実質賃金がマイナスに 実質賃金とは何か?実質賃金のマイナスは何を意味するのか?

この記事で分かること

・実質賃金とは:物価の変動の影響を取り除いた、労働者が実際に受け取った賃金の価値を示すもので、労働者の購買力を示す指標です。

・実質賃金のマイナスの意味:購買力の低下、消費意欲の減退から景気後退につながります。つまり、生活の質を低下させ、経済全体の停滞を招く可能性があります。

実質賃金がマイナスに

 025年4月7日に発表された厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2月の実質賃金は前年同月比で1.2%減少し、2ヶ月連続のマイナスとなりました。

 https://www.jiji.com/jc/article?k=2025040700199&g=eco

 名目賃金は増加したものの、物価上昇に追いついておらず、実質賃金がマイナスとなっています。

実質賃金とは何か

 実質賃金(じっしつちんぎん)とは、物価の変動(インフレやデフレ)の影響を取り除いた、労働者が実際に受け取った賃金の価値を示すものです。

 私たちが普段目にする給与明細に書かれている金額は「名目賃金(めいもくちんぎん)」と呼ばれ、これは単なるお金の額です。

 しかし、物価が上昇すると、同じ金額のお金で買える物の量が減ってしまいます。つまり、名目賃金が増えても、物価の上昇がそれ以上に大きければ、私たちの生活は豊かになったとは言えません。

 そこで、名目賃金を物価指数で割ることで、物価の変動を考慮した実質的な賃金の価値を算出したものが実質賃金です。

計算方法の例

 例えば、あなたの名目賃金が昨年と比べて5%増えたとします。しかし、同じ期間に物価が3%上昇した場合、実質賃金の増加率は以下のようになります。

(名目賃金指数 ÷ 消費者物価指数) × 100

 実質賃金上昇率 ≒ 名目賃金上昇率 - 物価上昇率 この例では、5% – 3% = 2%となり、実質賃金は2%増えたことになります。

 もし、名目賃金が5%増えたとしても、物価が7%上昇していれば、実質賃金は5% – 7% = -2%となり、実質的には賃金が目減りしたことになります。

実質賃金の重要性

 実質賃金は、労働者の購買力を示す重要な指標です。実質賃金が上昇すれば、同じ労働時間でより多くの物やサービスを購入できるようになり、生活水準の向上につながります。逆に、実質賃金が下落すると、生活が苦しくなる可能性があります。

実質賃金とは、物価の変動(インフレやデフレ)の影響を取り除いた、労働者が実際に受け取った賃金の価値を示すもので、労働者の購買力を示す重要な指標です。

消費者物価指数とはなにか

 消費者物価指数(Consumer Price Index:CPI)とは、全国の世帯が購入する財(モノ)やサービス(役務)の価格の変動を総合的に示す指標です。

 簡単に言えば、「私たちの生活に関わるモノやサービスの値段が、平均的にどれくらい上がったり下がったりしているか」を表すものです。

消費者物価指数の仕組み

  • 固定された「買い物かご」: 消費者の家計支出の中で重要な割合を占める様々な品目(食料、衣料、住居、光熱費、医療、教育、娯楽など)を、あたかも一つの「買い物かご」に入れたと想定します。
  • 価格調査: これらの品目の価格を継続的に調査します。
  • 基準年との比較: ある時点の「買い物かご」の価格を、基準となる年の「買い物かご」の価格と比較して指数化します。基準年の指数は「100」となります。
  • 指数の解釈: 指数が100より大きければ物価が上昇(インフレ)、100より小さければ物価が下落(デフレ)していることを意味します。

消費者物価指数の種類

 総合指数の他に、価格変動の大きい生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)」や、生鮮食品とエネルギーを除いた「生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)」などが発表され、より長期的な物価の基調を把握するために利用されます。

消費者物価指数の重要性

 消費者物価指数は、私たちの経済や生活に様々な影響を与えるため、非常に重要な指標とされています。

  • 生活水準の把握: 物価の変動を通じて、私たちの実質的な購買力(同じ金額でどれだけのモノやサービスが買えるか)を知る手がかりとなります。
  • 経済政策の判断材料: 政府や日本銀行は、消費者物価指数の動向を金融政策や経済対策の判断材料として重視しています。インフレやデフレの状況に応じて、金利の調整などが行われます。
  • 賃金や年金の改定: 企業が賃金改定を行う際や、年金などの社会保障給付額を決定する際の参考にされることがあります。
  • 国際比較: 各国の消費者物価指数を比較することで、インフレ率などを国際的に比較することができます。
  • 経済予測: 消費者物価指数の動きは、今後の景気の動向を予測する上で重要な要素となります。

日本の消費者物価指数

 日本では、総務省統計局が毎月、「全国消費者物価指数」と「東京都区部消費者物価指数」などを公表しています。

 ニュースなどで「消費者物価指数が〇%上昇」と報道される場合、それは前年同月比や前月比で、物価がどの程度変化したかを示しています。

消費者物価指数とは全国の世帯が購入する財(モノ)やサービス(役務)の価格の変動を総合的に示す指標です。生活水準の把握、賃金や年金の改定、経済予測を行う際に重要な指標となります。

実質賃金の伸びが物価上昇を下回るとどうなるのか

 実質賃金の伸びが物価上昇を下回ると、私たちの生活には以下のような影響が出ます。

1. 実質的な購買力の低下

  • 同じ給料で買えるものが減る: 名目賃金(実際に受け取るお金の額)が増えたとしても、物価の上昇率がそれよりも高い場合、同じ金額で買えるモノやサービスの量が減ってしまいます。これは、お金の価値が実質的に下がったということです。
  • 生活水準の低下: 必要なものを購入するために、より多くのお金が必要になるため、家計が圧迫され、生活水準が低下する可能性があります。特に、収入の伸びが低い層や年金生活者にとっては深刻な問題となります。

2. 消費意欲の減退

  • 財布の紐が固くなる: 実質的な収入が減ると感じられるため、人々は無駄遣いを避け、必要なもの以外への支出を控えるようになります。
  • 将来への不安: 物価上昇が続く中で実質賃金が伸び悩むと、将来への不安感が増し、さらに消費を抑制する可能性があります。

3. 景気への悪影響

  • 消費の低迷: 消費者の購買意欲が低下すると、モノやサービスが売れなくなり、企業の売上や利益が減少します。
  • 企業の投資意欲の減退: 売上が伸び悩むと、企業は新たな設備投資や事業拡大に慎重になり、景気回復の足かせとなる可能性があります。
  • デフレスパイラルの懸念: 消費低迷がさらに物価を下げる圧力となり、企業の収益悪化、賃金低下、消費低迷という悪循環(デフレスパイラル)に陥るリスクが高まります。

4. 所得格差の拡大

  • 影響を受けやすい層: 低所得者層や年金生活者は、収入の伸びが限られているため、物価上昇の影響をより強く受けます。一方、資産を持っている層は、物価上昇によって資産価値が増加する可能性もあり、所得格差が拡大する可能性があります。

5. 政府や中央銀行への圧力

  • 経済対策の必要性: 実質賃金の低下とそれに伴う景気悪化を防ぐため、政府や中央銀行は、賃上げを促進する政策や、物価安定のための金融政策を求められるようになります。

実質賃金の伸びが物価上昇を下回る状況は、私たちの生活の質を低下させ、経済全体の停滞を招く可能性があります。そのため、政府や企業は、持続的な賃上げと物価の安定化を目指した政策や取り組みを進めることが重要となります。

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