ナトリウムイオン電池を用いた自動販売機 ナトリウムイオン電池とは何か?リチウムイオン電池との違いは何か?

この記事で分かること

・ナトリウムイオン電池とは:電荷を運ぶイオンとしナトリウムイオンを利用した次電池(充電可能な電池)のことです。

・リチウムイオン電池との違い:資源の豊富さ、安全性の高さなどのメリットがある反面、エネルギー密度が低い、実用化はこれからなどのデメリットがあります。

・リチウムの代替が必要な理由:リチウムは不可欠な素材ですが、地政学的リスク、価格リスク、環境リスクサステナビリティの課題などがあり、代替が望まれています。

ナトリウムイオン電池を用いた自動販売機

 アサヒ飲料は世界初のナトリウムイオン電池を用いた自動販売機を大阪万博で設置すると発表しています。

 https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/newswitch/business/newswitch-45299?utm_source=dnews&utm_medium=article&utm_campaign=contentsmatch1

 開催期間中、太陽光発電による電力をナトリウムイオン電池に蓄電し、外部電源を使わず、自然エネルギーのみで稼働する仕組みとなっています。

ナトリウムイオン電池とは何か

 ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池と同様に「二次電池(充電可能な電池)」の一種ですが、電荷を運ぶイオンとしナトリウムイオン(Na⁺)を使用します。

主な特徴

  • エネルギー密度はやや低い:リチウムよりは小さい。
  • 安価な材料:ナトリウムは海水中などに豊富に存在し、リチウムよりもコストが安い。
  • 安全性が高い:熱安定性に優れるため、過熱や発火のリスクが低い。

メリット

  • 資源が豊富で安価 ナトリウムは海水などに豊富に存在 → リチウムより低コスト・資源リスクが少ない
  • 安全性が高い 熱安定性に優れており、発火リスクが低い
  • 低温特性が良好 特定材料を使うとマイナス温度でも比較的性能を保つ

デメリット・課題

・エネルギー密度が低い リチウムよりイオンが重くて大きいため、同じサイズで蓄えられる電力量が 

 少ない

・体積が大きくなりがち 小型化にはまだ不利

・実用化はまだ初期段階 市場に出ている製品はまだ限られる(2020年代後半から本格化し始めた)

ナトリウムイオン電池は電荷を運ぶイオンとしナトリウムイオンを利用した次電池(充電可能な電池)のことです。

リチウムのようなレアメタルの依存を減らすことが可能というメリットがあります。

イオンが大きいとエネルギー密度が少なくなる理由は何か

 イオンが大きいとエネルギー密度が低くなる理由は、主に以下のような物理的・化学的な要因によるものです。


イオンサイズが大きいと、電極に入れにくい(挿入反応が制限される)

  • ナトリウムイオン(Na⁺)は 直径がリチウムイオン(Li⁺)より大きいです:
    • Li⁺:約 0.76 Å
    • Na⁺:約 1.02 Å
  • このため、電極材料の格子(結晶構造)に入りづらくなる
     → ナトリウムが入るスペースが少なくなる
     → 一度に蓄えられるイオンの数(=電気量)が減る
     → 容量が小さくなる

分子量が大きいと、同じ電荷あたりの質量が増える

  • エネルギー密度には「重量エネルギー密度(Wh/kg)」と「体積エネルギー密度(Wh/L)」の2種類があります。
  • ナトリウム(Na)の原子量は約 23、リチウム(Li)は約 6.9
    → 同じ1モルの電荷を運んでも、ナトリウムの方が重い

 → つまり

  • 同じエネルギーを貯めても、電池の質量あたりのエネルギーは少ない
  • 結果的に 重量エネルギー密度が低くなる

電圧が若干低くなることもある

  • 電池のエネルギー密度は、ざっくり言うと:エネルギー密度 ≈ 電圧 × 容量
  • ナトリウムはリチウムよりも標準電極電位が高いため(=還元されにくい)、理論的に出せる電圧も低めになる場合がある

イオン半径が大きいと電極に入りにくい、分子量が大きくなると質量当たりエネルギー密度が低くなすなどの理由からナトリウムイオンはエネルギー密度が低くなります。

なぜ、リチウムからの代替が重要なのか

 リチウムには資源リスクがあるため、代替となる技術が注目されています。これは、電池開発や持続可能な社会にとって重要なテーマの一つです。


リチウムの資源リスクとは?

 リチウムはリチウムイオン電池の主要原料ですが、これに依存しすぎると以下のようなリスクが生じます。


1. 資源の偏在性(地理的リスク)
  • 世界のリチウム資源は、限られた国に集中しています。 上位3か国備考チリ(塩湖)アタカマ塩原。低コストで抽出できるが水資源との競合が問題に。オーストラリア(鉱山)主にスポジュメン鉱から抽出。生産量は世界トップ。中国国内生産+海外鉱山の支配も進めている。リチウム化合物の製錬でも優位。

→ 地政学的な問題や輸出規制、国際紛争などが発生すると、供給不安が起きる


2. 価格変動リスク
  • リチウムは需要の急増(EV、蓄電池)により、ここ数年で価格が激しく上下。
  • 市場がまだ未成熟なので投機的な価格上昇・暴落が起こりやすい。

→ 価格不安定だと、電池やEVの価格にも影響し、普及が妨げられる。


3. 採掘と環境問題
  • 塩湖からのリチウム抽出では、大量の水を蒸発させて得るが、
    • 乾燥地での水資源の枯渇
    • 先住民族との対立
    • 生態系への影響
    が深刻な問題になっている。

→ サステナビリティの観点で批判が強まっている


4. リサイクル技術の遅れ
  • 使用済みリチウムイオン電池のリサイクル率はまだ低い
  • 技術的・経済的な課題があり、新たに採掘される資源に頼らざるを得ない状況が続いている

リチウムは不可欠な素材ですが、地政学的リスク価格リスク環境リスク

サステナビリティの課題などがあり、代替が望まれています。

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