この記事で分かること
- 下落の理由:半導体関連株の調整や米国の景気先行き不安などが要因となり、株価が下落しています。
- 半導体関連株の調整の理由:AI需要の加熱に対する警戒感と利益確定売りが主な要因です。加えて、米国の金融政策や中国経済の不透明感、シリコンサイクルの影響も投資家心理を冷やし、株価下落につながっています。
- シリコンサイクルが避けられない理由:半導体工場への巨額な投資と建設に時間がかかるため、需要予測との間にズレが生じるためです。好景気での供給増加が、数年後に供給過剰を招く構造的な問題が原因です。
8/20の日経平均株価の大幅下落
2025年8月20日、日経平均株価は前大幅に下落しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250820/k10014898311000.html
この背景には、主に以下の要因が挙げられます。
- 半導体関連株の調整: これまで日経平均の上昇を牽引してきた半導体関連銘柄に、利益確定売りが集中しました。これは、米国の半導体大手企業の決算や見通しに対する懸念、またAIバブルの加熱感に対する警戒感が強まったことが影響していると考えられます。
- 米国の景気先行き不安: 米国の経済指標の悪化や金融政策への不透明感が、投資家心理を冷やし、リスク回避の動きにつながりました。
- 円高の進行: 米国の景気減速懸念からドル安・円高が進んだことも、輸出企業の収益悪化につながるとの懸念から、日本株全体の売りを誘発しました。
これまで、日経平均は半導体セクターの好調を主導役として上昇を続けてきましたが、その勢いに「息切れ感」が見え始めたことが、今回の下げ幅を大きくした要因とみられます。投資家は、今後の米国経済の動向や企業業績を注視しながら、慎重な姿勢を強めている状況です。
半導体関連株の調整の要因は何か
半導体関連株が調整する主な要因は以下の通りです。
利益確定売りとバブルへの警戒感
これまで日経平均の上昇をけん引してきた半導体関連株は、株価が急騰し「上がり過ぎ」の状態になっていました。そのため、投資家が一旦利益を確定させる動きが強まり、株価が下落しました。また、AIバブルなどへの過度な期待から生じた株価の加熱感に対する警戒も広がっています。
米中対立とサプライチェーンへの懸念
アメリカの中国に対する半導体輸出規制の厳格化は、半導体業界全体のサプライチェーンに影響を与えています。貿易摩擦の激化が企業の業績に悪影響を及ぼすとの懸念が、株価下落の一因となっています。
シリコンサイクル
半導体業界には「シリコンサイクル」と呼ばれる周期的な景気変動があります。好景気による過剰投資の反動で供給過剰となり、その後不況に陥るというサイクルです。半導体関連株は、このサイクルを半年〜1年ほど先取りして動く傾向があります。現在、AI需要は依然として高いものの、市場は次の不況期を先読みしている可能性があります。

半導体関連株の調整は、AI需要の加熱に対する警戒感と利益確定売りが主な要因です。加えて、米国の金融政策や中国経済の不透明感、シリコンサイクルの影響も投資家心理を冷やし、株価下落につながっています。
米国の景気先行き不安の理由は何か
米国の景気先行き不安の主な理由は、金融政策の不透明性と景気指標の悪化です。
金融政策の不透明性
米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の先行きが不透明なため、投資家の間で警戒感が強まっています。インフレを抑制するための利上げが景気を減速させ、場合によっては景気後退(リセッション)を引き起こす可能性が懸念されています。
また、大統領選挙を控えていることも、今後の経済政策の方向性を見通しにくくしています。
経済指標の悪化
雇用統計や小売売上高といった主要な経済指標が市場予想を下回るなど、景気減速の兆候が見え始めています。特に、個人消費の動向は米国経済の大きな柱であるため、この先行きに不安が広がると、株価全体に下落圧力がかかりやすくなります。
その他の要因
- 米中対立: 米中の貿易摩擦や関税強化は、企業活動のコスト増につながり、サプライチェーン全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
- スタグフレーション懸念: 景気後退とインフレの同時進行であるスタグフレーションへの懸念も、景気不安を煽る要因です。

米国の景気先行き不安の主な理由は、FRBの金融政策の不透明性と、雇用統計や小売売上高といった経済指標の悪化です。インフレ抑制のための利上げが景気を減速させ、リセッションを引き起こす可能性が懸念されています。
シリコンサイクルが避けられない理由は何か
シリコンサイクルは、半導体産業の構造的な特性と、需要と供給のミスマッチが原因で起こるため、完全に避けるのは難しいとされています。主な理由は以下の2点です。
設備投資の規模と時間差
半導体工場(ファウンドリー)の建設や製造装置への投資には、数千億円から兆円規模の巨額な資金と、数年にわたる長い期間が必要です。好景気で需要が急増した際、企業は供給を増やすために大規模な設備投資を決定します。
しかし、実際に生産能力が向上して半導体が市場に出回る頃には、景気や需要のトレンドが変わってしまい、結果として供給過剰に陥ることがしばしばあります。
需要予測の難しさ
半導体の需要は、スマートフォン、パソコン、自動車、AIなど、多岐にわたる最終製品の市場動向に大きく左右されます。これらの製品の需要を正確に予測することは非常に難しく、特に技術革新のスピードが速い半導体業界では、需要の急増と急減が繰り返されます。この需要変動の予測の難しさが、供給の過剰や不足を招く要因となります。
これらの要因が複雑に絡み合い、半導体産業は好況と不況を繰り返す「シリコンサイクル」から逃れられないとされています。

シリコンサイクルが避けられないのは、半導体工場への巨額な投資と建設に時間がかかるため、需要予測との間にズレが生じるからです。好景気での供給増加が、数年後に供給過剰を招く構造的な問題が原因です。
下落が目立った企業はどこか
主に半導体関連株とハイテク株が大きく値を下げました。
下落が目立った企業と業種
- 半導体関連株: これまで市場をけん引してきたセクターであり、利益確定売りが集中しました。具体的な銘柄名としては、ソフトバンクグループやアドバンテストなどが含まれます。これらの企業は、米国のハイテク株安の流れを受けて特に大きく売られました。
- 情報・通信業、その他製品、非鉄金属: これらの業種も全体的に下落が目立ちました。半導体関連のサプライチェーンに関わる企業や、景気動向に敏感な業種が影響を受けやすい傾向にあります。
今回の株価下落は、特定のセクターに売りが集中したことが特徴で、これまで株価が大きく上昇していた銘柄ほど、下落幅が大きくなる傾向が見られました。
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