IBMの新規サーバーIBM Power11 どのような特徴があるのか?停止が不要となった理由は何か?

この記事で分かること

IBM Power11の特徴:AIワークロード最適化と計画的ダウンタイム・ゼロを実現する次世代エンタープライズサーバーです。シリコンからアプリケーションまでフルスタックで革新し、高可用性、セキュリティ、省エネ性能も強化しています。

停止が不要となった理由:自動パッチ適用や稼働中のワークロード移行、強化されたホットスワップ機能により、メンテナンス時のシステム停止が不要となりました。

IBMの新規サーバーIBM Power11

 日本IBMは、2025年7月9日に次世代エンタープライズサーバー「IBM Power11」を発表しました。

 https://jp.newsroom.ibm.com/2025-07-09-ibm-power11-raises-the-bar-for-enterprise-it

 これは、AI時代における企業のITインフラの新たな基準を打ち立てるものとして注目されています。

どのような特徴を持っているのか

 「IBM Power11」の主な特徴は以下の通りです。

  • 計画的ダウンタイム・ゼロの実現: 長年のIT部門の課題であったサーバーメンテナンスのための計画停止を不要にすることを目指しています。これにより、事業継続性を極限まで高めることができます。
  • AIワークロードの最適化: AIを安全に稼働させ、エンタープライズワークフローに統合することで、ビジネスプロセスのスループットを向上させることができます。2025年末には生成AIのアクセラレーションを搭載する「IBM Spyre Accelerator」が実装される予定です。
  • シリコンからアプリケーションまでのフルスタックでの革新: プロセッサー、ハードウェア・アーキテクチャー、仮想化ソフトウェア・スタック全体にわたるイノベーションが施されています。
  • セキュリティとレジリエンスの強化: ランサムウェアの検出・回復機能など、脅威に迅速に対応し、財務リスクと企業イメージへのリスクを最小限に抑制する機能が提供されます。
  • ハイブリッドクラウド戦略の中核: オンプレミスやIBM Cloudでのシームレスなハイブリッド・デプロイメントを可能にし、企業のハイブリッドクラウド戦略を強力に支援します。既存資産(AIXやIBM i)を活かしつつ、DXを進めたい企業に最適とされています。
  • サステナビリティへの貢献: エネルギー消費を大規模に最適化し、TCO、炭素排出量、データセンターのフットプリントを削減する設計がなされています。
  • 高い可用性とパフォーマンス: Hypervisorスケジューリングの革新によるパフォーマンス向上や、スペアコアの導入による可用性向上が図られています。

 日本IBMは、「IBM Power11」を「AI時代における真のエンタープライズサーバー」と位置づけ、企業のデジタルトランスフォーメーションとAI活用を推進するための強力な基盤を提供していく方針です。国内では2025年7月25日から提供が開始されます。

IBM Power11は、AIワークロード最適化計画的ダウンタイム・ゼロを実現する次世代エンタープライズサーバーです。シリコンからアプリケーションまでフルスタックで革新し、高可用性、セキュリティ、省エネ性能も強化しています。ハイブリッドクラウドの中核として企業のDXを加速します。

停止が不要となった理由は何か

 IBM Power11で計画的ダウンタイムが不要となった主な理由は、以下の先進的なテクノロジーと設計にあります。

自律的なパッチ適用 (Autonomous Patching)

 Power11は、システム稼働中に自動的にパッチを適用できる機能を備えています。これにより、通常パッチ適用に必要なシステム停止が不要になります。従来のサーバーでは、セキュリティパッチや機能改善のための更新には、システムの再起動やサービスの一時停止が必要となることが一般的でした。

自動ワークロード移行(Automated Workload Movement / Live Partition Mobility)

 稼働中の仮想マシン(パーティション)を、別の物理サーバーに停止することなく移行させる技術「Live Partition Mobility」を高度に活用します。これにより、メンテナンスが必要な物理サーバーから、稼働中のワークロードを別の健全なサーバーに移動させ、メンテナンス作業中は元のサーバーを停止させつつも、サービス自体は継続して提供することができます。メンテナンス終了後、ワークロードを元のサーバーに戻すことも可能です。

コンポーネントの冗長性とホットスワップ機能の強化

 主要なコンポーネント(電源、ファン、メモリ、入出力カードなど)が冗長化されており、故障した際に稼働を止めずに交換できるホットスワップ機能がさらに強化されています。これにより、ハードウェアの故障や交換もシステム停止なしに行うことができます。

フルスタックでの設計最適化

 プロセッサー、ハードウェアアーキテクチャー、仮想化ソフトウェアスタック全体にわたって、中断のない運用を前提とした設計がなされています。これは、個々の機能だけでなく、システム全体としてダウンタイムを発生させないための統合的なアプローチです。

AIを活用した運用管理の高度化

 IBM Concertなどのツールと連携し、ジェネレーティブAIを活用して運用上のリスクを特定し、セキュリティパッチの管理から自動修復までを自動化します。これにより、潜在的な問題を事前に検知し、人間の介入なしに解決することで、予期せぬ停止を防ぎます。

 これらの技術の組み合わせにより、IBM Power11は「Zero Planned Downtime(計画停止ゼロ)」を実現し、企業のミッションクリティカルなシステムが24時間365日、中断なく稼働できる環境を提供します。これにより、IT部門はメンテナンス計画や実行にかかる時間と労力を削減し、より戦略的な業務に集中できるようになります。

IBM Power11は、自動パッチ適用稼働中のワークロード移行強化されたホットスワップ機能により、メンテナンス時のシステム停止が不要となりました。これにより、24時間365日の連続稼働を実現し、企業のダウンタイムをゼロに近づけます。

エンタープライズワークフローとは

 「エンタープライズワークフロー」とは、大企業や組織全体にわたる複雑な業務プロセスを、一連の流れとして定義し、管理・自動化することを指します。単なる個別のタスクの羅列ではなく、複数の部署や関係者が連携し、特定の目的を達成するための体系化された業務手順です。

  • 大規模な組織での適用: 中小企業向けのワークフローシステムとは異なり、多数の従業員、複雑な組織構造、多岐にわたる業務に対応できる設計になっています。
  • 多岐にわたる業務領域: 経費精算、稟議承認、人事異動、契約書管理、顧客サポート、プロジェクト管理など、企業内のあらゆる業務プロセスが対象となります。
  • 複雑な承認経路と条件分岐: 役職、部署、金額、内容などに応じて、承認者が変わったり、複数の承認経路に分岐したりする複雑なプロセスにも対応できます。
  • 他システムとの連携: ERP(企業資源計画)システム、CRM(顧客関係管理)システム、人事システムなど、既存の基幹システムと連携することで、データの自動連携や一元管理を実現します。
  • ガバナンスと内部統制: 業務プロセスの可視化、承認履歴の記録、権限管理などにより、不正防止やコンプライアンス遵守を強化し、内部統制に貢献します。
  • 効率化と生産性向上: 手作業によるミスや遅延を削減し、業務の自動化を推進することで、全体の生産性を向上させます。
  • 継続的な改善: ワークフローの状況を分析し、ボトルネックを特定して改善することで、より効率的な業務プロセスを構築していきます。

 最近では、AIを活用してワークフローの最適化や自動化をさらに進める動きも活発になっています。これにより、これまで人間が判断していた複雑な承認プロセスの一部をAIが支援したり、データ分析に基づいてより効率的な経路を提案したりするなどが可能になってきています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました