GI基金による水素船の普及推進 GI基金、水素船とは何か?

この記事で分かること

  • GI基金とは:2050年カーボンニュートラルを目指す日本の大規模な基金です。脱炭素化に向けた革新的な技術の研究開発から社会実装までを、長期にわたり一貫して支援し、産業の競争力強化と経済成長の両立を目指します。
  • 水素船とは:水素を燃料とする環境に優しい船です。航行時にCO2を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。

GI基金による水素船の普及推進

 日本の政府は、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの一環として、水素船の普及を推進しています。その中核となるのが「グリーンイノベーション基金(GI基金)」です。 

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 政府はGI基金をはじめとする様々な施策を通じて、これらの課題を克服し、水素船の社会実装を加速させることを目指しています。

水素船とは何か

 水素船とは、水素を燃料として航行する船のことです。従来の重油などを燃料とする船舶とは異なり、航行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。

水素船の仕組み

 水素船には主に2つのタイプがあります。

  1. 水素燃料電池船: 水素と空気中の酸素を反応させて電気を作り、その電力でモーターを動かして航行する船です。この反応の際に排出されるのは水だけであり、CO2は全く排出しません。燃料電池とバッテリーを組み合わせたハイブリッド型が一般的です。
  2. 水素内燃機関船: 従来のディーゼルエンジンを改良し、水素を直接燃料として燃焼させることで航行する船です。この方式でもCO2の排出は大幅に削減されますが、微量の窒素酸化物(NOx)が排出される場合があります。

 現在主流となっているのは水素燃料電池船で、特に小型・中型船舶での実用化が進んでいます。

メリットとデメリット

メリット
  • CO2排出量ゼロ(または大幅削減): 航行時のCO2排出がゼロ、あるいは大幅に削減されるため、環境負荷が非常に小さいです。
  • クリーンエネルギー: 燃料電池船の場合、騒音や振動が少なく、快適な乗り心地を実現できます。
  • エネルギー自給率向上: 水を電気分解して水素を製造できるため、日本のようにエネルギー資源が少ない国でも、国内でエネルギーを生産できる可能性を秘めています。
デメリット
  • コストが高い: 従来の燃料船に比べて、船の建造費や燃料である水素のコストがまだ高いのが現状です。
  • インフラ未整備: 船舶に水素を補給するためのインフラ(水素ステーションなど)がまだ十分に整備されていません。
  • 技術的な課題: 水素を高圧で貯蔵する技術や、安全性を確保するための規制整備など、解決すべき課題が残っています。

 これらの課題を解決するため、日本では政府のGI基金をはじめとする様々な支援策が講じられ、水素船の実用化と普及に向けた取り組みが進められています。

水素船は、水素を燃料とする環境に優しい船です。航行時にCO2を排出しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。水素燃料電池船と水素内燃機関船があり、現在、政府もGI基金などで普及を後押ししています。

GI基金とは何か

 GI基金とは、「グリーンイノベーション基金」の略称で、2050年カーボンニュートラルという日本の目標達成に向けて、官民が連携して取り組むための大規模な基金です。

目的

 GI基金の最大の目的は、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」と、経済成長の両立を実現することです。

 具体的には、脱炭素化を可能にする革新的な技術の研究開発から社会実装までを、最長10年間という長期にわたって継続的に支援します。これにより、企業単体では投資が困難な分野での大胆な挑戦を後押しし、日本の産業競争力強化を目指しています。

事業内容

 GI基金は、以下の14分野を重点領域として設定し、各分野で具体的なプロジェクトを進めています。

  • 次世代モビリティ: 水素船や燃料電池自動車など、次世代のクリーンな移動手段の開発
  • 水素・アンモニア: 大規模な水素サプライチェーンの構築や、アンモニア燃料の利用技術開発
  • 次世代蓄電池: 再生可能エネルギーを効率的に利用するための高性能蓄電池の開発
  • 製造分野の脱炭素化: 製鉄や化学工業など、多くのCO2を排出する分野の脱炭素化技術開発
  • 洋上風力発電: コスト低減に向けた洋上風力発電技術の開発
  • 資源循環: プラスチックなど、廃棄物のリサイクル技術開発

 これらのプロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー・産業総合開発機構(NEDO)が管理・運営しており、企業や大学、研究機関などが参加しています。

GI基金は、2050年カーボンニュートラルを目指す日本の大規模な基金です。脱炭素化に向けた革新的な技術の研究開発から社会実装までを、長期にわたり一貫して支援し、産業の競争力強化と経済成長の両立を目指します。

他のGI基金で水素船のどんな課題に取り組むのか

 GI基金の「次世代船舶の開発」プロジェクトにおいて、水素船の普及に向けた主な課題と、それに対する取り組みは以下の通りです。

1. 技術的課題

  • エンジンの開発: 水素を燃料とするエンジン(水素燃料エンジン)の開発が不可欠です。GI基金では、燃焼安定性の確保や、微量の窒素酸化物(NOx)の排出を抑える技術など、水素エンジンのコア技術開発を支援しています。特に、大型船に搭載可能な高出力エンジンの開発が重要な課題とされています。
  • 燃料タンク・供給システム: 水素は、液化しても体積が重油の4.5倍と大きいため、船の積載量を減らさずに効率的に水素を貯蔵する技術が必要です。また、高圧・極低温の水素を安全に船に供給するシステムや、水素漏洩を防止・検知する技術の開発も進められています。
  • 燃料電池システムの課題: 現在の水素燃料電池システムは、小型船向けに限られ、大型船には出力やサイズ、重量の制約から搭載が難しいという課題があります。GI基金では、大型船舶向けの高出力なシステム開発を支援しています。

2. インフラ・サプライチェーンの課題

  • 水素供給インフラ(バンカリング): 船舶に水素を補給する施設(水素バンカリング)がまだ整備されていません。GI基金では、バンカリングの自動化・低コスト化技術の開発を支援し、安全かつ効率的な水素供給体制の構築を目指しています。
  • コストの課題: 化石燃料に比べて、水素の製造・供給コストが高いことが普及の大きな障壁です。GI基金は、サプライチェーン全体でのコスト低減に向けた技術開発を支援しています。

3. 安全性・規制の課題

  • 安全基準の整備: 水素船は新しい技術であるため、国際的な統一された安全基準がまだ十分に確立されていません。GI基金では、技術開発と並行して、安全性評価技術の構築を進め、国際的なルール策定に貢献することを目指しています。

 GI基金は、これらの課題を克服するため、技術開発だけでなく、実証実験を通じた安全性や経済性の検証、サプライチェーンの構築支援まで、研究開発から社会実装までを一貫して支援することで、水素船の早期実用化と国際競争力強化を目指しています。

GI基金は、水素船の技術的課題に取り組みます。具体的には、高出力な水素エンジンの開発、効率的な燃料タンクや供給システムの技術、そして船舶向け燃料電池システムの大型化などが挙げられます。また、水素供給インフラの整備や安全性確保に向けた技術開発も進めています。

GI基金の活用例は

 GI基金は、様々な分野でカーボンニュートラルに貢献する技術開発を支援しており、具体的なプロジェクトは多岐にわたります。以下にいくつかの代表的な例を挙げます。

  • 次世代船舶の開発: 水素船やアンモニア船など、ゼロエミッション船の開発を支援しています。燃料電池システムや水素タンクの開発、実証実験などが含まれます。
  • 大規模水素サプライチェーンの構築: 水素を製造し、貯蔵・輸送して利用するまでのサプライチェーン全体を構築するための技術開発を支援しています。
  • 洋上風力発電の低コスト化: 浮体式洋上風力発電の技術開発や、設置・保守のコストを削減するための技術を支援しています。
  • 次世代型太陽電池の開発: 変換効率が高く、薄くて軽いペロブスカイト太陽電池などの開発・実用化を推進しています。
  • 製鉄プロセスにおける水素活用: 鉄鉱石を還元する際に石炭ではなく水素を用いる「水素還元製鉄」技術の開発を支援し、鉄鋼業からのCO2排出削減を目指しています。
  • 次世代蓄電池の開発: EV(電気自動車)や再生可能エネルギーの貯蔵に不可欠な、高性能・低コストな蓄電池の開発を支援しています。

 これらのプロジェクトは、いずれも単一の企業や研究機関だけでは実現が難しい、大規模かつ長期的な取り組みとなっています。GI基金は、このようなリスクの高い技術開発を強力に後押しすることで、日本の脱炭素化と産業競争力強化を目指しています。

GI基金の支援例は、水素船や洋上風力発電、次世代太陽電池の開発など多岐にわたります。製鉄プロセスでの水素活用や次世代蓄電池開発も進めており、脱炭素化と産業競争力強化を目指す大規模な技術開発を後押ししています。

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