この記事で分かること
- サーボモーターとは:エンコーダーで位置や速度を検出し、フィードバック制御により指令に忠実に、高精度な位置・速度・トルク制御を行うモーターシステムです。精密な動作が求められる分野で広く使われます。
- サーボモーター用軸受とは:高精度制御のサーボモーターの回転を支える重要部品です。低発塵・低トルク・高精度・長寿命が求められます。
- 低発塵の重要性:クリーンルーム内で使用される産業用ロボットなど、微細な塵が許されない環境でサーボモーターが使われることが多いため、軸受そのものや、軸受に使用されるグリースやシールの摩擦によって発生する塵を極限まで抑える必要があります。
NTNのサーボモーター向け低発塵軸受
NTNがサーボモーター向けの軸受で、発塵量を従来品比で約90%削減した製品を開発し、量産しているとニュースになっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP694580_Y5A720C2000000/
これは、特にクリーンルームなど、発塵を嫌う環境で使用されるFA(ファクトリーオートメーション)分野の機器、例えば半導体製造装置やロボットなどの性能向上に大きく貢献する技術です。
サーボモーターとは何か
サーボモーターは、一般的なモーターとは異なり、高精度な位置、速度、トルクの制御を目的としたモーターシステムです。
「サーボ(servo)」はラテン語の「Servus(召使い)」に由来しており、指令に忠実に、まるで召使いのように動くことからその名がつけられました。
サーボモーターの主な特徴と仕組み
- フィードバック制御(クローズドループ制御): これがサーボモーターの最も重要な特徴です。
- 一般的なモーターは、電圧や電流を流すと回転しますが、負荷が変動すると回転速度が変わってしまいます。
- サーボモーターは、モーターの実際の状態(位置、速度、トルクなど)を検出するエンコーダーと呼ばれるセンサーを搭載しています。
- このエンコーダーからの情報(フィードバック信号)を、目標値と比較し、その誤差を少なくするようにモーターに供給する電力を調整します。
- これにより、外部からの負荷変動などがあっても、常に指令通りの正確な動作を維持することができます。
- 構成要素: サーボモーターは、モーター単体ではなく、以下の要素が組み合わさってシステムとして機能します。
- モーター本体: 実際に回転する部分です。DC(直流)サーボモーターとAC(交流)サーボモーターがあり、現在はACサーボモーターが主流です。
- エンコーダー(位置検出器): モーターの回転角度や速度を正確に検出するセンサーです。この情報がフィードバック信号として使われます。
- サーボアンプ(ドライバー): 上位コントローラーからの指令を受け取り、エンコーダーからのフィードバック信号と比較して、モーターに適切な電流や電圧を供給する制御装置です。
- 上位コントローラー: サーボモーターに「どの位置まで動かすか」「どのくらいの速度で動かすか」といった指令を与える役割を担います。
- 高応答性・高精度:
- 指令に対する応答が非常に速く、瞬時に加減速が可能です。
- エンコーダーとフィードバック制御により、非常に高精度な位置決めや速度制御が実現できます。
- 負荷変動への適応性:
- 急激な負荷変動があっても、フィードバック制御によって自動的にトルクや速度を調整し、安定した動作を維持します。
サーボモーターのメリット
- 正確な位置・速度・トルク制御が可能: 目的の場所にピタリと止めたり、指定された速度を正確に維持したり、一定の力を出し続けたりできます。
- 高速かつ滑らかな動作: 高い応答性により、素早い加減速やスムーズな動作が可能です。
- 脱調(だっちょう)しない: ステッピングモーターとは異なり、負荷がかかっても位置ずれを起こしにくいです。
- 急激な負荷変動に強い: 常にフィードバックで状態を監視・補正するため、外部からの影響を受けにくいです。
- 高トルク・高回転: 低速から高速まで広い速度範囲で安定したトルクを発生させることができます。
主な用途
その高精度な制御特性から、様々な産業分野で不可欠な存在となっています。
- 産業用ロボット: ロボットアームの関節の精密な位置決めや動作に用いられます。
- 工作機械: 高精度な切削、研磨、組み立てなどを行う機械の駆動部に使われます。
- 半導体製造装置: クリーンルーム内で、極めて微細な部品を正確に搬送・加工するために必要不可欠です。
- FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置: 大型ガラス基板を高精度に扱うために用いられます。
- 搬送装置: 重量物の正確な搬送や、高速での位置決めが必要なラインで活用されます。
- 医療機器: 精密な動作が求められる手術支援ロボットや検査機器などに使われます。
- 印刷機械、包装機械: 正確な紙送りや包装作業に貢献します。
- 自動ドア、エレベーター: スムーズで安全な開閉・昇降に利用されます。
- ホビー用途: ラジコンの舵やロボットの関節などにも簡易的なサーボモーターが使われています。
このように、サーボモーターは、現代の自動化された産業において、精密で信頼性の高い動作を実現するために不可欠なキーデバイスとなっています。

サーボモーターは、エンコーダーで位置や速度を検出し、フィードバック制御により指令に忠実に、高精度な位置・速度・トルク制御を行うモーターシステムです。産業用ロボットや工作機械など、精密な動作が求められる分野で広く使われます。
サーボモーター用軸受とは何か
サーボモーター用軸受とは、サーボモーターの回転軸を支え、滑らかに回転させるための部品です。一般的なモーターの軸受と同様に、モーターの性能を大きく左右する重要な要素ですが、特にサーボモーターの特性に合わせて、より高度な要求性能を満たすように設計されています。
サーボモーターは、前述の通り、高精度な位置決めや高速・高応答性が求められるため、その軸受にも以下の点が特に重要視されます。
低発塵性
- 半導体製造装置やクリーンルーム内で使用される産業用ロボットなど、微細な塵(パーティクル)が許されない環境でサーボモーターが使われることが多いため、軸受そのものや、軸受に使用されるグリースやシールの摩擦によって発生する塵を極限まで抑える必要があります。
- NTNの「発塵量9割減」の軸受は、まさにこの要求に応えるものです。
低トルク
- サーボモーターは正確な制御が求められるため、軸受の回転抵抗(トルク)が低いほど、モーターの応答性が向上し、より精密な制御が可能になります。
- また、低トルクはモーターの消費電力の削減にも繋がり、発熱を抑える効果もあります。
高精度・低振動
- サーボモーターは精密な位置決めを行うため、軸受の回転精度や振動が低いことが求められます。軸受のわずかなガタつきや不均一な回転は、モーターの制御精度に影響を与え、装置全体の性能を低下させる可能性があります。
- 例えば、工作機械においては、軸受の振動が加工精度に直接影響するため、低振動性が非常に重要です。
長寿命・高信頼性
- 産業機械は24時間稼働することも多く、軸受の頻繁な交換は生産性の低下に直結します。そのため、過酷な使用環境下でも長期間にわたって安定した性能を維持できる高い耐久性が求められます。
高速回転対応
- 近年、産業用ロボットや工作機械の高速化に伴い、サーボモーターも高速で回転するようになっています。そのため、軸受も高速回転時の遠心力や発熱に耐えうる設計が必要です。
サーボモーターに使われる軸受の種類としては、主に深溝玉軸受が使用されます。これは、ラジアル荷重(軸に垂直にかかる力)とアキシアル荷重(軸方向に沿ってかかる力)の両方に対応できる汎用性の高さと、比較的高速回転に適しているためです。さらに、上記のような特殊な要求に応えるため、専用のグリースやシール、保持器の材料・形状などが最適化されたものが「サーボモーター用軸受」として開発・供給されています。
NTNや日本精工(NSK)のような軸受メーカーは、サーボモーターの進化に合わせて、これらの要求を満たす高性能な軸受を開発し続けています。

サーボモーター用軸受は、高精度制御のサーボモーターの回転を支える重要部品です。低発塵・低トルク・高精度・長寿命が求められ、特に半導体装置やロボットなど精密機器の性能向上に貢献します。
どのように低発塵性を実現するのか
サーボモーター用軸受の低発塵性は、主に以下の3つの要素の最適化によって実現されます。
低発塵性グリース(潤滑剤)の開発
- 発塵メカニズムの解明: 軸受の回転によってグリースがせん断されたり、蒸発したりすることで微粒子が発生するメカニズムを詳細に解析します。
成分・配合の最適化:
- 基油の選定: 蒸発しにくく、せん断安定性に優れた基油(合成油など)を選定します。蒸発性の低い基油を使用することで、グリースの揮発成分が周囲に飛散して付着することを防ぎます。
- 増ちょう剤の改良: グリースの粘度や構造を安定させる増ちょう剤も、発塵の原因とならないよう、粒子の生成を抑制する成分や構造に改良されます。
- 添加剤の調整: 潤滑性や耐熱性、防錆性などの性能を維持しつつ、発塵を抑制する特殊な添加剤が用いられます。
- 耐熱性の向上: 高温環境下でもグリースの蒸発や劣化を抑制し、長期間にわたって低発塵性を維持できるように、耐熱性に優れた組成を選定します。
高性能シール(密封装置)の採用・改良
- 材質の選定: 摩擦による摩耗粉が発生しにくい、低発塵性の高いゴム材料や樹脂材料が選定されます。フッ素ゴムなどが用いられることがあります。
リップ形状の最適化
- 軸との接触部分(リップ)の形状を精密に設計し、接触圧力を均一化することで、摩耗粉の発生を抑制します。
- 密封性を高めつつ、過度な摩擦抵抗を避けることで、低トルク化も両立させます。
- グリースの外部への漏洩や、外部からの異物侵入を効果的に防ぎ、軸受内部の清浄性を保ちます。
軸受部材(軌道輪、転動体)の表面処理・材質選定
- 平滑性の向上: 軌道面や転動体の表面を非常に滑らかに研磨することで、摩擦を低減し、金属粉の発生を抑制します。
- 特殊コーティング: 必要に応じて、低摩擦性や耐摩耗性に優れた特殊なコーティングが施されることもあります。
- 高清浄度管理: 軸受の製造工程全体で、徹底した清浄度管理を行い、異物の混入を防ぎます。
これらの技術要素は、単独ではなく相互に連携して低発塵性を実現します。特に、グリースとシールの開発には、発塵メカニズムの深い理解と、それを再現できる高精度な評価試験機の開発が不可欠です。NTNやNSKなどの軸受メーカーは、これらの技術を組み合わせることで、従来品比で大幅な発塵量削減を達成しています。

低発塵性は、主に「低発塵性グリース」と「高性能シール」の組み合わせで実現します。発塵しにくい成分と配合の新グリースを開発し、蒸発や摩耗を抑制。さらに、最適な形状のシールで摩擦を減らし、グリースの飛散や外部からの異物侵入を防ぎます。
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