この記事で分かること
・ミカンの栽培に適した気候とは:ミカンは温暖で日照時間が長く、程よい降水量である土地での栽培が最適です。
・高温で生産が難しくなる理由:気温が上がりすぎると、浮皮や着色不良、糖度の減少などの品質の低下や・収量・管理コストの増加などの悪影響が出てきます。
・着色不良は起きる原因:夜温の高さは着色不良の要因の一つで、特に夜温が20℃以上で続くと、カロテノイド(色素)を合成する働きが弱くなり色づきが悪くなる傾向があります。
ミカンの生産が不可能になる可能性
気候変動の影響により、日本の農業における作物の適地が大きく変化しています。特にミカン(温州ミカン)とアボカドに関する研究が注目されています。
https://x.com/nikkei_tech/status/1911156288278732999
このままの状況が続けば、今世紀末には日本でミカンが生産できなくなる可能性もあります。
ミカンの栽培に適した気候はどのようなものか
ミカン(特に温州ミカン)の栽培に適した気候には以下の特徴があります:
1. 年間平均気温:13〜17℃
- 15℃前後が最も適しており、冬が比較的温暖な地域が理想です。
2. 冬の最低気温:-5℃以上
- -3℃以下が続くと樹がダメージを受けるため、霜や凍結のリスクが少ない地域が望ましいです。
3. 降水量:年1,000〜2,000mm
- 湿度が高すぎると病害虫が増えるため、水はけの良い場所での栽培が推奨されます。
- 開花〜収穫期(4月〜12月)に極端な乾燥や大雨が少ないのが理想。
4. 日照時間が長い
- よく日が当たる斜面や南向きの畑など、十分な日照が確保できる場所が必要です。
- 特に果実の着色と糖度向上に日照が重要です。
5. 風が強すぎない
- 台風や季節風による被害を避けるため、防風林や風よけが整っている場所が望まれます。
日本では特に紀伊半島(和歌山)、四国南部、九州南部、静岡県の一部などがミカンの好適地とされてきましたが、近年の温暖化でこれらの地域が暑くなりすぎたり、浮皮や着色不良が増えてきているというのが問題になっています。

ミカンは温暖で日照時間が長く、ほどよい降水量である土地での栽培が最適です。
なぜ、気温が高いと栽培しにくくなるのか
ミカンは温暖な気候を好みますが、以下のような理由から気温が高すぎると逆に栽培に悪影響が出ることがあります。
1. 浮皮(うきかわ)障害が増える
- 高温だと果肉の生育が早まりすぎて果皮とのバランスが崩れ、皮が浮いてしまう現象が起きやすくなります。
- 浮皮になると、見た目や食感が悪くなり、商品価値が下がる。
2. 着色不良
- ミカンの果皮は、朝晩の寒暖差があることでオレンジ色に色づくんだけど、気温が高すぎると色づきが遅れたり薄くなったりする。
- 特に夜温が高いと着色が進みにくい。
3. 糖度が下がる・酸が抜けすぎる
- 高温によって呼吸量が増えると、果実中の糖が使われてしまい、糖度が下がることがある。
- また、酸も早く抜けるため、味がぼやけた感じ(パンチがない)になりやすい。
4. 果実が小さくなったり、落果する
- 異常高温や乾燥が続くと、生理障害や水ストレスが原因で果実が大きく育たなかったり、落ちてしまうことも。
5. 病害虫の発生が増える
- 高温多湿な環境では、カイガラムシや病気(カビなど)が増えやすくなるため、防除コストや手間も増加。

ミカンは温暖な気候での栽培に適していますが、気温が上がりすぎると、浮皮や着色不良、糖度の減少などの品質の低下や・収量・管理コストの増加などの悪影響が出てきてしまいます。
着色不良が起こる理由は何か
着色不良(ミカンの皮がきれいにオレンジ色に染まらない現象)が起こる理由は、主に温度と光、栄養バランスに関係しています。詳しく見ていきましょう:
【1】夜温(夜の気温)が高すぎる
- 着色には日中と夜の寒暖差が大きな役割を果たします。
- 夜も気温が高いと、果皮にカロテノイド(色素)を合成する働きが弱くなり、色づきが進まない。
- 特に夜温が20℃以上で続くと色づきが悪くなる傾向がある。
【2】日照不足
- 十分な光が当たらないと、色素の生成が抑えられる。
- 樹が茂りすぎて内部の果実に日が当たらなかったり、曇天や雨が多い年も着色が悪くなる。
【3】窒素肥料の与えすぎ
- 窒素が多すぎると、葉が繁茂しすぎたり、果実が青々として着色が遅れる。
- 窒素過多は「葉ばかり元気で果実の成熟が進まない」典型例。
【4】乾燥や水分ストレス
- 着色期に水分が極端に不足すると、光合成や色素合成が抑えられて着色不良に。
- 逆に水の与えすぎも果皮が厚くなったりして色づきが悪くなることも。
【5】品種による特性
- 同じ温州ミカンでも、極早生系は特に気温の影響を受けやすい。
- 早生品種ほど、高温や曇天に弱く、色づきにくい傾向があります。

着色不良は主に夜温が高い + 日照不足 + 肥料バランスの乱れといった要素で発生しやすくなります。
夜の気温が高いと色素合成が少なくなる理由
ミカンの果皮の着色に関わるカロテノイド(主にβ-クリプトキサンチンやβ-カロテンなど)の合成じは、以下のような理由で夜温が高いと進みにくくなります。
夜温が高いとカロテノイドが合成されにくくなる主な理由
呼吸が活発になりすぎてエネルギーを消費してしまう
植物は夜間も呼吸をしており、温度が高いと呼吸速度が上がります。このとき、カロテノイド合成に必要な炭素源(糖など)やエネルギー(ATP)が、呼吸によって消費されてしまう。
つまり「色素を作るための材料とエネルギーが足りなくなる」。
酵素活性のバランスが崩れる
カロテノイドの合成には、特定の酵素(例:ファイトエン・シンターゼなど)が必要で、これらの酵素は、適温(多くは20℃以下)で最も活性が高く、夜温が高すぎると活性が低下したり、逆に分解されたりする。
酵素がうまく働かない → 色素が合成されにくい。
着色スイッチ(色づきを始めるトリガー)が入らない
ミカンの着色は、「昼間暖かく、夜涼しい」という気温差によってスイッチが入ります。
夜温が高いと寒暖差が小さくなり、植物が「そろそろ熟すぞ」と判断しにくくなる。
エチレンの関与が鈍る可能性
一部の研究では、エチレン(植物ホルモン)が着色に関与しているとされており、夜温が高いとその合成や作用が乱れる可能性もあります。

夜も暑い → 呼吸が増える・酵素が鈍る・着色のきっかけが入らない → 色素が合成されず、青みが残る or 色が薄いという結果になってしまいます。
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