ポリビニルアルコールの値上げ ポリビニルアルコールとは何か?どのような利用法があるのか?

この記事で分かること

ポリビニルアルコールとは:水に溶ける合成樹脂で、酢酸ビニルというモノマー(単量体)を重合して作ったポリ酢酸ビニルを、アルコール処理(けん化)して作られます。

特徴と用途:水溶性である、薄膜を簡単に作れる、酸素や香りを通しにくいなどの特長から洗剤の水溶性フィルムや食品包装などの利用されています。

値上げの背景:原料・エネルギー・物流コストが総合的に上がっていて、企業努力では吸収しきれず、安定供給を維持するために値上げに踏み切っています。

ポリビニルアルコールの値上げ

 ​クラレは、2025年4月23日出荷分より、ポリビニルアルコール(PVOH)樹脂製品の価格改定を実施しました。

 https://www.kuraray.co.jp/news/2025/250422

 価格改定の背景には、原材料やエネルギーコストの上昇があり、これらのコスト増加が自助努力による吸収の範囲を超えたため、採算改善と安定供給の維持を目的として実施されました。

ポリビニルアルコール樹脂とは何か

 ポリビニルアルコール(PVOHまたはPVA)は、水に溶ける性質を持った合成樹脂です。
 もともとは酢酸ビニルというモノマー(単量体)を重合して作ったポリ酢酸ビニルを、アルコール処理(けん化)して作られます。


ポリビニルアルコールの主な特徴

  • 水溶性:常温の水に溶ける(温度によって溶けやすさが変わる)
  • フィルム形成性が高い:薄膜を簡単に作れる
  • 接着性が良い:紙や繊維にくっつきやすい
  • 耐油性・耐溶剤性:油や多くの有機溶剤に対して安定
  • 生分解性:自然環境中で分解されやすい(環境負荷が少ない)
  • ガスバリア性:酸素や香りを通しにくい(包装材料に向いている)

主な用途

  • 洗剤の水溶性フィルム(ジェルボール型洗剤)
  • 紙加工用の接着剤(紙コップや段ボール)
  • 繊維の糊付け剤(織物製造時)
  • 建築用のセメント混和材(強度向上やクラック防止)
  • 医薬品・化粧品(錠剤コーティング、フェイスマスクなど)
  • 食品包装(酸素を通さないパッケージ)

ポリビニルアルコールは水に溶ける合成樹脂で、酢酸ビニルというモノマー(単量体)を重合して作ったポリ酢酸ビニルを、アルコール処理(けん化)して作られます。

値上げの理由は何か

 ポリビニルアルコールの値上げの主な理由は以下のようなものがあります。

1. 原材料コストの上昇

  ポリビニルアルコールは、もともと「酢酸ビニル」という原料から作られており、酢酸ビニルモノマー(VAM)の価格が上がってるため。酢酸やエチレンといった基礎原料も影響していて、全体的にコストが高騰しています。

2. エネルギーコストの増加

 製造には多くの熱エネルギー(蒸気、電力など)が必要となり、電気代、燃料代が大きく上昇しているため、これも製造コストを押し上げています。

3. ロジスティクス(物流)コストの増加

 原材料を運ぶコスト、製品を出荷するコストも上がっています。特に国際物流(船便など)は、ここ数年で値上がり傾向が続いている。

原料・エネルギー・物流コストが総合的に上がっていて、企業努力では吸収しきれず、安定供給を維持するために値上げに踏み切っています。

なぜ洗剤の水溶性フイルムに使われるのか

 ポリビニルアルコールは以下のような特徴から洗剤の水溶性フィルムに利用されています。

1. 水に溶ける性質(高い水溶性)

 VOHは水に入れるとすぐ溶けるので、洗剤を包んでおいてもすぐに溶かすことができます。
温水でも冷水でもちゃんと溶けるタイプが調整が可能です。

2. 安定して中身を保護できる

 乾燥状態では強いフィルムになるため、液体洗剤とかジェルタイプ洗剤をしっかり閉じ込めて、漏れない・乾かないようにできます。

3. 強力なバリア性

 ポリビニルアルコールは、酸素や香りを通しにくい性質がある。
→ 洗剤の成分(特に香料や酵素)を守るのに最適。

4. 生分解性がある(環境にやさしい)

 水に溶けた後、自然界で微生物によって分解されやすい。→ 「プラスチックごみ問題」への対応も意識されています。

5. 加工性が良い

 PVOHはフィルムに加工しやすく、厚みや溶解スピードを細かく調整できます。
→ 「早く溶けるフィルム」「遅く溶けるフィルム」など製品ごとにカスタマイズ可能。

しっかりと包んで、使うときにすぐ溶けて、中身を守って、さらに環境に配慮できる」
という万能な性質があるため、洗剤のカプセル型製品(ジェルボール型)に適しています。

なぜ、酸素を通さないのか

 ポリビニルアルコール(PVOH)が「酸素を通しにくい(=高いガスバリア性)」理由には、分子レベルの構造が深く関係しています。

PVOHの「酸素を通しにくい性質」は、主以下の2つの特徴に由来します。

① 分子同士がギュッと詰まっている

  • PVOHは分子同士の間に水素結合(H-結合)が多数あります。
  • そのおかげで、ポリマー鎖がしっかり密に並ぶ=隙間が少ない。
    → 酸素分子がすり抜ける余地がほとんどない!

② 結晶性が高い

  • PVOHは結晶性ポリマーで、規則正しい構造部分が多い。
  • 結晶部分では分子が固く整列していて、酸素分子が通れない。
    → アモルファス(ランダム)な構造よりも断然バリア性が高い。


 PVOHの「高密度な分子配列」と「強い分子間結合」が、酸素などの小さい分子でさえ通しにくくしていま。 


ポリビニルアルコールの欠点

 水に濡れると、PVOHは水分を吸って柔らかくなってしまいます。(吸湿性が高い)。その結果、分子同士の結びつきがゆるんで酸素が通りやすくなることもあります。 

 乾燥状態では高性能なガスバリア材ですが、湿度が高い性能が落ちるため、食品包装で使う場合は「PVOH+他のバリア材をラミネートして湿気を防ぐ」などの工夫がされることもあります。

ポリビニルアルコールは「高密度な分子配列」と「強い分子間結合」を持っていることで、酸素を通りにくくしています。

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