この記事で分かること
- マイコプロテインとは:真菌類を発酵させて得られる高たんぱく質食品成分で、代替肉の原料として利用されています。
- 代替肉として利用される理由:肉に似た「食感」と「見た目」や栄養価、環境負荷の小ささなどの理由から代替肉で多く利用されています。
- 代替肉の課題:味や栄養素などの品質の向上と文化的・心理的な抵抗感や大規模への展開などがあります。
アグロルーデンスのマイコプロテインの生産開始
アグロルーデンス株式会社は、2025年5月12日、自社工場においてコメ由来のマイコプロテインの生産を開始したと発表しました。
https://www.agroludens.com/news
これは、日本国内で初めての試みであり、同社の独自技術を活用した持続可能なタンパク質供給の実現に向けた大きな一歩となります。
マイコプロテインとは何か
マイコプロテイン(Mycoprotein)とは、糸状菌(カビの一種)などの真菌類を発酵させて得られる高たんぱく質食品成分です。主に代替肉の原料として利用されており、栄養価が高く、環境負荷が低いことから注目されています。
主な特徴
- 原料:通常、糖質源(グルコース、マルトース、またはデンプン水解物)をエサにして真菌を発酵させます。
- 使用される菌:代表的なのは「Fusarium venenatum」という糸状菌。
- 栄養価:
- 高たんぱく質(全必須アミノ酸含有)
- 低脂肪・低コレステロール
- 食物繊維が豊富(β-グルカン含む)
- 食感:繊維状で肉に似た歯ごたえがあり、ミンチ肉の代替に最適です。
- 応用例:欧州では「Quorn(クォーン)」ブランドが有名で、ミートボール、ナゲット、ミンチなどに加工されています。
利点
- サステナブル:畜産よりも温室効果ガスの排出が少なく、水や土地の使用量も削減可能。
- フレキシブルな原料:米、豆、トウモロコシなど、さまざまな炭水化物源から製造可能。
- 発酵由来なので安定供給が可能。

マイコプロテインは真菌類を発酵させて得られる高たんぱく質食品成分で、代替肉の原料として利用されています。
どのように、製造されるのか
マイコプロテインの製造は「微生物発酵」の技術を用いた工程で、次のようなステップで行われます。アグロルーデンスのように「米」を原料とする場合は以下のような工程となります。
【マイコプロテインの製造工程】
- 原料準備(米の処理)
米を蒸して糖化処理(酵素を加えてデンプンを糖に分解)
→ 糖液(培養のエネルギー源)と残渣(たんぱく質や繊維)に分離 - 発酵工程(真菌の培養)
選定された糸状菌(例:麹菌やFusarium種)を糖液に接種
→ 固体または液体培養で数日かけて菌糸体を増殖
→ 糸状菌の菌体そのものが「マイコプロテイン」となる - 収穫と分離
培養終了後、マイコプロテインを回収
→ フィルターなどで菌体を濾し取る - 熱処理・殺菌
加熱により微生物を不活性化し、風味や保存性を改善 - 成型・加工
収穫した菌体は繊維状で、加圧・混練・成型によって肉のような食感に
→ ミンチやナゲットなど様々な形に加工可能 - 味付け・包装
調味料を加え、冷凍やレトルトパウチなどの形で出荷
代替肉に適している理由はなにか
マイコプロテインが代替肉に適している理由は、以下のような「食感・栄養・環境・応用性」の4つの側面から説明できます。
1. 肉に似た「食感」と「見た目」
- マイコプロテインは糸状菌の繊維構造を持っており、動物性ひき肉のような繊維感や噛みごたえを再現できます。
- 熱・圧力・成形などの加工によって、ソーセージ、ナゲット、ハンバーグなど様々な形に整形可能。
2. 高たんぱく・低脂質の「栄養価」
- タンパク質含有量は30~50%程度で、植物性代替肉よりアミノ酸バランスが良いことが多い。
- 食物繊維(β-グルカンやキトサン)も豊富で、腸内環境にも良い影響が期待されます。
- コレステロール・トランス脂肪酸を含まず、心血管疾患リスク低減にも寄与。
3. 環境への負荷が小さい
- 畜産と比べて:
- 温室効果ガス排出量:最大90%削減
- 水使用量・土地使用量:大幅に少ない
- 発酵タンク内で効率的に生産できるため、都市部近郊でも生産可能。
4. 調理のしやすさ・加工性
- 味にクセが少なく、調味しやすい → 和洋中どんな料理にも使える
- 冷凍保存・レトルト加工にも対応できる → 家庭用・業務用どちらにも展開可能

肉に似た「食感」と「見た目」や栄養価、環境負荷の小ささなどの理由から代替肉で多く利用されています。
代替肉の課題は何か
代替肉(植物性ミート、マイコプロテインなどを含む)には多くの利点がありますが、現在もいくつかの課題が存在します。
代替肉の主な課題
① 味・食感の再現性
- 本物の肉に比べて「旨味」「ジューシーさ」「噛み応え」が足りないと感じる人も多い
- 特に植物性代替肉では、油脂や旨味の再現に限界あり
- マイコプロテインは肉に近いとされるが、好みが分かれることもある
② 価格の高さ
- 原材料の加工コストやスケールの問題で、動物性の肉より高価になることが多い
- 一般消費者への普及には「価格の手頃さ」が障壁となる
③ アレルゲン・原材料表示の問題
- 大豆、小麦、えんどう豆などはアレルゲンになる可能性があり、一部の消費者が避ける
- マイコプロテインは菌類由来のため、まれにアレルギー反応が報告されている(例:クォーン製品)
- 原材料の透明性が消費者にとって重要
④ 加工度の高さ・添加物
- 「超加工食品(ultra-processed food)」に分類される製品も多く、
健康志向の人々から懸念されることがある - 味や食感を補うために、香料・甘味料・結着剤などが多用されがち
⑤ 栄養バランスの偏り
- タンパク質は豊富でも、鉄分・ビタミンB12などの栄養素が不足しやすい
- 動物性食品を完全に置き換える場合、栄養補完が必要となることも
⑥ 文化的・心理的な抵抗感
- 「人工的」「不自然」「加工品」などのイメージがある
- 特に高齢層や保守的な層では受け入れられにくい傾向
⑦ サプライチェーンとスケールアップの課題
- 安定供給体制や地域による調達の難しさ
- フードサービス業界や流通との連携が必要
今後の展望
- 味・価格・栄養・安全性のバランスを改善した「次世代型代替肉」の開発が進行中
- 微生物発酵(マイコプロテイン、培養肉など)の台頭により、植物性代替肉の限界を補完
- 消費者教育や持続可能性の訴求が鍵

代替肉の課題は味や栄養素などの品質の向上と文化的・心理的な抵抗感や大規模への展開などがあります。
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