policy-Making」のことで、エビデンスに基づく政策決定と訳されます。

 政策の効果と結果の因果関係を確認し、その政策に効果があったのかを評価することで、より良い政策決定に結ぶ付けるために利用されるものです。

 エピソードによるいい加減な根拠ではなく、きちんとしたエビデンスに基づいて政策を実現していくことの重要性が増すなかで大きな期待がなされています。

EPBMはエビデンスに基づく政策決定のことであり、エピソードによるいい加減な根拠ではなく、きちんとしたエビデンスに基づいて政策を進めるために必要とされています。

これまで、政策の合理化はどのように行われてきたのか

 日本でも様々な方法で政策の合理化、政策の評価が図られてきましたが、機能しているとはいいがたい状況にあります。

 政策を評価する方法は主に2つに分けられます。

1:緻密にデータ取得、分析を行いロジックモデルを形成するプログラム評価

2:民間企業で行われる業績管理をベースにした事後評価によって評価を行う

 プログラム評価は専門的な知識と手間、費用がかかることもあり、日本では主に業績管理に基づいた政策評価が行われてきました。

政策評価は大きく分けると、プログラム評価と業績管理ベースがあります。日本では主に、業績管理ベースによる政策評価が実行されてきました。

なぜ、日本の政策評価はうまくいかないのか

 業績管理にもプログラム評価ほどではなくても社会科学、統計の知識が必要であったにも関わらず、人材、時間、予算などを割くことなかったため、正しい政策評価がされてきませんでした。  

 また、政策の効率UP=予算削減とだけしてしまい、成果を上げるという視点が足りなかったことで現場が疲弊してしまったことも政策評価が進まなかった要因でした。

社会科学、統計の知識が必要であったにも関わらず、人材、時間、予算が不足していたこと、政策評価を成果の向上ではなく、予算の削減と捉えたこともあり、政策評価はうまく進みませんでした。

日本のEPBMでの問題は何か

 日本でも2018年をEPBM元年として、EPBMが取り入れ始めています。

 介入の効果を評価するために、資源投入から結果の発現までの一連の流れを図式化したロジックモデルの導入も行われています。

 しかし、ロジックモデルはEPBMに求められるほどのエビデンスが必要でなく、仮説でしかありません。

 ロジックモデルを過信してしまうと、介入の効果の検証が十分になされない可能性もあります。

 政策による介入と結果の因果関係を確かめきれなければ、政策評価の効果が薄く、一時のブームで終わってしまう可能性もあります。

日本でもEPBMが取り入れられ始めていますが、それほどエビデンスを必要としないロジックモデルを重視してしまえば、介入の効果の検証が十分にできない可能性もあります。

政策評価の効果が薄くなれば、一時のブームで終わってしまう可能性もあります。

日本でEPBMを上手く活用するためには何が必要なのか

 日本の政策評価がうまくいかない理由には理論と実践の乖離が挙げられます。

 膨大な手間をかけ、政策の合理性を示しても、有権者が興味を示さないため、政治家も官僚も徐々に興味を失ってしまいます。

 また、いくら精密なエビデンスがあっても、政策を運営する組織がうまく動いていなければ、EPBMは成立しません。

 組織の合理化がEPBMの活用に必要ですが、組織の合理化は政策の合理化以上に難しいことです。

日本の政策評価がうまくいかない理由には理論と実践の乖離があります。また、政策を運営する組織がうまく動くこと=組織の合理化も不可欠です。

組織の合理化に必要なものは何か

 これまで、合理的な組織を構築するには、マネジメントが重要とされてきましたが、科学的な手法であるマネジメントだけで、合理化を浸透させることはできません。

 因果関係で政策の有効性は評価できても、その政策の目的が正しいかを評価し、組織として進んでいくにはアート的な思考であるアドミニストレーションが欠かせません。

 科学的な手法と数値化や定量化の難しい、現場知や実践知などのアドミニストレーションのバランスが組織の合理化と政策評価には欠かすことはできません。

 データ取得、利用のコストが下がったことで、EPBMへの注目は増していきます。

 過度な楽観と悲観を避け、政治を巻き込んだ試行錯誤によって少しづつ前進していくことが必要です。

科学的な手法と数値化や定量化の難しい、現場知や実践知などのアドミニストレーションのバランスが組織の合理化と政策評価が重要となります。

完璧な政策も政治も存在しません。試行錯誤によって少しづつ前進していくことが必要です。

本の要約

要約1

個人や民間では解決できない課題に対し、政府や自治体が計画を練ることで公共政策は実行されています。

しかし、効果のなさや無駄など公共政策に疑問を持ったことのある人も多くいると思います。

この課題に対し、注目を集めているのが、EPBMです。

EPBMは「Evidence-Based-Policy-Making」のことで、エビデンスに基づく政策決定と訳されます。

政策をエビデンスに基づいて作り、進めることで、これまでのエピソードによるいい加減な根拠からきちんとしたエビデンスに沿って政策を実現していくことの必要性から大きな注目を浴びています。

一方で、これまでも政策の質を向上させるための試みは多く行われてきましたが、機能している状態とは言い難い面もあります。

これまでの、政策決定の問題点は何なのか、EBPMは何が違うのか、EBPMを進めるうえで重要なことは何かを知ることの必要性が増加しています。

要約2

EBPMは1990年代後半の英国で生まれ、政策の効果と結果の因果関係を確認し、その政策に効果があったのかを評価することで、より良い政策決定に結ぶ付けるために利用されるようになっています。

政策の合理化という考え方はEBPMが浸透する前から存在しており、日本でも様々な検討がなされてきました。

政策評価は大きく二つのやり方が存在しています。

1つが精密なデータの取得、分析を行い、ロジックモデルを形成することで、社会的介入の効果を確かめるプログラム評価。

もう1つが業績管理(民間経営的な経営的な視点の導入)をもとにし、事後的に評価を行い、社会的介入の効果を確かめるというものです。

プログラム評価は専門的な知識と手間、費用がかかることもあり、日本では主に業績管理に基づいた政策評価が行われてきました。

しかし、業績管理にも、プログラム評価ほどではなくても社会科学、統計の知識が必要であったにも関わらず、人材、時間、予算などを割くことなかったため、正しい政策評価がされてきませんでした。

効率性の追求を成果を上げるのではなく、予算の削減を最大の目的としてしまったことで現場が疲弊してしまったことなどでうまくいきませんでした。

要約3

日本でも2018年をEPBM元年として、EPBMが取り入れ始めています。

日本のEPBMの特徴は、EPBMが統計改革から始まった影響もあり、政策の効果よりもデータ利活用と関連付けた取り組みが主流であったことにあります。

また、介入の効果を評価するために、資源投入から結果の発現までの一連の流れを図式化したロジックモデルの導入も行われています。

しかし、ロジックモデルはEPBMに求められるほどのエビデンスが必要でなく、仮説でしかありません。そのため、介入の効果の検証が十分になされていない状況です。

現状では、これまでの合理的な政策と同じく、介入と結果の因果関係を確かめきれていないため、政策評価の効果が薄く、一時のブームで終わってしまう可能性もあります。

エビデンスは多元的なものでであり、社会政策のような複雑な現象に対して、エビデンスを決定することは簡単ではありません。また、政策の決定には因果関係の証明だけでなく、色々な要素(因果関係にどれくらい普遍性があるか、エビデンスが倫理的、法的、社会的に適切かどうか)などを考慮することも重要なことです。

要約4

日本の政策評価がうまくいかない理由には理論と実践の乖離が挙げられます。膨大な手間をかけ、政策の合理性を示しても、有権者が興味を示さないため、政治家も官僚も徐々に興味を失ってしまうことも大きな要因です。

いくら精密なエビデンスがあっても、政策を運営する組織がうまく動いていなければ、EPBMは成立しません。政策の中身の合理化は努力によって合理化できますが、組織の合理化は簡単ではありません。

科学的な根拠に基づいた問題解決を導入しても組織の運用には限界があることを理解することが大事です。

これまで、合理的な組織を構築するには、マネジメントが重要とされてきましたが、アドミニストレーションと両輪であることを意識することも重要です。

科学的な手法であるマネジメントだけで、合理化を浸透させることはできません。

因果関係で政策の有効性は評価できても、その政策の目的が正しいかを評価し、組織として進んでいくには、その本質がアートであるアドミニストレーションの考え方が不可欠です。

情報化社会のデータ取得、利用のコストが低下したことで、EPBMへの注目は今後も増加していきます。

人間が完璧でない以上、完璧な政策も、完璧な政治も存在しません。過度な楽観と悲観を避け、政治を巻き込んだ試行錯誤によって少しづつ前進していくことが必要です。

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