バターの植物油への置き換えによる健康効果 なぜ、植物油は身体によいのか?どんな植物油に置き換えると良いのか?

この記事で分かること

・バターと植物油の違いは何か:バターは飽和脂肪酸が豊富であり、植物油は不飽和脂肪酸が豊富であるという違いがあります。

・なぜ、飽和脂肪酸を避けたほうが良いのか:飽和脂肪酸は悪玉コレステロールの増加、炎症の原因などの悪影響があるため

バターの植物油への置き換えによる健康効果

 日常的に使用するバターを植物油に置き換えることで、死亡リスクが大幅に低下する可能性が示唆されたことがニュースになっています。

Plant oils reduce risk of dying early — while butter increases it
Swapping butter for olive oil is a simple step to cut the risk of premature death, including from cancer and heart disease

 ハーバード・メディカルスクールの研究チームは、30~50年にわたり22万1,000人以上の成人を追跡調査し、バターの摂取量が多い人は早期死亡のリスクが15%高く、一方でオリーブオイルや大豆油、キャノーラ油などの植物油を多く摂取する人は、全死亡リスクが16%低いことを発見しました。

バターの植物油への置き換えでなぜ健康リスクが減少するのか

 バターを植物油に置き換えることで健康リスクが減少する理由は、主に以下の点に関連しています。

1. 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

 バターは飽和脂肪酸が豊富で、これを摂りすぎると悪玉コレステロール(LDL)が増加する可能性があります。LDLコレステロールが高いと、動脈にプラークがたまり、動脈硬化が進行しやすくなります。これが心血管疾患(心臓病や脳卒中)のリスクを高める要因となります。

 一方で、植物油は不飽和脂肪酸(特に一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸)が多く含まれています。これらはHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす働きがあり、結果的に心血管疾患のリスクを低減することが知られています。

2. トランス脂肪酸の問題

  • バターを含む動物性脂肪にはトランス脂肪酸が含まれていることもありますが、これは人工的に水素添加された脂肪酸で、心血管疾患のリスクを大きく高めることが分かっています。植物油は、特に未精製のものはトランス脂肪酸がほとんど含まれていないため、バターを植物油に変えることでトランス脂肪酸の摂取を減らせます。

バターを植物油に置き換えることで、飽和脂肪酸が不飽和脂肪酸に置き換わり、これにより悪玉コレステロールの減少心血管疾患リスクの低減炎症の抑制など、健康に対する多くの利点があります。

植物油とは何か

 植物油とは、植物の種子、果実、胚芽などから抽出される油のことで、主に以下の種類があります。

1. 一般的な植物油

  • オリーブオイル(オリーブの果実由来、不飽和脂肪酸が豊富)
  • キャノーラ油(菜種油)(菜種由来、オメガ3脂肪酸を含む)
  • 大豆油(大豆由来、リノール酸が多い)
  • ひまわり油(ひまわりの種由来、ビタミンEが豊富)
  • コーン油(とうもろこし油)(とうもろこし胚芽由来、加熱に強い)
  • ごま油(ゴマの種子由来、風味が強く抗酸化作用あり)

2. 高級・特殊な植物油

  • アボカドオイル(アボカド由来、不飽和脂肪酸が豊富)
  • ココナッツオイル(ココナッツ由来、中鎖脂肪酸を多く含む)
  • パーム油(アブラヤシ由来、飽和脂肪が多く加工食品に使用)

3. 健康志向の植物油

チアシードオイル(オメガ3脂肪酸が豊富で酸化しやすい)

フラックスシードオイル(亜麻仁油)(オメガ3脂肪酸が多い)

植物油は主に不飽和脂肪酸が豊富で、動物性脂肪よりも健康に良いとされますが、種類によって栄養価や特性が異なります。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

 飽和脂肪酸不飽和脂肪酸は、脂質を構成する脂肪酸の種類で、化学構造や健康への影響が異なります。

1. 飽和脂肪酸

  • 化学構造: 炭素鎖に二重結合がなく、すべての炭素に水素が結びついている。
  • 主な食品: バター、ラード、牛脂、ココナッツオイル、パーム油
  • 特徴:
    • 常温で固体
    • 酸化しにくく保存性が高い
    • 過剰摂取するとLDL(悪玉)コレステロールを増やし、心血管疾患のリスクを高める可能性がある
  • 摂取の推奨: 健康のために摂取量を控えめにすることが推奨されています。

2. 不飽和脂肪酸

  • 化学構造: 炭素鎖に1つまたは複数の二重結合がある。
  • 種類:
    • 一価不飽和脂肪酸(オメガ9系): オリーブオイル、アボカド
    • 多価不飽和脂肪酸(オメガ3・オメガ6系): 青魚、亜麻仁油、大豆油
  • 特徴:
    • 常温で液体
    • 酸化しやすい(特にオメガ3系)
    • HDL(善玉)コレステロールを増やし、動脈硬化の予防に役立つ
  • 摂取の推奨: バランスの良い食事に取り入れることが推奨されています。

健康面では不飽和脂肪酸の方が推奨されますが、不飽和脂肪酸でも摂りすぎるとカロリー過多になるため、適量が大切です。

飽和脂肪酸はなぜ、健康に悪いのか

 飽和脂肪酸が健康に良くないとされる主な理由は、心血管疾患のリスクを高める可能性があるためです。

 1. 飽和脂肪酸が健康に悪いとされる理由

① LDL(悪玉)コレステロールを増やす

  • 飽和脂肪酸を多く摂ると、血中のLDLコレステロールが増加し、動脈にプラーク(脂肪の塊)が蓄積しやすくなります。
  • これが動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めると考えられています。

② 炎症を引き起こす可能性

  • 一部の研究では、飽和脂肪酸が慢性的な炎症を促し、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクを高める可能性があるとされています。
  • ただし、炎症の影響は食事全体のバランスにも関係します。

③ インスリン抵抗性を悪化させる可能性

 飽和脂肪酸が多い食事は、インスリンの働きを鈍らせ、2型糖尿病のリスクを高める可能性があるという研究もあります。

しかし、これは他の栄養素との組み合わせや個人差による影響も考えられます。

飽和脂肪酸は悪玉コレステロールの増加、炎症の原因などの悪影響があります。ただし、飽和脂肪酸を控えめにするのは基本的に推奨されるが、完全に排除する必要はありません。

バターから置き換えやすい植物油にはどのようなものがあるのか

 バターを植物油に変える場合、健康に良い影響を与える植物油を選ぶことが大切です。以下の植物油が特におすすめです。

1. オリーブオイル

  • 特徴:
    • オリーブオイルは**一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)**が豊富で、心血管疾患のリスクを減らすとされています。
    • 抗酸化物質(ポリフェノール)が含まれており、抗炎症作用や抗酸化作用があるとされています。
    • エクストラバージンオリーブオイルは、最も栄養価が高いです。
  • おすすめ理由:
    • 加熱に強い(ただし高温での長時間加熱は避けると良い)。
    • 風味が豊かでサラダドレッシングや料理にも使いやすい。

2. キャノーラ油(菜種油)

  • 特徴:
    • オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)を多く含み、心血管の健康に良いとされています。
    • 中程度の熱で使えるので、炒め物や焼き物にも適しています。
  • おすすめ理由:
    • 比較的価格が安価で、普段使いに便利。
    • 食品に中立的な味があり、他の食材の風味を邪魔しません。

3. アボカドオイル

  • 特徴:
    • 一価不飽和脂肪酸が豊富で、オリーブオイルに似た健康効果が期待できます。
    • ビタミンEやカロテノイドなどの栄養素が含まれ、抗酸化作用もあります。
    • 高温での調理にも適しており、加熱にも強いです。
  • おすすめ理由:
    • 特に高温調理(揚げ物やグリル)に適している。
    • マイルドでクリーミーな風味が特徴で、料理の幅が広がります。

4. ひまわり油

  • 特徴:
    • リノール酸(オメガ6脂肪酸)が多く含まれ、皮膚の健康や免疫系に良いとされています。
    • 加熱に強く、炒め物や揚げ物にも使いやすいです。
  • おすすめ理由:
    • 価格が手頃で、料理に使いやすい。
    • 抗酸化作用もあり、ビタミンEが豊富です。

植物油にも様々な種類があり、用途や特徴によっての使い分けが重要となります。

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