電子部品:可変容量コンデンサ 特定の周波数帯の信号だけを取り出せる理由は何か?

この記事で分かること

  • 可変容量コンデンサとは:ツマミや電圧を操作することで静電容量を自由に変えられるコンデンサです。ラジオやテレビの周波数同調回路に用いられ、目的の電波を受信するために使われます。
  • 特定の周波数帯の信号だけを取り出せる理由:可変容量コンデンサで容量を変えると、回路の共振周波数が変化します。共振周波数ではインピーダンスが最小となり、特定の周波数帯の信号だけが強く流れるため、目的の周波数だけを選び出すことができます。

可変容量コンデンサ

  日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。

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 日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。

 今回は受動部品である可変容量コンデンサについての記事となります。

可変容量コンデンサとは何か

 可変容量コンデンサは、静電容量を外部から手動または電動で変化させることができるコンデンサです。バリコン(Variable Capacitor)とも呼ばれ、主にラジオやテレビの周波数同調回路に利用されていました。


仕組みと特徴

 可変容量コンデンサの最も一般的なタイプは、2組の金属板で構成されています。

  • 固定板(ステータ): 動かない固定された金属板。
  • 可動板(ロータ): ハンドルやモーターで回転させることができる金属板。

 これらの金属板が重なり合う面積を変えることで、静電容量が変化します。金属板がより多く重なると、電極の面積が大きくなるため、静電容量が増加します。逆に、重なり合う部分が少なくなると、静電容量は減少します。

主な種類

  • バリコン(バリキャップ): 複数の可動板を回転させて容量を調整する機械式タイプ。ラジオやテレビの周波数調整ツマミに直接接続されていました。
  • バラクタダイオード(可変容量ダイオード): PN接合ダイオードの容量変化を利用する電子式タイプです。PN接合に逆方向電圧をかけると、空乏層の幅が変化し、コンデンサとして機能する容量が変わります。機械式と異なり、小型で応答速度が速いため、今日の電子機器の同調回路やPLL(位相同期回路)などで広く利用されています。

用途

 可変容量コンデンサの主な用途は以下の通りです。

  • 周波数同調回路: ラジオやテレビの受信機で、目的の放送局の周波数に合わせるために使用されます。コンデンサの容量を調整することで、回路の共振周波数を変化させ、特定の周波数帯の信号だけを取り出します。
  • 発振回路: LC発振回路で発振周波数を微調整するために用いられます。

 現代では、機械式のバリコンは小型化やコストの観点からあまり使われなくなりましたが、電子式のバラクタダイオードは、多くの無線通信機器で重要な役割を担っています。

可変容量コンデンサは、ツマミや電圧を操作することで静電容量を自由に変えられるコンデンサです。ラジオやテレビの周波数同調回路に用いられ、目的の電波を受信するために使われます。機械式のバリコンや、電子式のバラクタダイオードなどがあります。

回路の共振周波数とは何か

 回路の共振周波数とは、コイル(インダクタンスL)とコンデンサ(静電容量C)を含む交流回路において、回路全体のインピーダンス(交流に対する抵抗)が特定の周波数で最小または最大になる現象が起こる周波数です。この現象を「共振」と呼びます。

仕組み

 共振周波数は、コイルの誘導性リアクタンス(XL​=2πfL)と、コンデンサの容量性リアクタンス(XC​=1/(2πfC))の大きさが等しくなる周波数です。このとき、これらのリアクタンスが互いに打ち消し合い、回路全体のインピーダンスが純粋な抵抗成分のみになります。

共振の種類と特徴

 共振には、回路の接続方法によって2つのタイプがあります。

  • 並列共振: LとCが並列に接続された回路で起こります。共振周波数ではインピーダンスが最大となり、流れる電流が最小となります。この特性は、特定の周波数の信号を遮断するフィルター回路などに利用されます。
  • 直列共振: 抵抗(R)、コイル(L)、コンデンサ(C)が直列に接続された回路で起こります。共振周波数ではインピーダンスが最小(Z=R)になり、回路に流れる電流が最大となります。この特性は、特定の周波数(目的の放送局の電波など)の信号だけを強く取り出すラジオの選局回路に利用されます。

回路の共振周波数とは、コイルとコンデンサを含む交流回路で、インピーダンス(交流に対する抵抗)が最小または最大になる特定の周波数です。この周波数で電流が最も流れやすくなったり、流れにくくなったりします。

特定の周波数帯の信号だけを取り出せる理由は

 共振周波数を変化させて特定の周波数帯の信号だけを取り出せるのは、共振周波数がコイルとコンデンサの特性によって決まるためです。


共振の仕組み

 共振周波数は、回路に流れる交流電流に対するコイルの誘導性リアクタンス(交流に対する抵抗)とコンデンサの容量性リアクタンスが等しくなるときに発生します。この状態では、互いのリアクタンスが打ち消し合い、回路全体のインピーダンスが最小になります。


可変容量コンデンサの役割

 共振周波数はL=コイルのインダクタンスとC=コンデンサの静電容量の値によって決まります。ラジオの受信機では、コイル(L)のインダクタンスは固定されていますが、可変容量コンデンサ(C)の静電容量をツマミで調整することができます。

  • ツマミを回してCを大きくすると、共振周波数は低くなります。
  • ツマミを回してCを小さくすると、共振周波数は高くなります。

 この仕組みにより、回路の共振周波数を目的の放送局の周波数に合わせることができます。共振が起こると、その周波数帯の信号だけが最も強く流れ、他の周波数の信号はほとんど流れなくなるため、特定の信号だけを選び出すことができるのです。

可変容量コンデンサで容量を変えると、回路の共振周波数が変化します。共振周波数ではインピーダンスが最小となり、特定の周波数帯の信号だけが強く流れるため、ラジオのように目的の周波数だけを選び出すことができます。

可変容量コンデンサにはどんな材料が使用されるのか

 可変容量コンデンサには、主に金属半導体が使用されます。


機械式可変コンデンサ

機械式の可変コンデンサ(バリコン)は、静電容量を物理的に変化させるため、金属が主な材料です。

  • 電極: アルミニウムや真鍮が使用されます。これらは導電性が高く、加工が容易だからです。これらの金属板が、回転する可動板(ロータ)と固定された固定板(ステータ)として配置され、重なり合う面積を変化させることで容量を調整します。
  • 誘電体: 電極板の間には空気が誘電体として存在する場合が多いです。そのため、空気や真空を誘電体とするタイプは、誘電損失が少なく、高精度な特性を持つという利点があります。一部のバリコンでは、ポリエチレンフィルムなどのプラスチックフィルムを誘電体として使用することもあります。

電子式可変コンデンサ

電子式の可変コンデンサ(バラクタダイオード)は、半導体の性質を利用しています。

  • 仕組み: PN接合ダイオードの空乏層が誘電体として機能します。この空乏層の幅は、印加される逆方向電圧の大きさに応じて変化します。電圧を上げると空乏層が広がり、容量が小さくなります。逆に電圧を下げると空乏層が狭まり、容量が大きくなります。この電圧制御による容量変化が、周波数同調などに利用されます。
  • 材料: 一般的なダイオードと同様に、シリコン(Si)ヒ化ガリウム(GaAs)といった半導体材料が使用されます。

可変容量コンデンサには、主に金属半導体が使われます。機械式のバリコンは、アルミニウムや真鍮などの金属板を使用し、電子式のバラクタダイオードは、シリコンやヒ化ガリウムなどの半導体材料を使用します。

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