化学26. アルケンの安定性

この本や記事で分かること

・アルケンのシス体とトランス体の安定性の違い

・シス体のほうが不安定な理由

ブテンのトランス体とシス体の安定性に差はあるのか

 アルケンの二重結合はπ結合があることで、回転できませんが、触媒を利用することで、シス体とトランス体の変換を起こすことが可能です。

 ブテンは強酸で処理することで、cis-2-ブテンとtrans-2-ブテンが変換しあい、しばらくすると反応が平衡状態に達します。

 平衡状態では、シス体のほうがトランス体よりも少なくなっており、シス体のほうが不安定なため、少なくなっていると考えられます。

なぜ、シス体のほうが不安定なのか

 シス体のほうが不安定になる理由は立体ひずみで説明が可能です。

 ブテンの2重結合をもつ炭素にはメチル基と水素が結合しています。

 トランス体ではメチル基同士が反対側に配置されており、シス体ではメチル基同士が同じ側に配置されています。

 メチル基は水素よりも嵩が高く、立体ひずみが大きいため、メチル基同士が同じ側にあると立体ひずみが大きくなりより不安定になります。

 そのため平衡状態に達した際には、より安定なトランス体が多く生成されることとなります。

アルケンの安定性はどのように測定可能なのか

 アルケンの安定性を測定するには、アルケンを触媒で変換する方法以外にも、燃焼熱を測る方法や水素化反応でアルカンにする際のエネルギーを測定する方法などがあります。

 燃焼熱とはその物質が酸素によって完全に燃えたときに放出される熱量(エネルギー)のことで、炭化水素の燃焼熱は物質が燃焼(酸素と反応)し、二酸化炭素と水になる際に発生する熱量のことです。

 cis-2-ブテンはtrans-2-ブテンよりも燃焼した際のエネルギーの放出がわずかに大きい=不安定であるといえます。

 また、アルケンは触媒の存在下で、水素ガスを付与すると二重結合が単結合になる特徴があります。この特徴を利用し、2-ブテンに水素を付加するとシス体のほうが多くのエネルギーが放出されます。

エチレンの水素をメチル基で置換すると安定性はどう変化するのか

 水素化によるエネルギーの放出の大きさによってアルケンの不安定さを表すことが可能になります。

 エチレン(CH2=CH2)は二重結合をもつ炭素にすべて水素が結合しています。

 この水素を1つずつメチル基に置き換えていき、それぞれの化合物同士の水素化熱を比較すると、水素をメチル基に置き換えた量が多いほど、熱量が少ない=安定であることが分かります。

 これは、sp2炭素とsp3炭素の結合はsp3炭素同士の結合に比べて強いためです。置換の多いほどsp2炭素とsp3炭素の割合が多くなるため、より安定になっていきます。

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