この記事で分かること
- 受動部品とは:電気エネルギーを消費、蓄積、または放出するだけで、信号を増幅しない電子部品です。回路の電流や電圧を調整したり、ノイズを除去したりする役割を持ち、抵抗器、コンデンサ、コイルが代表的です。
- 信号の調整とは:電子回路で扱う信号を、目的の処理に適した状態に整えることです。センサーからの微弱な信号を増幅したり、ノイズを除去したりすることで、回路の正確な動作や性能を向上させます。
- 抵抗器とは:抵抗器は、電流の流れを妨げる電子部品です。回路内の電流を制限したり、電圧を調整したりする役割があります。過剰な電流から他の部品を保護するためや、信号の調整などに使われます。
受動部品、抵抗器
日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46
日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。
今回は受動部品である抵抗器についての記事となります。
受動部品とはなにか
電子部品における受動部品とは、外部から与えられた電気エネルギーを消費、蓄積、または放出するだけで、自ら信号を増幅したり、新しい信号を作り出したりしない部品のことです。回路の動作を安定させたり、電圧や電流を調整したり、ノイズを除去したりといった、電子回路の基礎を支える縁の下の力持ち的な役割を果たします。
能動部品(トランジスタやICなど)が「信号を積極的に操作する」のに対し、受動部品は「入力された信号に対して受動的に反応する」という点で対照的です。
主要な受動部品の種類
代表的な受動部品として、以下の3つが挙げられます。これらは「3大受動部品」とも呼ばれています。
- 抵抗器(Resistor) 電流の流れを制限し、電圧を分ける役割をします。抵抗値(Ω)によって電流の量を調整し、回路が過剰な電流で破損するのを防いだり、特定の電圧を作り出したりします。電気エネルギーを熱として消費します。
- コンデンサ(Capacitor) 電気エネルギーを一時的に蓄え、必要に応じて放出する役割をします。これにより、急激な電圧変動を抑えたり、直流と交流を分離したり、特定の周波数の信号を通過させたりすることができます。単位はファラド(F)です。
- コイル(Coil / Inductor) 電流の変化を妨げる(交流電流を通しにくい)性質があり、電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄えます。主に、ノイズを除去するフィルター回路や、電源の安定化などに使われます。単位はヘンリー(H)です。
これらの部品は、スマートフォンやパソコンから家電製品まで、あらゆる電子機器に不可欠な存在です。

受動部品は、電気エネルギーを消費、蓄積、または放出するだけで、信号を増幅しない電子部品です。回路の電流や電圧を調整したり、ノイズを除去したりする役割を持ち、抵抗器、コンデンサ、コイルが代表的です。
抵抗器とは何か
抵抗器は、電流の流れを妨げることを目的とした電子部品です。この「電流の流れにくさ」を表す物理量を抵抗といい、単位はオーム(Ω)で表されます。
抵抗器の役割
抵抗器は、電子回路において主に以下の役割を果たします。
- 電流の制限: 回路に過大な電流が流れるのを防ぎ、他の部品が破損するのを保護します。
- 電圧の調整: 複数の抵抗器を組み合わせることで、電源電圧を必要な電圧に分ける(分圧)ことができます。
- 信号の調整: トランジスタなどの能動部品と組み合わせ、信号の増幅率や周波数特性を調整します。
- 熱への変換: 電流を流すことで熱を発生させ、発熱体として利用されることもあります。
抵抗器の種類
抵抗器は、その構造や材質によって様々な種類に分類されます。
- 可変抵抗器: 抵抗値を手動で変えられる部品です。ボリューム(音量調整)や調光器などに使われています。
- 炭素皮膜抵抗器: 炭素の薄い膜を利用した最も一般的なタイプで、安価で広範囲な用途に使用されます。
- 金属皮膜抵抗器: 金属の薄い膜を使用しており、炭素皮膜抵抗器よりも精度が高く、温度変化による抵抗値の変動が少ないのが特徴です。
- セメント抵抗器: 高い電力に耐えられるように、抵抗体をセメントで固めたものです。大電流を扱う電源回路などで使用されます。

抵抗器は、電流の流れを妨げる電子部品です。この「流れにくさ」を示すのが抵抗値(単位:Ω)で、回路内の電流を制限したり、電圧を調整したりする役割があります。過剰な電流から他の部品を保護するためや、信号の調整などに使われます。
信号の調整とは何か
信号の調整とは、電子回路で扱う信号を、目的の処理に適した状態に整えることです。これを「シグナル・コンディショニング」とも呼びます。
なぜ信号の調整が必要なのか
多くのセンサーが出力する信号は、非常に微弱だったり、ノイズが多く含まれていたりします。このような信号をそのまま次の回路(例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ)に入力すると、正確なデータが得られなかったり、回路がうまく動作しなかったりします。そこで、信号を調整する回路が不可欠になります。
信号調整の主な役割
信号調整には、以下のような役割があります。
1. 増幅・減衰(アンプリフィケーション・アッテネーション)
センサーから出力される微弱な信号を、次の回路が扱える適切なレベルまで大きくする(増幅)こと。また、逆に強すぎる信号を適切なレベルまで小さくする(減衰)ことも含まれます。
2. フィルタリング
信号に含まれるノイズや不要な周波数成分を除去することです。例えば、オーディオ機器で特定の周波数帯域の音を強調したり、逆に消したりする「イコライザー」もこの一種です。
3. 変換
電圧を電流に、または電流を電圧に変換するなど、信号の形式を別の形式に変換することです。
これらの調整を行うことで、電子回路全体の性能や信頼性を向上させることができます。抵抗器やコンデンサ、コイルといった受動部品は、これらの信号調整回路を構成する上で重要な役割を担います。

信号の調整とは、電子回路で扱う信号を、目的の処理に適した状態に整えることです。センサーからの微弱な信号を増幅したり、ノイズを除去したりすることで、回路の正確な動作や性能を向上させます。
熱への変換はどのように利用されるのか
抵抗器が電流を流すことで熱に変換する作用は、主に発熱体として利用されます。身近な例では、以下のような製品に利用されています。
1. 電熱機器
電気エネルギーを熱に変換する最も直接的な利用例です。
- 電気ストーブ、電気ヒーター: 電流を流した抵抗器が発熱し、その熱で周囲の空気を温めます。
- ヘアドライヤー: 内部の抵抗器が発熱し、その熱をファンで送り出して髪を乾かします。
- 電気コンロ、炊飯器: 抵抗器の発熱を利用して、鍋や釜を温めます。
2. 回路保護
意図的に熱を発生させ、回路を保護する目的でも利用されます。
- ヒューズ: 回路に過大な電流が流れた際、内部の抵抗体(ヒューズ線)が発熱して溶断し、回路を切断することで機器の損傷を防ぎます。
- サーミスタ: 温度によって抵抗値が大きく変化する性質を利用して、温度センサーや過熱保護回路に利用されます。
このように、抵抗器の熱変換は、単に熱を発生させるだけでなく、安全や制御にも役立てられています。

抵抗器の熱への変換は、主に電気エネルギーを熱に換える発熱体として利用されます。電気ストーブやドライヤー、炊飯器などが身近な例です。また、過剰な電流で発熱し、溶断することで回路を保護するヒューズにも応用されています。
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