この記事で分かること
・アルミニウムの特徴:「軽さ」「強さ」「耐久性」「熱・電気の通しやすさ」などが金属としてのアルミニウムの特徴です。
・どんな製品に利用されるのか:輸送機器や建材などの大型製品から、包装材料のような小型製品まで幅広く利用されています。
・自動車での利用:車体やホイールなどの外装品からモーターの冷却部品、サスペンション、バッテリーパックなどの内部部品にも利用されています。
アルミニウム製品の需要予想
アルミ産業関連7団体で構成するアルミニウム調査会は先月31日、2025年度のアルミ製品総需要が前年度見込み比0・3%増の365万6500トンになるとの予想を発表しました。

アルミニウム価格の下落要因が中国の需要低迷の影響とされ、目標には届かないものの、前年比での増加が見込まれています。
アルミニウムはどんな特徴を持っているのか
アルミニウムの主な特徴は、以下の通りです。
1. 軽い(比重:約2.7)
- 鉄(比重7.8)に比べて約1/3の重さ。
- 軽量化が求められる自動車・航空機・輸送分野などで大活躍。
2. 錆びにくい(耐食性が高い)
- 空気中で表面に**酸化皮膜(アルミナ)**を自然に形成し、それが内部を保護。
- 海沿いなど過酷な環境でも長持ち。
3. 加工しやすい
- 展延性・可塑性が高く、薄く伸ばしたり、複雑な形に成形したりしやすい。
- 圧延・押出・鋳造・切削などさまざまな加工法に対応。
4. 熱・電気をよく通す
- 熱伝導性と電気伝導性が高い(電気銅の約60%程度)。
- ヒートシンクや電線、調理器具に適している。
5. 非磁性
- 磁石にくっつかないため、電子機器や医療機器周辺の材料として安全に使える。
6. リサイクル性が高い
- 何度でも再生利用可能で、再生時のエネルギー消費は新規製造の約5%。
- 環境に優しい素材としても注目されている。
7. 強度の調整が可能(合金化)
- 純アルミは柔らかめだが、銅・マグネシウム・シリコンなどとの合金化で強度アップが可能。
- 用途に応じた特性を持つ合金(A2017, A5052, A6061など)が多数ある。

アルミニウムは用途に応じて「軽さ」「強さ」「耐久性」「熱・電気の通しやすさ」などを活かせる、非常にバランスの良い金属です。
価格下落の理由は何か
アルミニウム価格の下落には、以下のような複数の要因が関係しています:
1. 中国の需要低迷
中国は世界最大のアルミニウム消費国です。最近は、不動産市場の低迷や製造業の伸び悩みなどにより、アルミニウムの需要が減少しています。この需要の減退が、世界市場に大きな影響を与えています。
2. 供給過剰
世界的にアルミニウムの供給が増えており、特に中国やインドでは生産が高水準で続いています。需要が鈍い中での過剰供給は、価格を押し下げる要因となっています。
3. 米国の関税政策
2025年2月、米国がアルミニウムに対して25%の輸入関税を再導入した影響で、市場は不安定になり、投資家心理が冷え込んでいます。これが短期的な価格下落圧力になっています。
4. 中国の輸出税還付廃止
2024年11月に中国がアルミ製品の輸出に対する税還付制度を廃止したことで、中国企業の輸出意欲が減退し、市場における流動性が変化しました。これにより価格調整が起こる局面もあります。
5. ドル高・金利高
アルミニウムなどの商品はドル建てで取引されるため、ドル高になると他国の購買力が低下し、需要が抑えられます。また、米国の高金利政策も投資資金のコモディティ市場からの引き上げを促しています。

最大の消費国である中国の需要減少やアメリカの関税政策への影響から価格の下落がみられています。
アルミニウムはどんな製品に使われているのか
アルミニウムは軽くて耐久性があり、腐食に強いという特性から、さまざまな製品に使われています。
1. 輸送機器
- 自動車:車体フレーム、エンジン部品、ホイールなど(軽量化による燃費改善)
- 航空機:機体の外板や構造部材(軽さと強度が重要)
- 電車・船舶:車体や部品に使用され、エネルギー効率向上に貢献
2. 建築・建設材料
- サッシや窓枠:軽くて腐食に強いため住宅やビルに多用
- 外装パネルや屋根材:美観と耐久性を両立
- 足場・構造材:工事現場や仮設施設などで利用
3. 電気・電子機器
- 送電線・電線:電気伝導率が高く、軽いため鉄塔などで使用
- スマートフォン・PCの筐体:放熱性・加工性に優れるため
- 冷却部品(ヒートシンク):発熱する電子部品の熱を逃がす
4. 包装材料
- アルミ缶(飲料・食品):軽くてリサイクルしやすい
- アルミホイル:食品保存や調理用
- ブリスターパック(医薬品など):密封性と加工性が良い
5. 家庭用品・その他
- 調理器具(鍋・フライパンなど):熱伝導率が良くて軽い
- 自転車・スポーツ用品:軽量で丈夫
- 家具やインテリア:モダンな見た目と加工のしやすさから人気

アルミニウムは軽さ、耐久性、耐腐食性の高さなどから輸送機器や建材などの大型製品から、包装材料のような小型製品まで幅広く利用されています。
EVではどのように利用されているのか
電気自動車(EV)では、アルミニウムの軽さ・強度・耐食性といった特性が非常に重宝されています。
1. 車体・シャシー
- EVはバッテリーが重いため、車体を軽量化することで航続距離を伸ばす必要があります。
- アルミニウムはスチールより約1/3の軽さでありながら十分な強度があるため、ボディパネル、ドア、フレーム、フード、ルーフなどに使われます。
- テスラやアウディ、ジャガーなどのEVでは、車体全体がアルミ製のモデルもあります。
2. バッテリーパックの構造材
- バッテリーを収める「バッテリーパックの筐体(ハウジング)」にアルミが使われます。
- 熱の管理(冷却)や衝撃保護が必要なため、熱伝導性と剛性に優れるアルミが適しています。
- 一部のメーカーではアルミ押出材や鋳造材でバッテリーフレームを製造しています。
3. モーター・インバータの冷却部品
- モーターやパワーエレクトロニクス(インバータなど)は発熱が激しいため、ヒートシンクや冷却プレートにアルミが使われます。
- 放熱性能の高さと軽さが活かされています。
4. ホイール・サスペンション部品
- 走行性能と燃費の両立のために、アルミホイールやサスペンションのアーム類にも多く使用。
- バネ下重量を減らすことで走行安定性や加速性能も向上します。
5. 内装・構造部材
- EVではデザイン性と軽量性の両立も重要なので、アルミニウムトリムや内装フレーム部材としても採用されています。
EVでのアルミ使用量の傾向
- 一般的なガソリン車に比べて、EVでは1.5〜2倍のアルミが使われると言われています。
- 例えば、内燃機関車では平均して150〜200kg前後なのに対し、EVでは300kg以上使われるケースもあります。
- 今回の需要増加も車関係での使用量増加を見込んだものです。

強度、軽さ、腐食耐性の高さから、車体やホイールなどの外装品からモーターの冷却部品、サスペンション、バッテリーパックなどの内部部品にも利用されています。
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