グーグルのAI半導体開発 AI半導体に力を入れる理由は何か?AI半導体と普通の半導体の違いは?

この記事で分かること

・グーグルがAI半導体に力を入れる理由:AI技術の進化に伴うインフラ需要の増大と、自社サービスの効率化、そしてコスト削減などの理由からAI半導体に力を入れています。

・AI半導体と普通の半導体の違い:普通の半導体=万能な頭脳、AI半導体=計算に特化した筋肉集団のようなイメージです。

・エヌビディアが市場を独占できる理由:AIがブームになる前からの先行者優位、ハードとソフト両面の戦略、技術的力などが、独占の理由といえます。

グーグルのAI半導体開発

 グーグル(Google)は、AI半導体の開発において積極的な取り組みを進めています。​2025年4月9日に、第7世代のAIチップ「Ironwood」を発表しました。​

 https://www.reuters.com/technology/google-launches-new-ironwood-chip-speed-ai-applications-2025-04-09/?utm_source=chatgpt.com

 このチップは、チャットボットなどのリアルタイムAIアプリケーション向けに設計されており、前世代の「Trillium」と比較して、エネルギー効率が2倍に向上しています。​また、最大9,216個のチップをクラスタ化して運用することが可能で、大規模なAIモデルの推論処理に最適化されています。

 AI半導体市場での、エヌビディアの独占への対抗と思われるものです。

グーグルがAI半導体に力を入れる理由

グーグルがAI半導体の開発に注力する主な理由は、AI技術の進化に伴うインフラ需要の増大と、自社サービスの効率化、そしてコスト削減を目指しているからです。​


1. AI技術の進化に伴うインフラ需要の増大

 近年、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の利用が拡大し、膨大な計算リソースが必要とされています。

​ 従来の汎用プロセッサーでは、この需要に応えるのが難しくなってきました。​そのため、グーグルはAI専用の半導体であるTPU(Tensor Processing Unit)を開発し、AI処理に特化したインフラを構築しています。 ​


2. 自社サービスの効率化

 グーグルは、YouTubeや検索エンジンなど、多数のAIを活用したサービスを展開しています。​これらのサービスの品質向上と効率化を図るため、AI専用チップの導入が不可欠です。

​ 特に、TPUは音声認識や画像処理、自然言語処理など、幅広いAIタスクに対応しており、サービス全体のパフォーマンス向上に寄与しています。 ​


3. コスト削減と独自性の確保

 外部の半導体ベンダーに依存せず、独自のチップを開発することで、長期的なコスト削減が可能となります。

​ 例えば、グーグルは英アームと提携して新CPU「Axion(アクシオン)」を導入し、外部業者への依存を減らすことを狙っています。​これにより、インテルやエヌビディアといったパートナーに対抗し、独自性を確保しています。

AI技術の進化に伴うインフラ需要の増大と、自社サービスの効率化、そしてコスト削減などの理由からAI半導体に力を入れています。

AI半導体と普通の半導体の違いは何か

 AI半導体と普通の(汎用)半導体の違いは、以下のように、目的・構造・処理方法にあります。


■ 1. 目的の違い

項目普通の半導体(CPUなど)AI半導体(TPU・GPUなど)
主な目的汎用的な処理(OSやアプリの実行など)AIの学習や推論に特化した高速演算
用途パソコン、スマホ、サーバなど幅広いAI開発、画像認識、自然言語処理など

■ 2. 構造・処理の違い

項目普通の半導体AI半導体
構造少数の高性能コアで直列処理多数の小さなコアで並列処理
得意な処理複雑な判断や制御行列演算、大量のデータを一気に処理
IntelのCPU、ARMプロセッサNVIDIAのGPU、GoogleのTPU、AppleのNeural Engine

■ 3. AI半導体の種類

  • GPU(Graphics Processing Unit)
    映像処理用に開発 → 並列処理が得意 → AIにも転用されるように。
  • TPU(Tensor Processing Unit)
    GoogleがAI専用に開発。ディープラーニングの「行列演算」に最適化。
  • NPU(Neural Processing Unit)
    モバイル向けAI処理用。スマホの顔認証や音声アシスタントなどに使われる。

ざっくりいうと、普通の半導体=万能な頭脳
AI半導体=計算に特化した筋肉集団のようなイメージです。

エヌビディアが独占できている理由は何か

 NVIDIA(エヌビディア)がAI半導体市場を“ほぼ独占”できている理由は、単に「いいチップを作ったから」だけじゃなく、ハードとソフト両面の戦略先行投資のタイミングの良さにあります。詳しく見ていきましょう。


■ 1. GPUの構造がAIにピッタリだった

  • 元々はゲーム用の画像処理チップ(GPU)を開発。
  • GPUは並列計算に強く、AI(特にディープラーニング)の行列演算に最適。
  • 2012年頃からAI研究者が注目 → TensorFlowなどと連携して急成長。

■ 2. CUDAというソフトウェア基盤を持っていた

  • NVIDIA独自の開発環境 CUDA(クーダ) を提供。
  • AI研究者・開発者は、GPUに最適化されたコードを書ける。
  • これにより「NVIDIAじゃないと動かない」「NVIDIAに最適化したい」という流れに。
  • 他社(AMDなど)は類似の基盤がなく、ここで大きな差がついた。

■ 3. AIブーム前から地道に投資していた

  • AI需要が爆発する前(2010年代前半)から、GPU + AIに賭けていた。
  • 他社が手を出していなかったタイミングで研究者コミュニティとの信頼関係を構築。

■ 4. 垂直統合に近いエコシステムを構築

  • チップ(GPU)だけでなく:
    • ソフトウェア(CUDA、cuDNN)
    • クラウド向けAIサーバ(DGX)
    • AI専用スーパークラスタ(NVIDIA H100×数千台)
    • 開発者コミュニティ・学習リソース
  • → 他社がマネできない「一気通貫」型の強み

■ 5. 競合が追いつけない「H100」などの性能差

  • 最新のH100(Hopper)は、大規模AIモデルに特化した性能。
  • トレーニング速度、エネルギー効率、帯域幅、どれも高水準。
  • ChatGPTを含む多くのLLMがH100で学習・推論されている。

AIがブームになる前からの先行者優位、ハードとソフト両面の戦略、技術的力などが、独占の理由といえます。

映像処理で並列処理が必要な理由は何か

 映像処理で並列処理(Parallel Processing)が必要なのは、ざっくり言えば「大量のピクセルを同時に処理しないと追いつかないから」です。

■ 1. 映像は「超・大量のデータ」のかたまり

たとえば、フルHD(1920×1080)の1枚の画像=約200万画素(ピクセル)あります。

  • 各ピクセルにはR(赤)G(緑)B(青)の値がある。
  • 1秒間に30フレーム出すなら…
    毎秒6000万ピクセル分の処理が必要!

1個ずつ順番に処理(直列処理)していたら、間に合いません。


■ 2. ピクセルごとの処理は「独立」してる

  • 1つのピクセルの色を変える処理(フィルタ、エフェクトなど)は、基本的に他のピクセルと関係ない
  • そのため「一気にまとめて」処理できる=並列処理に超向いています、

■ 3. GPUはそのために作られた

  • GPU(Graphics Processing Unit)は、数百〜数万の小さな演算ユニットを持っていて、それぞれが同時にピクセルを処理。
  • 映像処理=まさにGPUの本領発揮となります。

■ 4. AIとも相性が良い理由

  • AI(特にニューラルネット)の処理も、大量の数値(重みや行列)を一気に計算します。
  • 映像と同じように「大量・同時・単純処理」が必要です。
  • だからGPUがAIでも大活躍しています。

映像処理は「大量かつ独立な処理の集合体」だから、並列処理が最強に向いています。
そのためにGPUは誕生し、AIでもそのパワーが応用されています。

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