この記事で分かること
- AIへの支援:研究開発だけでなく、研究開発や実証フィールドの提供、スタートアップへの支援、人材育成などを支援しています。
- 量子技術への支援:基礎研究や技術実装・製品開発、人材育成、拠点西部などの支援を行っています。
科学技術予算が初めて5兆円を突破
2025年度の日本の科学技術予算(正確には「科学技術・イノベーション関連予算」)が初めて5兆円を超えたことがニュースになっています。
https://sci-news.co.jp/topics/10077/
背景としては、日本が国際競争力を高めるために、科学技術とイノベーションへの投資を加速する必要があると考えられているためです。また、研究者の育成や国際連携、スタートアップ支援にもかなり力を入れる方針です。
前回の記事では、支援の仕組みや半導体の支援について解説しましたが、今回はAIや量子技術に関する支援の中身について解説します。
AIへの支援の中身は?
人工知能(AI)分野は、日本の科学技術・産業政策において、今もっとも注力されている戦略分野のひとつであり、以下のような支援が行われています。
① 研究開発支援(大学・企業向け)
- JST(科学技術振興機構)やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて、AI研究プロジェクトに助成。
- 【代表的な事業】
- ムーンショット型研究開発制度
- 例:「AIとロボットが共生する未来社会の実現」など
- CREST・さきがけ(JST)
- 基礎研究や先端的AIアルゴリズム開発に支援
- NEDOのAIシステム共同研究事業
- 実用化を目指したAI応用技術の研究に対して補助金
- ムーンショット型研究開発制度
金額感:数億〜数十億円規模のプロジェクトも多数。企業+大学の共同提案が多い。
② 社会実装・産業応用支援
- 企業がAI技術を活用したサービス・製品を開発する場合に、補助金や実証フィールドを提供。
- 【例】
- スマートシティでのAI交通制御実験
- 医療分野(画像診断AIなど)の導入補助
- 農業・製造業など伝統産業のAI導入支援(スマート農業/工場AI化)
- 「デジタル田園都市国家構想」でもAIが重要な要素に
特徴:技術開発だけでなく、自治体や企業との「共創」にも助成が出る
③ スタートアップ支援(Deep Tech AIベンチャー)
- J-Startup、Deep Tech Challenge、NEDO STS(シード期助成)などを通じて、AIスタートアップに資金・支援を提供。
- 【代表例】
- Cinnamon(文書解析AI)
- ABEJA(流通・画像認識AI)
- Telexistence(ロボット×AI)
- PKSHA Technology(自然言語処理・対話AI)
特徴:資金支援だけでなく、海外展開支援・メンタリングなど総合的にサポート。
④ AI人材育成事業
- AI技術者や研究者の育成のため、大学や高専への教育予算を投入。
- 【具体例】
- AI戦略2019→2025年までに高校・大学・社会人を含め「AI基礎力の底上げ」を掲げる
- DX人材育成支援(企業研修への補助など)
- AI高度専門人材のための大学院支援(東大、東北大、奈良先端大など)
特徴:大学のAIコース新設や産学連携講座に国費が出ている。
どれくらいお金が出てるの?
2025年度(令和7年度)の科学技術予算案では、AI関連予算だけでも、約3,000〜4,000億円規模(推定)にのぼると見られています。これは量子技術と並ぶ規模です。

AIに対する支援としてはいかのようなものがあげられます。
大学・研究機関:JST(科学技術振興機構)やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じて、AI研究プロジェクトに助成。
社会実装:AI技術を活用したサービス・製品を開発する場合に、補助金や実証フィールドを提供。
・スタートアップ:資金支援だけでなく、海外展開支援・メンタリングなど総合的にサポート。
人材育成:大学や高専への教育予算を投入しています。
量子技術への支援の中身は?
量子技術は日本政府がここ数年で最も注目し、集中的に支援している「戦略技術」の一つです。2025年度の科学技術予算でも、量子分野は数千億円規模の支援対象となっています。
1. 主な支援分野(量子技術の中でも特に注目されているのは)
分野 | 内容例 |
---|---|
量子コンピュータ | 超高速な計算処理。医薬・素材・AIに応用 |
量子通信 | ハッキング不可能な通信(量子暗号など) |
量子センサー | 超高精度な測定装置(測地・医療・自動運転など) |
量子材料 | 超伝導・量子ドット・スピントロニクスなど |
2. 代表的な国家プロジェクト・支援策
量子技術イノベーション戦略(内閣府・文部科学省・経産省が連携)
- 2020年に策定、2022年・2023年にアップデート。
- 「量子国家プロジェクト」として、研究・人材・産業化まで一体的に支援。
▶ Q-LEAP(内閣府)
- 大学・研究機関を中心にした基礎~応用研究プログラム
- 超伝導量子ビットや光量子技術などに助成
- 東京大学・大阪大学・東北大学などが中核
予算例:数十億円規模のプロジェクトも複数
▶ ムーンショット型研究開発事業(JST)
- 目標6:「2050年までに汎用量子コンピュータを実現する」
- 大型予算(数百億円単位)で、富士通・理研・東大などが参加
▶ 経済産業省:量子産業拠点形成支援
- 地方拠点(量子コンピューティング拠点など)を整備
- 民間企業(NEC、日立、富士通など)との連携強化
- 「量子版スタートアップ支援」も進行中
3. スタートアップ・民間企業への支援
近年、日本でも量子技術をベースにしたスタートアップが増えており、それらに対する支援も強化されています。
代表的な企業例:
- QunaSys(量子計算による材料開発)
→ NEDOの研究費支援/J-Startup選定企業 - Fixstars(量子アルゴリズム開発)
→ 大企業・大学と連携しながら応用研究を推進 - Groovenauts、AquaQuantumなども参入中
▶ 経済産業省やNEDOが研究開発や事業化支援を実施
▶ 量子スタートアップを対象としたファンド創設も議論中(2025年)
4. 人材育成支援
- 高校~大学~ポスドク向けまで、一貫した量子教育プログラムがスタート。
- 量子専門人材を年間1000人規模で育成する目標あり。
- 量子技術コンソーシアム(QSTC)や産学連携の講座が複数設立。
例:東大・慶應・大阪大などで量子専攻/講座が拡充
5. 全体の予算規模(参考:2025年度)
- 推定で「量子関連全体」にはおおよそ: ▶ 約2,000〜3,000億円規模の予算が投入される見込み(前年より増加)
- 国際連携(アメリカ・EU・インド・オーストラリア等)も強化中。

量子技術では、
大学・研究機関:基礎・応用研究(Q-LEAP、ムーンショットなど)
企業・スタートアップ:技術実装・製品開発(経産省/NEDO)
人材育成:学校教育・産学連携プログラム
拠点整備:地方に量子研究・産業拠点を設置
など幅広い支援が行われています。
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