この記事で分かること
- リサイクル助剤とは:プラスチックなどの材料をリサイクルする際に、品質や処理性を改善するために加える添加剤のことです。
- 相容化剤とは:リサイクル助剤の一種で、常は混ざり合わない異種成分同士を混ざり合わせ、材料特性(強度・耐衝撃性・加工性)を向上させる役割があります。
- 物性回復剤とは:リサイクル時に劣化したポリマー鎖を再接続・延長することで強度や耐熱性などの物性を回復する薬剤のことです。
三菱ケミカルのプラスチックリサイクル助剤
三菱ケミカル株式会社は、食品包装材などに使われるガスバリア性樹脂「ソアノール™」とリサイクル助剤「ソアレジン™」を含む多層フィルムが、米国のリサイクル認証機関The Association of Plastic Recyclers(以下「APR」)のリサイクル認証を取得したことを報告しています。
https://www.mcgc.com/news_release/02282.html
ソアレジンは、多層フィルムのリサイクル性を向上させるために開発されたリサイクル助剤です。 これにより、従来リサイクルが難しかったEVOH含有フィルムの再利用が可能となります。
リサイクル助剤とは何か
リサイクル助剤とは、プラスチックなどの材料をリサイクル(再生利用)する際に、品質や処理性を改善するために加える添加剤のことです。具体的には次のような役割を果たします。
相容化剤
異なる種類の樹脂(例:ポリエチレンとナイロン)が混ざったとき、本来は相性が悪くて分離してしまいますが、相容化剤を入れることで界面を調整し、均一な材料に仕上げることができます。
物性回復剤
リサイクル材は熱や剪断で分子鎖が切れ、強度や柔軟性が落ちることがあります。それを回復させるために、鎖長延長剤(チェーンエクステンダー)や衝撃改質剤を添加します。
分散性向上剤
充填剤(ガラス繊維、タルクなど)や着色剤を均一に分散させるために使われます。
脱揮・脱ガス助剤
リサイクル材料に含まれる揮発性成分を加工時に除去するための助剤です。
三菱ケミカルの場合は、例えばEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)を含む多層フィルムのリサイクル性を高めるために「ソアレジン™」という専用助剤を開発しています。
これはEVOHが通常ポリエチレンなどと混ざりにくい性質を持つため、それを助剤で「なじませる」ことでリサイクルを容易にしています。

リサイクル助剤とは、プラスチックなどの材料をリサイクルする際に、品質や処理性を改善するために加える添加剤のことです。
相容化剤とは何か
相容化剤(compatibilizer)とは、通常は混ざり合わない異種のポリマー(樹脂)や成分同士を混ぜたとき、その界面の相性を良くして、均一で安定した混合状態を作るための添加剤です。
なぜ必要なのか
プラスチックは種類ごとに性質(極性・分子構造)が異なり、例:ポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)は混ぜても分離しやすい。この分離は、最終的な製品の強度・外観・性能を低下させます。
そこで相容化剤を加えると、界面で「接着剤」のように働き、二つの樹脂がうまく混ざり、最終的な材料特性(強度・耐衝撃性・加工性)が向上します。
どう働くのか
相容化剤は通常、両方のポリマーに親和性を持つ構造を持っています。例えば、
- 一方の成分に親和性のある鎖
- 他方の成分に親和性のある鎖
- その両方を繋ぐ分子構造(ブロック共重合体、グラフト共重合体など)
この分子が界面に集まり、界面張力を低下させ、混合物を安定化します。
具体例
- PEとPA(ナイロン)の相容化剤
PE鎖にナイロンと反応する官能基(例:マレイン酸無水物)を導入したもの - PPとPETの相容化剤
PP鎖とPET鎖をつなぐブロック共重合体
リサイクル分野での役割
リサイクル材は多くの場合、複数の樹脂が混在しており、相容化剤を入れないと加工後の物性(強度、耐衝撃性)が悪化します。相容化剤を入れることで、
- 廃プラのリサイクル性向上
- リサイクル材の高付加価値化
- リサイクル品の品質安定化
が可能になります。

相容化剤(compatibilizer)とは、通常は混ざり合わない異種成分同士を混ざり合わせ、材料特性(強度・耐衝撃性・加工性)を向上させる役割があります。
物性回復剤とは何か
物性回復材は、リサイクル時に劣化したポリマー鎖(短く切れた分子鎖)を再結合することで物性(強度、延性、耐熱性など)を回復するための薬剤です。
メカニズム
加熱・剪断で切れたポリマーの末端に反応し、鎖を再接続・延長しています。具体的には、
– 鎖長延長剤(チェーンエクステンダー)
エポキシ、カルボジイミド、イソシアネート基などが、ポリマーの末端基(カルボキシル基や水酸基)と反応し、新しい結合を作る。
- 橋剤
:分子間を橋渡しして三次元ネットワークを作り、剛性・耐熱性を高める。
→ 分子レベルで化学的に「修理・補強」することで解決。

物性回復材は、リサイクル時に劣化したポリマー鎖を再接続・延長することで強度や耐熱性などの物性を回復する薬剤のことです。
なぜ、低分子化が物性の低下につながるのか
「結合が短くなる(=分子鎖が切れる)」ことが物性を低下させる理由は、高分子(ポリマー)の構造と性質の関係に深く関係しています。
高分子の「長さ」が物性に与える影響
- 1. 結合(分子鎖)が長いほど、分子同士が絡み合い、物理的強度が高くなる
→ 強度(引張強度・耐衝撃性)、靭性(しなやかさ)などが向上 - 2. 分子量が高いほど、
– 熱変形しにくい(耐熱性)
– 加工時に粘度が高くなる
– 機械的な性能が安定する
リサイクル工程の低分子化
リサイクルの工程では、加熱(200℃以上)、剪断(押出や混練による機械的な力)、酸素や水分による酸化分解などによって、ポリマー鎖が化学的に「切断」されてしまいその結果、
- 分子量が減少(短いポリマーになる)
- 絡まりが弱くなり、力を受けたときに破断しやすくなる
- 引張強度、衝撃強度、耐熱性、伸び率などが低下
これを回復するのが「物性回復剤(鎖長延長剤など)」です。切れた分子末端(–OH、–COOHなど)を再結合させて、長い鎖に戻し、元の特性に近づけます。

高分子は分子鎖が長く、分子量が大きいほど、物理的強度が高くなるため、結合が短くなる(=分子鎖が切れる)」ことが物性を低下してしまいます。
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