神戸製鋼所とUBE三菱セメントのブラックペレットの製造販売 ブラックペレットとは何か?

この記事で分かること

  • ブラックペレットとは:木質バイオマスを高温で加熱処理した固形燃料です。石炭と同等の高い発熱量とエネルギー密度、優れた耐水性を持つため、火力発電や製鉄所の石炭代替燃料としてCO₂削減に貢献します。
  • どのように製造されるのか:木質バイオマスを粉砕・乾燥させた後、酸素を制限した環境で250〜300℃に加熱する「トレファクション(半炭化)」という熱処理を施し、その後ペレット状に成形して作られます。
  • 神戸製鋼所が協業する理由:製鉄プロセスにおけるCO₂排出削減のため、石炭代替燃料のブラックペレットを求めています。長年製造技術を持つUBE三菱セメントと組むことで、脱炭素化を加速させ、安定供給を実現するためです。

神戸製鋼所とUBE三菱セメントのブラックペレットの製造販売

 神戸製鋼所とUBE三菱セメントは、木質燃料である「ブラックペレット」の製造販売について共同で事業化を検討しています。

 脱炭素社会の実現を目指し、両社の技術とニーズを組み合わせることで、カーボンニュートラルな燃料の普及を推進する狙いです。

ブラックペレットとは何か

 ブラックペレットは、木質バイオマスを原料として作られる、石炭の代替燃料として注目されている固形燃料です。

 通常の木質ペレット(ホワイトペレット)が木材を粉砕・圧縮して作られるのに対し、ブラックペレットは木質ペレットを高温で加熱処理(半炭化・トレファクション)することで製造されます。この処理によって、木材の水分量が減り、炭素の割合が増加します。

ブラックペレットの主な特徴

  • 高い発熱量とエネルギー密度: 高温処理により、水分が取り除かれ、炭素の割合が増えるため、石炭とほぼ同等の高い発熱量とエネルギー密度を持ちます。これにより、少量で効率的な燃焼が可能です。
  • 優れた耐水性: 炭化処理によって疎水性が高まり、水をはじくようになります。このため、屋外での保管が可能となり、既存の石炭貯蔵設備をそのまま利用できる利便性があります。
  • 高い粉砕性: 石炭と同様の性質を持つため、既存の石炭ボイラーや設備の改修をほとんど必要とせずに使用できます。火力発電所や製鉄所などで石炭と混ぜて燃焼(混焼)させることも容易です。
  • カーボンニュートラル: 原料となる木材は、成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収するため、燃焼時に二酸化炭素を排出しても、大気中のCO₂濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な燃料とされています。

 これらの特性から、ブラックペレットは、石炭を大量に消費する火力発電所や製鉄所などで、CO₂排出量削減のための有効な手段として期待されています。

ブラックペレットは、木質バイオマスを高温で加熱処理した固形燃料です。石炭と同等の高い発熱量とエネルギー密度、優れた耐水性を持つため、火力発電や製鉄所の石炭代替燃料としてCO₂削減に貢献します。

ブラックペレットはどのように作られるのか

 ブラックペレットは、主にトレファクション(半炭化)という熱処理技術を用いて製造されます。このプロセスは、通常の木質ペレット(ホワイトペレット)の製造工程に、特定の加熱ステップを追加することで実現されます。


製造プロセス

  1. 原料の粉砕と乾燥: 間伐材や製材所の端材など、木質のバイオマスを細かく粉砕し、乾燥させて水分を一定量まで減らします。
  2. トレファクション(半炭化): 乾燥させた木質チップを、酸素の供給を制限した状態で、**250℃~300℃**の比較的低い温度で加熱します。この熱処理によって、木材の成分(ヘミセルロース、セルロース、リグニンなど)が分解され、水分や揮発性成分が取り除かれます。この段階で、木材は炭化し、色が黒く変化します。
  3. 粉砕と成形: 半炭化された木質チップをさらに細かく粉砕し、ペレット成形機に投入します。高温・高圧で圧縮することで、直径数ミリメートルの円柱状のペレットに成形されます。このとき、木材に含まれるリグニンが接着剤の役割を果たし、ペレットの形状を保ちます。
  4. 冷却: 成形されたペレットを冷却し、固形化させます。この工程でペレットの耐久性が向上します。

 このトレファクション処理により、ブラックペレットは通常の木質ペレットよりも高いエネルギー密度、優れた耐水性、そして石炭と同等の粉砕性を獲得します。これらの特性は、火力発電所や製鉄所での石炭代替燃料としての利用を可能にしています。

ブラックペレットは、木質バイオマスを粉砕・乾燥させた後、酸素を制限した環境で250〜300℃に加熱する「トレファクション(半炭化)」という熱処理を施し、その後ペレット状に成形して作られます。

トレファクションでの消費エネルギーを含めても効率的なのか

 トレファクションの消費エネルギーを含めても、木質バイオマスをそのまま使うよりも最終的なエネルギー利用効率が向上するとされています。

この効率性は、トレファクションがもたらす以下の利点によって実現されます。

1. 輸送効率の向上

 トレファクションによって、原料の木質バイオマスは水分が減り、体積あたりのエネルギー密度が大幅に向上します。これにより、同じエネルギー量を輸送するのに必要な車両の台数や回数が減り、輸送にかかるエネルギー消費とコストを削減できます。


2. 貯蔵・ハンドリングの利便性

 トレファクションされたブラックペレットは耐水性が高く、屋外に保管することが可能です。これは、水分を吸収しやすい通常の木質ペレットと比べて、乾燥のためのエネルギーやコストが不要になるというメリットがあります。

 また、粉砕しやすくなるため、既存の石炭火力発電所の設備をほぼそのまま利用でき、設備の改修にかかるエネルギーやコストを抑えられます。


3. 発電効率の向上

 木質バイオマスをそのまま燃焼する場合、ボイラーの燃焼効率や発電効率が約30%と比較的低いとされています。

 一方、ブラックペレットは石炭と同等の発熱量を持つため、既存の石炭火力発電所で石炭と混焼(混ざって燃焼)させることで、燃焼効率や発電効率を維持しながら、CO₂排出量を削減できます。また、混焼率を通常の木質バイオマスの10倍程度まで高めることが可能とされており、より効率的なCO₂削減が期待できます。

 これらの利点を総合的に考慮すると、トレファクションの製造プロセスで消費されるエネルギーを差し引いても、最終的な燃料としての利用段階でのエネルギー効率やコスト効率が向上するため、全体として優れた選択肢と見なされています。

トレファクションでエネルギー密度が高まるため、輸送や保管のコストが削減され、最終的な利用段階でのエネルギー効率やCO₂削減効果が向上します。

神戸製鋼所が協業を行う理由は

 神戸製鋼所がUBE三菱セメントと協業する理由は、主に製鉄プロセスにおけるCO₂排出量の大幅削減脱炭素社会の実現への貢献です。


神戸製鋼所の課題と狙い

 鉄鋼業は大量のCO₂を排出する産業であり、カーボンニュートラルへの対応は喫緊の経営課題です。神戸製鋼所は、製鉄所の高炉で使われる石炭をブラックペレットに置き換えることで、CO₂排出量を削減することを目指しています。しかし、そのためのブラックペレットの安定的な供給と製造技術が課題でした。


UBE三菱セメントの強み

 一方、UBE三菱セメントは長年にわたり、独自のブラックペレット製造技術を開発し、国内最大級の製造プラントを保有しています。彼らの技術で製造される「MUCCトレファイドペレット®」は、耐水性や粉砕性に優れており、既存の石炭設備をほとんど改造せずに利用できるという強みがあります。


協業による相乗効果

 神戸製鋼所は、UBE三菱セメントの優れた製造技術と供給能力を活用することで、自社の製鉄所における脱炭素化を加速できます。一方、UBE三菱セメントは、CO₂を大量に排出する神戸製鋼所という巨大な市場を得ることで、ブラックペレット事業を拡大できます。両社は互いの強みを持ち寄り、日本全体の脱炭素化を牽引するという共通の目標に向かって事業化を検討しているのです。

神戸製鋼所は、製鉄プロセスにおけるCO₂排出削減のため、石炭代替燃料のブラックペレットを求めています。長年製造技術を持つUBE三菱セメントと組むことで、脱炭素化を加速させ、安定供給を実現するためです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました