科学技術予算が初めて5兆円を突破 バイオテクノロジーや宇宙開発への支援の中身は?

この記事で分かること

バイオテクノロジーへの支援:研究開発や産業化の加速を目的としており、特に創薬、再生医療、環境対応型製造技術などの分野での革新が期待されています。

宇宙開発への支援:官民一体による技術革新やビジネス創出が期待されています。​特に、スタートアップや非宇宙分野の企業の参画が進むことで、宇宙産業の多様化と発展が期待されます。​

科学技術予算が初めて5兆円を突破

 2025年度の日本の科学技術予算(正確には「科学技術・イノベーション関連予算」)が初めて5兆円を超えたことがニュースになっています。

 https://sci-news.co.jp/topics/10077/

 背景としては、日本が国際競争力を高めるために、科学技術とイノベーションへの投資を加速する必要があると考えられているためです。また、研究者の育成や国際連携、スタートアップ支援にもかなり力を入れる方針です。

 前回の記事では、AIや量子技術について解説しましたが、今回はバイオテクノロジーに関する支援の中身について解説します。

バイオテクノロジーへはどのような支援があるのか

 ​2025年度の日本におけるバイオテクノロジー分野への支援は、政府の科学技術予算を通じて多岐にわたる取り組みが進められています。以下に主要な支援策をまとめました。​


1. スマートバイオ創薬等研究支援事業(AMED)

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)は、2025年度から5か年計画で「スマートバイオ創薬等研究支援事業」を実施しています。​

 この事業は、抗体、ペプチド、核酸、遺伝子治療、細胞治療などの高機能バイオ医薬品の創出を目指し、基盤技術や創薬周辺技術の研究開発を支援します。

​ 具体的には、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)、効果・安全性評価、イメージング技術などの要素技術同士の組み合わせや、疾患応用研究との統合を促進し、臨床応用への迅速な移行を図っています。 ​


2. バイオものづくり革命推進事業(NEDO)

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2022年度から2032年度までの長期にわたり、「バイオものづくり革命推進事業」を実施しています。​

 この事業は、未利用資源の収集・資源化、産業用微生物の開発・育種、微生物改変プラットフォーム技術の高度化、目的物質の製造技術の開発・実証、製品の社会実装のための評価手法の開発など、バイオものづくりのバリューチェーン構築に係る技術開発を支援します。

​ 特に、環境負荷の低減やカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが強調されています。


3. 統合化推進プログラム(JST)

 科学技術振興機構(JST)は、ライフサイエンス分野における統合データベースの開発を目的とした「統合化推進プログラム」を実施しています。​

 2025年度の公募では、「育成型」として新たなデータベースの構築を目指す萌芽的な研究開発を支援対象とし、研究開発期間は3年以内、1年あたりの研究費は1,000万円程度を予定しています。​

 このプログラムは、公共データの利活用や国際的なオープンサイエンスへの貢献を目指しています。 ​


バイオ政策のアクションプラン(経済産業省)

 経済産業省は、「バイオエコノミー戦略」や「ワクチン戦略」などを踏まえた「バイオ政策のアクションプラン」を策定し、バイオものづくりや医療分野でのバイオテクノロジーの産業化を推進しています。​

 具体的には、創薬ベンチャーエコシステムの構築、ワクチン・バイオ医薬品の製造拠点の整備、再生医療・遺伝子治療の産業化促進などが含まれています。

バイオテクノロジー分野の研究開発や産業化の加速を目的としており、特に創薬、再生医療、環境対応型製造技術などの分野での革新が期待されています。

宇宙開発への支援

 ​2025年度の日本における宇宙開発への支援は、官民連携を強化し、技術開発やビジネス創出を加速する方向で進められています。以下に主な支援策をまとめました。​


1. 宇宙戦略基金(10年間で1兆円規模)

 2023年11月に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対して10年間で1兆円規模の基金が設置されました。

​ この基金は、輸送、衛星、探査などの分野における技術開発や社会課題解決を目的としたプロジェクトを支援します。​特に、民間企業や大学などの主体性を重視し、JAXAは伴走支援を行います。​


2. 宇宙技術戦略と重点技術の支援

 2025年度には、「宇宙技術戦略」が策定され、衛星、宇宙科学・探査、宇宙輸送の3分野で52の重要技術が特定されました。​

 これらの技術開発は、宇宙戦略基金をはじめとする各種プログラムで支援されます。

​ 例えば、「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」では、ロケット、月面ランダー、衛星リモートセンシングなどの分野でスタートアップの技術開発が支援されています 。​


3. スタートアップ支援と民間資金の活用

 民間企業や大学の宇宙関連技術開発を支援するため、JAXAには100億円程度の補助金が交付される予定です。

​ また、JAXA法の改正により、民間企業や大学への長期的な資金支援が可能となるよう検討が進められています


4. 宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)

 このプログラムは、月面開発や衛星の基盤技術の強化を目的とした研究開発プロジェクトを推進します。​官民連携により、技術の実証や商業化を加速することが期待されています 。​


5. 民間企業の参画促進とビジョンの共有

 内閣府宇宙開発戦略推進事務局は、民間企業の参画を促進するため、「宇宙産業ビジョン」を策定しました。​

 このビジョンでは、39ページ中44回「ベンチャー」という言葉が使用されており、民間企業の参画を積極的に促しています。

​ また、民間スポンサー企業と連携したアイデアコンテスト「S-Booster」などを通じて、宇宙ビジネスの活性化を図っています 。​


日本の宇宙開発は官民一体となった取り組みが進められ、技術革新やビジネス創出が期待されています。​特に、スタートアップや非宇宙分野の企業の参画が進むことで、宇宙産業の多様化と発展が期待されます。​

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