この記事で分かること
- AIoT家電とは:AIとIoTを融合した家電で、インターネットで繋がるだけでなく、AIがデータを学習・分析し、ユーザーの生活に寄り添って賢く進化する点が特長です。
- シャープの開発内容:シャープは、「ヘルシオ」や「ホットクック」などキッチン家電を中心に、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビといった幅広いAIoT家電を開発しています。
シャープのAIoT家電
シャープは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を搭載した家電(AIoT家電)を、2027年度までに累計1,450万台とする事業戦略を発表しています。
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20250617/2000094687.html
これは、同社が2025年度から2027年度までの中期経営計画で掲げた重点テーマの一つである「ブランド事業のグローバル拡大と事業変革の加速」の中核をなすものです。
AIoT家電とは何か
AIoT家電とは、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を組み合わせた家電製品のことです。特に、シャープが提唱している概念で、同社の登録商標でもあります。
従来のIoT家電が、インターネットに接続して遠隔操作や情報取得ができることに加え、AIoT家電はさらにAIがデータを解析し、学習することで、より賢く、そして使う人に寄り添うように進化するのが大きな特徴です。
AIoT家電の仕組み
- IoTによるデータ収集:
- 家電製品(冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジなど)にセンサーが搭載されており、温度、湿度、使用状況、運転履歴、ユーザーの操作パターンなど、様々なデータをリアルタイムで収集します。
- これらのデータはインターネットを通じてクラウドに送られます。
- AIによるデータ解析と学習:
- クラウド上のAIが、収集された膨大なデータを解析し、ユーザーの生活パターン、好み、習慣、周囲の環境(天気、時間帯など)を学習します。
- この学習を通じて、家電自身が最適な運転モードを判断したり、必要な情報やサービスを提案したりする能力を身につけていきます。
- フィードバックと最適化:
- AIが導き出した最適解や提案が、家電本体や連携するスマートフォンアプリなどを通じてユーザーにフィードバックされます。
- これにより、家電は単なる道具ではなく、ユーザーの生活に合わせた「パートナー」のように機能し、より快適で便利な暮らしをサポートします。
AIoT家電の具体的なメリット
- 個別最適化と進化: ユーザーの好みや生活習慣を学習し、自動で最適な運転を行います。また、クラウドのAIと連携することで、購入後も機能やサービスがアップデートされ、常に最新の状態で利用できます。
- 例:冷蔵庫が食材の残量を管理し、不足を知らせるだけでなく、その食材を使った献立を提案したり、特売情報を教えてくれたりする。
- 例:エアコンが外の天気予報や室内の状況を考慮して、自動で最適な温度・湿度に調整し、省エネ運転を行う。
- 例:洗濯機が洗濯物の量や汚れ、天候予報を判断して、最適な洗い方や乾燥方法を提案する。
- 自動化と効率化: 家電が自律的に判断・制御することで、ユーザーの手間を減らし、家事の効率を向上させます。
- 例:ホットクックが食材と調味料を入れるだけで、最適な火加減と時間で自動調理を行う。
- 新たなサービスの創出: 収集されたデータを活用して、新たな生活支援サービスが生まれます。
- 例:遠隔地に住む高齢者の冷蔵庫の開閉状況から、安否を確認する見守りサービス。
- 例:家電の使用履歴から、電力消費量をレポートし、省エネアドバイスを提供する。
- 快適性・利便性の向上: 音声での操作やスマートフォンアプリからの遠隔操作など、より直感的に家電をコントロールできるようになります。
AIoT家電は、単に「インターネットにつながる」だけでなく、「賢く学習し、人に寄り添い、進化する」という点で、IoT家電の次世代を担う技術として注目されています。

AIoT家電は、AIとIoTを融合した家電で、インターネットで繋がるだけでなく、AIがデータを学習・分析し、ユーザーの生活に寄り添って賢く進化します。自動で最適な運転やサービスを提供し、より快適で便利な暮らしを実現します。
IoT家電に必要な、技術は何か
IoT家電には、大きく分けて以下の技術要素が必要です。
センシング技術
- 家電自身や周囲の環境の情報を取得するためのセンサー(温度、湿度、人感、光、振動、重量、電力消費など)です。
- これらのセンサーが、家電の状態やユーザーの行動、環境の変化をデータとして捉えます。
ネットワーク技術(通信技術)
- 家電がインターネットや他のデバイスとデータをやり取りするための技術です。
- 無線LAN (Wi-Fi): 最も一般的で、ルーターを介してインターネットに接続します。
- Bluetooth: スマートフォンとの近距離接続によく使われます。
- ZigBee/Z-Wave: スマートホーム機器間で使われる低消費電力の無線通信規格です。
- LPWA (Low Power Wide Area): 広範囲をカバーし、低消費電力で少量データを送るのに適した技術(例: LoRaWAN, Sigfox)もあります。
- モバイル通信 (5G/LTE): より高速で大容量のデータ通信が必要な場合や、Wi-Fi環境がない場所で利用されます。
データ処理・管理技術
- センサーから収集された膨大なデータを効率的に処理し、保存するための技術です。
- クラウドコンピューティング: 大量のデータを保存し、高度な処理を行うための基盤です。
- ビッグデータ分析: 収集されたデータからパターンや傾向を抽出し、意味のある情報を導き出す技術です。
- エッジコンピューティング: デバイス(家電)側である程度のデータ処理を行うことで、クラウドへの負荷を軽減し、リアルタイム性を高める技術です。
アプリケーション・インターフェース技術
- ユーザーがIoT家電を操作したり、情報を受け取ったりするためのインターフェースです。
- スマートフォンアプリ: 遠隔操作、設定変更、情報表示、通知などを行います。
- 音声アシスタント連携: スマートスピーカーなどを介して音声で家電を操作できるようにします。
- API (Application Programming Interface): 他のサービスやデバイスと連携するための仕組みです。
組み込みシステム・ハードウェア技術
- 家電内部に搭載されるマイコン(マイクロコントローラー)やOS、制御プログラムなど、家電をIoT化するための基本的なハードウェアとソフトウェアです。
- 電力効率や小型化、耐久性などが求められます。
セキュリティ技術
- インターネットに接続されるため、不正アクセス、情報漏洩、マルウェア感染などのリスクがあります。
- 暗号化技術: データ通信の傍受を防ぎます。
- 認証技術: 正しいユーザーやデバイスであることを確認します。
- ファームウェアアップデート: 脆弱性に対応するための定期的な更新機能です。
- セキュアブート: 機器の起動時に正規のソフトウェアが実行されていることを確認します。
AI(人工知能)技術(特にAIoT家電の場合):
- 収集されたデータを解析し、ユーザーの行動パターンや好みを学習することで、家電が自律的に判断したり、最適な提案をしたりする機能を実現します。
- 機械学習、深層学習、自然言語処理などが含まれます。
これらの技術が複合的に組み合わさることで、IoT家電は単なる「つながる」だけでなく、「賢く、便利に、そして安全に」私たちの生活をサポートする存在となります。

IoT家電には、センサーでのデータ収集、Wi-Fi等のネットワーク接続、クラウドでのデータ処理・分析、スマホアプリ等の操作インターフェース、そしてセキュリティ対策といった技術が不可欠です。
AIoT家電とIoT家電の違いは何か
AIoT家電とIoT家電はどちらもインターネットに接続される家電ですが、その機能と提供する価値に明確な違いがあります。
IoT家電(Internet of Things 家電)
IoT家電は、文字通り「モノのインターネット」に接続された家電です。基本的な機能は以下の通りです。
- インターネット接続: Wi-Fiなどを通じてインターネットに接続します。
- 遠隔操作: スマートフォンアプリなどを使って、外出先から家電の電源をオン/オフしたり、設定を変更したりできます。
- 情報取得: 家電の状態(運転状況、エラーメッセージなど)を遠隔で確認できます。
- 機能追加: 購入後もソフトウェアアップデートによって機能が追加されることがあります。
IoT家電は、ユーザーが能動的に操作することで便利さを享受する、「繋がる家電」と言えます。例えば、外出先からエアコンをつけて部屋を涼しくしたり、ロボット掃除機の稼働状況を確認したりする、といった使い方が代表的です。
AIoT家電(AI + IoT 家電)
AIoT家電はシャープが提唱している概念で、AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)を融合させた家電です。IoT家電の機能に加え、さらに以下の特徴があります。
- データ解析と学習: 家電が収集したデータ(ユーザーの利用履歴、生活パターン、周囲の環境など)をAIが解析し、学習します。
- 個別最適化と提案: 学習した内容に基づいて、ユーザーの好みや状況に合わせた最適な運転を自律的に判断・実行します。また、必要な情報やサービスを提案してくれます。
- 「人に寄り添う」進化: 単に指示されたことをするだけでなく、まるでパートナーのようにユーザーの生活を予測し、より快適で便利な状態を作り出すことを目指します。
- 新たな価値創造: 収集されたデータを活用し、家電単体では提供できなかった新たな生活支援サービスを生み出す可能性があります(例:冷蔵庫内の食材管理と献立提案、見守りサービスなど)。
AIoT家電は、AIの「賢さ」が加わることで、ユーザーの操作なしでも気の利いたサポートをしてくれる、「賢く進化する家電」と言えます。
まとめ
特徴 | IoT家電 | AIoT家電(シャープ提唱) |
---|---|---|
主な機能 | インターネット接続、遠隔操作、情報確認 | IoT機能 + AIによるデータ解析・学習、自律最適化、提案 |
価値の提供 | ユーザーの能動的な操作による利便性 | AIによる自動化・最適化、生活への寄り添い |
キーワード | 「繋がる」、リモート制御 | 「賢く進化する」、パーソナライズ、自律判断 |

IoT家電がインターネットにつながって遠隔操作ができる「スマートな道具」であるのに対し、AIoT家電はAIが学習することで、より自律的に、そしてユーザー一人ひとりに合わせて「賢く」振る舞い、進化していく家電と言えます。
シャープはどのようなAIoT家電の開発を行っているのか
シャープは多岐にわたる家電製品をAIoT化し、ユーザーの生活に寄り添う「賢い」家電として開発・展開しています。その主なカテゴリーと具体的な機能の例は以下の通りです。
キッチン家電
- ヘルシオ(ウォーターオーブン): 音声対話で献立相談や調理のアドバイスを行い、クラウドから最新レシピをダウンロード。食材と分量を入れるだけで最適な加熱を提案します。
- ヘルシオ ホットクック(水なし自動調理鍋): クラウド上のレシピをダウンロードし、火加減や時間を自動で調整。食材を入れるだけで様々な料理を手軽に作れます。冷蔵庫と連携し、食材からレシピを提案し自動送信も可能です。
- 冷蔵庫: 食材の管理(賞味期限、在庫)、特売情報やレシピの提案を行います。他の家電(洗濯機など)と連携し、完了通知を表示する機能もあります。
生活家電
- 洗濯機: 天気情報に応じた洗濯のアドバイス、運転状況の通知、最適なコースの提案など。
- 空気清浄機: 室内外の空気の状態をAIが分析し、自動で快適な運転に切り替えたり、使い方をアドバイスしたりします。エアコンと連携して就寝を検知し、「おやすみ」運転を行うことも可能です。
- エアコン: 天気予報や日常の使い方に合わせて自動で運転を制御し、省エネ運転を行います。
情報・エンターテイメント家電
- テレビ(AQUOS): 放送コンテンツの視聴履歴からおすすめ番組を提案する「COCORO VISION」に対応。調理家電(ヘルシオなど)と連携し、調理終了を画面に通知したり、冷蔵庫のドアの開閉状況を知らせたりします。
- スマートフォン(AQUOSシリーズ): AIoT家電を操作するハブとして機能し、家電からの通知を受け取ったり、設定を変更したりできます。
- RoBoHoN(ロボホン): モバイル型ロボット電話で、家電との音声連携や見守り機能を提供します。
その他
- HEMS(Home Energy Management System): 太陽光発電や蓄電池と連携し、家庭内のエネルギー利用を最適化し、省エネをサポートします。
- ストックアシスト: 食材などのストック品の残量を管理し、補充時期を通知するサービスです。
- ペットケアモニター: ペットの行動や状態をモニタリングし、飼い主に情報を提供します。
AIoT家電連携の例
シャープのAIoT家電は、個々の製品が賢いだけでなく、相互に連携することで、より便利で快適な暮らしを実現します。
- 洗濯機 × 冷蔵庫: 洗濯の終了を冷蔵庫の画面でお知らせ。
- ヘルシオ × テレビ: 調理終了をテレビ画面に通知。
- 空気清浄機 × エアコン: 空気清浄機が就寝を検知すると、エアコンが自動で「おやすみ」運転。
- 冷蔵庫 × ホットクック: 冷蔵庫からおすすめレシピを提案し、自動でホットクックに調理設定を送信。
シャープはこれらのAIoT家電を通じて、ユーザーの行動や環境を学習し、自動で最適な運転やサービスを提供することで、「人に寄り添う」スマートライフの実現を目指しています。

シャープは、「ヘルシオ」や「ホットクック」などキッチン家電を中心に、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビといった幅広いAIoT家電を開発しています。AIが学習し、個々に最適化された自動運転や、家電同士が連携してユーザーに寄り添う快適な暮らしを提案しています。
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