アップルのMPマテリアルズとの契約 MPマテリアルズはどんな会社なのか?アップル製品に使用されるレアアースにはどのようなものがあるのか?

この記事で分かること

  • MPマテリアルズとは:米国カリフォルニア州のレアアース鉱山を運営し、採掘から分離・精製まで一貫生産する企業です。
  • アップル製品に使用されるレアアース:iPhoneのTaptic Engineやスピーカーなどに使われる磁石の主成分であるネオジムやプラセオジム、性能安定化のためのジスプロシウム、ディスプレイ関連のテルビウムやランタンなどが主に利用されています。

アップルのMPマテリアルズとの契約

 アップルは2025年7月15日、米国のレアアース(希土類)生産企業であるMPマテリアルズと、5億ドル(約740億円)規模の複数年契約を締結したと発表しました。

 https://shikiho.toyokeizai.net/news/0/891324

 MPマテリアルズは、カリフォルニア州モハベ砂漠にあるマウンテンパス鉱山を所有・運営しており、西半球で唯一の完全統合型レアアース生産者です。今回のアップルとの契約は、同社の事業拡大を大きく後押しするとともに、米国のレアアースサプライチェーンの独立性を高める上で重要な一歩となります。

MPマテリアルズはどんな企業なのか

 MPマテリアルズ(MP Materials Corp.)は、アメリカ合衆国に拠点を置くレアアース(希土類)の生産企業です。その主な特徴と事業内容は以下の通りです。

主要な事業内容

  • レアアースの採掘と加工: カリフォルニア州モハベ砂漠にある「マウンテンパス鉱山」を所有・運営しています。この鉱山は、西半球で唯一の、かつ最も規模の大きい完全統合型のレアアース採掘・加工施設です。
  • レアアース製品の製造・販売:
    • 希土類精鉱(Rare Earth Concentrate): 鉱山から採掘されたレアアース鉱石を濃縮したものです。主に中国の顧客に販売されています。
    • 分離されたレアアース製品: 特に、ネオジム・プラセオジム(NdPr)酸化物に注力しており、これらは磁石の製造に不可欠な素材です。ランタンやセリウムの酸化物および炭酸塩も生産しています。これらの製品は、日本、韓国、その他のアジアの顧客に販売されています。
    • レアアース磁石の製造(開発中): テキサス州フォートワースに「インディペンデンス」という施設を開発中で、ここでレアアース合金と磁石の製造を目指しています。アップルとの契約も、この米国製レアアース磁石の供給を目的としています。
  • レアアースのリサイクル: 今後、アップルとの協力により、使用済み電子機器などからのレアアースリサイクル施設の構築も進める予定です。

企業の強み・特徴

  • 垂直統合型: 採掘から最終製品(磁石)に近い段階まで、一貫してレアアースのサプライチェーンを自社で管理している点が大きな特徴です。これにより、品質管理や供給安定性の確保に貢献しています。
  • 西半球唯一の主要生産者: 地政学的なリスクが高まる中、中国への依存度を低減する上で、西半球における主要なレアアース供給源としての地位は非常に重要視されています。
  • 米国の国家安全保障上の重要性: レアアースは、電気自動車、ドローン、防衛システム、風力発電機など、多くの先端技術に不可欠な素材であるため、米国内での安定供給は国家安全保障上も極めて重要とされています。そのため、米国国防総省からの大規模な投資も受けています。
  • 研究開発: 新しい磁石材料や加工技術の開発にも積極的に取り組んでいます。

 2017年に設立され、ネバダ州ラスベガスに本社を置いています。米国におけるレアアース産業の再活性化を担う、重要な役割を果たす企業と言えるでしょう。

MPマテリアルズは、米国カリフォルニア州のレアアース鉱山を運営し、採掘から分離・精製まで一貫生産する企業です。電気自動車や先端技術に不可欠なレアアース磁石の米国内供給を目指し、アップルや国防総省と連携を強化しています。

マウンテンパス鉱山からはどんなレアアースが採掘出来るのか

 マウンテンパス鉱山から採掘される主要なレアアースは、主に軽希土類元素です。その中でも特に重要なのは以下のものです。

  • ネオジム (Neodymium: Nd): 最も重要なレアアースの一つで、強力な永久磁石(ネオジム磁石)の製造に不可欠です。電気自動車のモーター、風力発電機、スマートフォンなどに広く使われています。
  • プラセオジム (Praseodymium: Pr): ネオジムと合わせてNdPrとして扱われることが多く、ネオジム磁石の性能向上に貢献します。
  • ランタン (Lanthanum: La): 電気自動車のバッテリー(ニッケル水素電池)、石油精製触媒、カメラレンズなどに使用されます。
  • セリウム (Cerium: Ce): 自動車の排ガス浄化触媒、研磨剤、蛍光体などに幅広く利用されます。
  • ユウロピウム (Europium: Eu): かつてカラーテレビの赤色蛍光体として非常に需要があり、マウンテンパス鉱山の初期の生産を牽引しました。現在も特殊な蛍光体などに使われます。

マウンテンパス鉱山の主要なレアアース鉱物は「バストネサイト (Bastnäsite)」であり、この鉱物が上記の軽希土類元素を豊富に含んでいます。

 MPマテリアルズは、これらの軽希土類元素の採掘から、ネオジム・プラセオジム(NdPr)酸化物の分離・精製、そして最終的に磁石の製造までを垂直統合で進めようとしています。

マウンテンパス鉱山からは、主にネオジム(Nd)やプラセオジム(Pr)ランタン(La)、セリウム(Ce)といった「軽希土類元素」が採掘されます。特に、磁石製造に不可欠なネオジムとプラセオジムの産出が重要です。

Apple製品にはどんなレアアースが使われているのか

 Apple製品には、主に以下のレアアースが使われています。

  • ネオジム (Neodymium): 磁石の主要な成分として、iPhoneのTaptic Engine(触覚フィードバック機能)やスピーカー、振動ユニットなどに使用されています。
  • プラセオジム (Praseodymium): ネオジムと共に磁石の性能向上に貢献します。
  • ジスプロシウム (Dysprosium): ネオジム磁石の耐熱性や性能を安定させるために少量使用されます。
  • テルビウム (Terbium): ディスプレイの色再現(特に緑色)や磁石の性能向上に寄与します。
  • ランタン (Lanthanum): ディスプレイやガラスの研磨、カメラレンズなどに使用されます。
  • セリウム (Cerium): ガラスの研磨などに使用されます。
  • ユウロピウム (Europium): ディスプレイの赤色蛍光体などに使用されます。
  • ガドリニウム (Gadolinium): スピーカーなどに使用されます。
  • イットリウム (Yttrium): ディスプレイなどに使用されます。

 Appleは、これらのレアアースを製品に使用していますが、環境への配慮から、2019年のiPhone 11以降、Taptic Engineにリサイクルされたレアアースを使用するなど、リサイクル素材の利用を積極的に進めています。

 現在では、Apple製品に使われる磁石のほぼすべてに100%リサイクル素材が使用されています。

Apple製品には、iPhoneのTaptic Engineやスピーカーなどに使われる磁石の主成分であるネオジムプラセオジム、性能安定化のためのジスプロシウム、ディスプレイ関連のテルビウムランタンなどが主に利用されています。

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